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【心のごはん】 vol.1 井上陽水

言わずとも知れた、時代を越える稀代のシンガーソングライター。陽水さん。

教科書で見た「少年時代」や「みなさん、お元気ですかぁ。」という神奈月さんが真っ先に思い浮かぶ方も多いのではないかと思う。私も数年前まではその一人だった。

普段、もっぱら90年代のJPOPに逃げてしまうのだが、「アジアの純真」という曲がある。とてつもなく有名な曲だ。不意に流れてきた唐突さも相まり、昔の情景が蘇ったあの頃。

小学生くらいの頃、テレビで流れてきたこの曲に「なんて替え歌をしたくなる歌なんだ」と印象に残った。今思えば、当時は嘉門達夫さんの影響だったように思うが、子供ながらに携えていた言葉でついボキャブりたくなる歌詞。

改めて聞くと、やっぱり語感のセンスが抜群な曲だなと思い、いよいよ誰が作詞をしたのか調べてみると「井上陽水」。マジかよ、あの「お元気ですかぁ。」の人!
人生でそうそう味わうことのない衝撃。そこから私は井上陽水病にかかった。

毎週、井上陽水を聴き漁る今日この頃。思わず口にしたくなる歌詞、フォークやブラック、テクノ系など多様なメロディー、艶やかな反響した声、どこか謎めかしいサングラス越しの笑顔。全てが私の心に馴染む。ごくごく自然に。

元々「アンドレ・カンドレ」でデビューした陽水さん。言いたくなる語感とフザけた芸名。肝心なのは、いかに面白いか。最高すぎる、最高すぎますよ、陽水さん。

割と恰幅の良い姿勢に少し強面のサングラス。だもんで、あの飄々としたトークと品のある声。冗談を言って笑い合う。バランスの取れた過ごし方を見ていると、きっと陽水さんが黄檗宗の住職なんかをやっていたら、リズミカルな高僧になられていたことだろうなと勝手に思う。それくらい、禅問答のような考えを、知的な返しで対応する。私もあの品のある軽々しさを持ち合わせられるように日々を生きていこうと思う。

私は現在26歳だ。もうすぐ1つ歳を重ねるが、個人的に20代後半という時期は、「社会との共生」と「自意識からの解脱→視野の広さ」、この2大テーマをいかに面白がれるかに尽きるのではないかと仮説を立てている。

社会に出て何年かが経ち、何となく自分なりに社会が見えてくる時期。その上で、「俺はまだ何者かになれるぞ」や「美人な女にモテたい」など、野心ある尖った強い自意識。このせめぎ合いと兼ね合いを見定める、最初のフェーズ。ガムシャラで過ごすことも大事だし、もちろん堅実で安定志向も大事。

ただ、何が言いたいかと言うと、今後どんな状況になっても、「ある程度の社会とのバランス」、「自意識からの解脱→視野の広さ」を経験しておけば、一旦はスイスイと20代をやり過ごせるのではないかということ。そして、曲作りや立ち居振る舞いで体現しているモデルケースが井上陽水という男だ。

例えば、「テレビに出るのがあんまりねぇ」みたいなことで初期は重苦しい雰囲気を醸し出していた陽水さんが、気がついたらテレビでのあの喋りっぷり。また、コンサートも極端に何年もやらず、流石にマズいだろうってことでクラブチッタで深夜のコンサートを取り行ったり、最近のコンサート映像を見ると、とても軽やかに観客とやり取りしている柔軟さ。

他にもエピソードはあるが、私の陽水さんの印象としては、視野が広く、自分と他者のバランスを上手く保っている姿だ。まさに「社会との共生」と「自意識からの解脱→視野の広さ」。

また、陽水さんは「逃げの天才」である。はぐらかしの天才とでも言うべきか。あの交わし方やいなし方はとても勉強になる。確か何かのラジオで「大事なことは真実ではなく、いかに面白いか。」みたいなことを言っていたと記憶している。なんて飄々としたコミュニケーションの方法なのだろうか。とても素敵。それに加え、はぐらかしのワードがいちいちオモシロイ。陽水さんの視野の広さが伺える。

こんな逃げ方があったかと感心するが、これにはきっと、目先の今を集中して、取り繕う力がないとなかなか難しい術ではないかと思う。深層心理はまだ掴みきれていないが。きっとこの術へとたどり着くには、先ほどの2点を通過する必要があると思っている。

つまりは、日々のバイオリズムの中で、自分自身の心のバランスをとる術を、陽水さんはきっとたくさん持っているに違いない。その土壌として、受け入れたり、疑問に思ったり、あらゆる事象を取り込む懐の大きさが必要で、きっと曲にも、トークにも、日常生活にももれなく溢れ出しているはず。私はそれをなるべく20代のうちに拾い集めてみたい。その一端として、今は陽水さんが作った音楽を聞いたり、いわゆる陽水評論を読んだりしている最中。

まだまだ拙い社会経験の中ではあるが、今の私の状況を形成している大きな要因として、既に陽水さんからは多大な栄養を拾ってご馳走させていただきました。社会人としての基盤は、間違いなくこの方の影響が大きいと言える。

心の師匠である。いや、それは言い過ぎかも。

陽水さんの曲数は計り知れない。最近のお気に入りは、
「氷の世界」
「新しいラプソディー」
「俺の事務所はCAMP」
「チエちゃん」
「花の首飾り」
「Tokyo」
etc…..

まだまだ聞いていない曲が無数にあるから、今後の楽しみの一つに残しておいてある。これから生きていくのが楽しみすぎる。

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