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「tari shirt展 ~タリ族の衣文化~」 展示補助資料 #2 「3びきの子ねこ~SHOP band」期

「3びきの子ねこ~SHOP band」期

 転機は15~16歳ごろ訪れた。
 
 就職した一番上の姉が東京で一人暮らしを始め、タリは姉が住んでいたアパートに遊びに行った。そして近くの下北沢へ連れて行ってもらった。
 
 そこは今までに知っている街とは違い、何か独特のエネルギーがギュッとつまっている感じがした。タリは街を散策しながら、さまざまな古着屋を巡った。
 
「こんなに楽しい服屋さんは初めてだ!」今思うとその時のタリは体内の細胞全体でその場所の空気を吸収しているような感じだった。古着屋といっても本当にたくさんの店があり、雰囲気や置いてある服の感じも様々だったが、その中でも特に「三びきの子ねこ」という店がタリは気に入った。当時のタリのお小遣いでも手が届く値段で、レトロで可愛らしい品揃え。真剣に吟味し、本当に気に入った楽し気な編み模様のノルディックセーターと、シンプルなブラックウォッチ風の巻きスカートを選んだ。
 
 その頃千葉に住んでいたので頻繁には行けなかったが、それ以来下北沢の古着屋に行くことがタリの楽しみになった。
 
 好きな古着屋に通い、宝探しのようにお気に入りの服を見つけること。これはタリにとってとても重要で大切な楽しみになっていた。
 
 その後、関西で大学生になったタリはこの楽しみをさらに深めていく。暇さえあれば神戸や大阪や京都の古着屋を巡り、好きな店や服を見つけては幸福な気持ちになっていた。
 
 その中でも、大阪中崎町にある「SHOP band」という店に巡り合ったこともタリ族の衣文化にとって大きな転機だろう。木調でカジュアルかつ落ち着く店の空間がとても居心地よく、置いてある服も素敵だった。寡黙な店主とも少しずつ話をするようになり、古着に関する年代やアイテムの知識がほとんど無かったタリの「うまく言えないけどなんとなくこの服がすごく好き」といったような感覚にも共感してくれ、ますます楽しくなった。メンズの小さいサイズのシャツやパンツ、絶妙な柄のスカートなどを購入した。買わずとも古い時代の素敵な生地やデザインの服を見たり試着したりすることも心の栄養になっていた。
 

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