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私の英国物語 Broadhurst Gardens NW6 (22) The Nutcracker

ショッピング街ではクリスマス・ライツの設置が始まり、クラスでもクリスマス・ホリデーの予定などが話題になり始めた頃、クラスメイトのAさんとバレエの話題になり、Covent Garden へバレエを観に行こう、ということになった。
演目は、”The Nutcracker”。

1816年、プロシア人 Ernst Theodor Amadeus Hoffmann によって書かれた童話 “The Nutcracker and the Mouse King” (くるみ割り人形とねずみの王様)は、クリスマス・イヴの夜に起こるお話。

クリスマス・イヴの賑やかで楽しいパーティー、 Clara は、くるみ割り人形を贈られる。くるみ割り人形は、実は、ねずみの王に魔法をかけられた仮の姿。そして、皆が寝静まった夜、不思議な物語は始まる。
クララは、くるみ割り人形率いる兵隊と力を合わせ、ねずみの王に勝利。くるみ割り人形の魔法は解けて、くるみ割り人形は人間に戻った。
そして、二人は、お菓子の国へと導かれ、そして、素敵な宴を楽しむのである。

この物語を原作とする Tchaikovsky のバレエ組曲 “The Nutcracker” は、ヨーロッパではクリスマスの風物詩といわれるもの。 ぜひ、The Royal Opera House で観たいと思っていた。

ロイヤル・オペラ・ハウスは、コヴェント・ガーデンにある劇場で、The Royal Opera、The Royal Ballet、The Royal Opera House Orchestra の本拠地。
国内・外から観客が訪れるロイヤル・オペラ・ハウスは、チケットの入手がひときわ難しいといわれる。 シーズン開始前に演目が発表になったら、すぐにチェックし、シートの購入をしたほうがよい。
「人気の演目、良い席は早めに。」と、さっそく、学校の帰りにチケットを買いに Covent Garden にある ロイヤル・オペラ・ハウスの Box Office へと出かけた。
因みに、当日券は67席のみ用意されており、公演当日の朝10時から販売される。

The Royal Ballet は、1931年、ダンス・スクール "Academy of Choreographic Art" を運営していた、ダンサーであり振付家の Ninette de Valois が、シアター・プロデューサー Lilian Baylis に出会ったことに始まる。
ベイリスは、ロンドン南部 Waterloo にある the Old Vic Theatre と ロンドン北部 Islington にある the Sadler’s Wells Theatre を経営しており、ドゥ・ヴァロアと契約して両劇場でダンスを公演する、the Vic-Wells Ballet とthe Vic-Wells Ballet School を創立した。
これが、今日の the Royal Ballet、the Birmingham Royal Ballet、そして the Royal Ballet School の前身となる。

第二次世界大戦中、バレエ・カンパニーは、国内各地で巡業公演、また、連合軍への慰問を行った。そして、終戦後の1946年、バレエ・カンパニーは、再開された the Royal Opera House に本拠地を置くこととなる。
1947年、バレエ・スクールも再開され、姉妹バレエ団 the Sadler's Wells Theatre Ballet が創立される。 
1956年、Royal Charter を受けて、the Royal Ballet、the Sadler's Wells Royal Ballet、the Royal Ballet School と改称。
1970年、the Sadler's Wells Royal Ballet は、Birmingham の常設バレエ・カンパニーとして招聘され、the Birmingham Royal Ballet となった。

地下鉄 Piccadilly Line の Covent Garden から左に出て Floral Street から徒歩数分、劇場横のチケット売り場に到着。
さて、座席の見取り図を見ながら予算に合うシートを選ぶのだが、£6から£430までと様々な料金設定である。

ロイヤル・オペラ・ハウスの劇場は馬蹄形で、Orchestra Pit の後ろに連なる Orchestra Stalls、それを取り巻くように4層の桟敷席 Stalls Circle、Grand Tier、Balcony、Amphitheatre が設えられている。席数は、2256席。
舞台がよく見える席は、もちろん値段もそれなりに高い。 しかし、安いとはいえ、あまりに見えにくい席や立見席というのは、やはり敬遠したい。色々と決めかねていたが、幸いにも、土曜日の matinee で、バルコニー席を買うことができた。日本からオペラグラスを持ってきてよかった。

そして、12月になり、楽しみにしていた公演の日、地下鉄コヴェント・ガーデン駅で待ち合わせて劇場へと向かう。
2度の火災に見舞われ、1858年に再建されたロイヤル・オペラ・ハウス。 Bow Street 正面の柱廊玄関は、ミラノのスカラ座にならったものといわれる。
エントランス・ホールを通り、ショップでプログラムを購入して、バルコニー席入り口を見つける。
扉を開けて中に入ると、まあ、なんて素敵、クラシカルな劇場独特の雰囲気。 豪華というより、高貴という言葉がふさわしく、ライオンとユニコーンをあしらった大きなエンブレムが刺繍された真紅の幕も美しい。
オペラやバレエは、劇場空間ごと楽しむもの。 まさに、そのとおり。

マチネということもあって、子供連れの観客が多いが、子供たちは、この劇場の雰囲気に魅了されてか、お行儀よくしている。
やがて、照明が暗くなり、オーケストラの演奏が始まって、幕が上がった。




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