見出し画像

tari textile BOOK 後編 #5「I ♡ T」作品NO.14

作品NO.14

作品NO.14

→経糸:柘榴(木酢酸鉄)、柘榴(石灰)、枇杷(おはぐろ)

 緯糸:柘榴(木酢酸鉄)、柘榴(石灰)、枇杷(おはぐろ)

 整経本数308本、半反

 

 

 それでは次の作品です。作者はこの作品で、ある2人の人物とシーンをイメージし、表現しようと試みました。みなさんにはそれがどんな人物でどのようなシーンか、伝わるでしょうか。

 ヒントは、この作品に使われた染色材料の「柘榴ざくろ」と「枇杷びわ」。

 柘榴は、割れた果実の中にある鮮やかな紅い種が印象的な植物です。西南アジアや中東が原産で、古くから各地で食用だけでなく薬用としても珍重されていました。また呪術に使用されていたり、神話の中にも数多く登場したりしていました。

 一方の枇杷は、名前の由来にもなった琵琶形のだいだい色の果実、その瑞々しい爽やかな甘酸っぱい味が思い浮かびます。ちなみに楽器の琵琶は西・中央アジア発祥で、その音色が「ビワ」の語源とされています。植物の枇杷は中国原産で、こちらも古来アジア各地で薬用や各種療法に使用され、日本にも食用よりも先に、万能医薬として伝わりました。

 作者は、このオリエンタルな雰囲気漂う神秘的な2つの植物から、なんと「クレオパトラ」と「楊貴妃」をイメージしました。そしてその2つの植物を使って糸を染め、それらを組み合わせて縞をつくり、そのイメージの世界を表現した布をつくろうとしたのです。

 濃いグレーと赤紫でできた縞は、どこか妖艶な雰囲気。その中で2人の金色のアクセサリーが控えめにキラリと輝く。そんなシーンが思い浮かぶでしょうか。

 

 ちなみに、作者はこの作品をつくる際、柘榴と枇杷について歴史などの詳しい前知識はほとんど無く、ただ「なんとなく」このイメージが湧いたということです。

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?