見出し画像

【こころ #10】誰だって“やっかい”なところはあるはず

中澤 美和さん(前編)


 中澤さんは7話8話9話でご紹介した大野さんが理事長を務める『社会福祉法人 藍』の事務局長、同法人が運営する共同生活援助事業(注1)『ガーデン藍』の施設長を務めておられる。お二人は、ともに学び直しで通った精神保健福祉学の大学院のゼミ仲間である。

(注1)
共同生活援助事業とは、入所施設での生活ではなく住宅地域で共同生活し、将来的に自立生活を行うことを支援する取組

 中澤さんが福祉の分野に取り組むきっかけは中学高校時代の親友。彼女は「すごくきれいで、結婚も一番早く、実家も裕福で相手はお医者さん、ホテルで一番大きな会場で行った結婚式の司会は有名アナウンサー」という煌びやかな存在だった。

 それが、彼女の出産後、話す内容の異変に気付き始める。「最初はママ友が嫌がらせをしてくるという話だったのが、だんだんエスカレートしてきて、盗聴や尾行されてるという話まで、さすがにおかしい」。ご主人とも面識があったのでその話をするも何かを隠す印象があった。のちに、彼女が「統合失調症で入院した」と知る。その後、家でも財布や鍵を取り上げて外に出さないような噂も聞き、「連絡もつかなくなった」。

 彼女が「このままでは社会生活ができなってしまう。何かできないか。」と調べる中で、興味を持ち、大学に通って資格を得るまでに至ったのが、精神障害のある方の支援に取り組む『精神保健福祉士』だった。


 「精神障害を負ったがために、ガラッと生活が変わってしまう。体の怪我と違って、その人のコアなところさえも変わってしまう。さらに、症状による苦労だけではなく、周囲も“いけないもの”のように隠そうとする。」

 中澤さんは、親友だけを振り返って言われたわけではない。今の仕事に就かれて、他にもそんなシーンを見てきた。「兄弟が結婚しても式には出ないでくれなんて今の時代でもあります。向こうの家族に反対されて結婚できないといったハードルも」。

 自立のために一人暮らしの物件探しを手伝えば、「精神障害のあることを伝えると、家賃を払えてもなかなか借りられないケースもある」。もちろん、本人の症状として問題がある場合は仕方ないのだが、寄り添う立場としては「一人暮らしができると太鼓判を押せる方がほとんど」にもかかわらず、わかってもらえないこともある。


 福祉分野に携わるようになって一番の想いは、「偏見をなくしてほしい」。誤解を恐れず言えば、健常・障害に関わらず「誰だって“やっかい”なところはあるはず。」と、色々な例を挙げてくれた。


後編に続く)



▷ 社会福祉法人 藍





⭐ コミュニティメンバー登録のお願い ⭐

 Inclusive Hubでは高齢・障害分野の課題を正しく捉え、その課題解決に取り組むための当事者及び研究者や開発者などの支援者、取り組みにご共感いただいた応援者からなるコミュニティを運営しており、ご参加いただける方を募集しています。


Inclusive Hub とは

▷  公式ライン
▷  X (Twitter)
▷  Inclusive Hub


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?