見出し画像

日本のコリアンダーの玄関口 #6

Top Page スパイスジャーナルという本
1.コリアンダーは伝統野菜
2.空港横にクシティの花畑
3.クシティはどこから来たのか
4.台湾とそれほどに近い
5.考察 海のシルクロード
特別編.クシティの味わいとレシピ

特別編.クシティの味わいとレシピ

 沖縄本島のハーブ農家である大原さんから、「与那国島ではコリアンダーが自生していて野菜として常食しているらしい!」という話を聞いたのは2013年の暮れのことだった。

 アジアが本場のはずのコリアンダーが、なぜ与那国島で?いったいいつから?!と気になって気になって。でも当時ネットでさえも情報は殆どなく、ならばと当時僕が主宰していたマガジン「スパイスジャーナル」でマンガを担当してくれていた堀内夫妻(大阪・阿倍野で『堀内チキンライス』経営)と共に島へ渡った。

 彼らが同行してくれたのは、奥さんのマキちゃんが沖縄出身で、ご親戚のスミ子さんが与那国島に住んでいることが分かったから。このスミ子さんをキーとして、島の数々のリアルを大勢の島民から聞かせていただくことができた。

 島ではコリアンダーをクシティと呼ぶこと。代々自家栽培を繰り返していること。結果的に自生化していること。常食は本当のことで、野菜感覚であらゆる食べ方が存在すること。旬は12月頃の冬野菜であること。などなど、まさに与那国島は日本のコリアンダーの玄関口と呼ぶに相応しい事実があった。

 こうして与那国島取材からしばらくが経った頃に、堀内君から嬉しい電話があった。スミ子さんからクシティが届いたというのだ。取材に伺ったのは4月のこと。島の旬は3月までで、取材時は人々のお話や畑を伺うことはできたものの、残念ながら食べることはできなかったのだ。飛んでいくと、サッカーボール一個分ほど?毎日食べても1、2週間は持ちそうなほどの量を頂戴した。

 それは、島の方々が異口同音に言うように、茎の部分が細く、短く、葉がわんさかで、確かに香りも鮮烈、ふわりとした食感であった。また一切のエグミがない。通常のスーパーにあるそれとは異次元のものであった。

 与那国島の皆さんから聞いたように、まずは鰹節とポン酢で食べてみると、これが不思議と日本に昔からあったかのような懐かしさで、タイ料理のイメージが一切ない。

 ちょっとマヨネーズも試してみる。するとちょっとクシティの香りが強過ぎのように感じたので、オニオンスライスをわずかに混ぜるとベストバランスになった。

 ほか、カジキマグロはそう簡単に入手できないので、マグロと鯛の刺身のツマにしたらばっちり。味噌汁、野菜炒めもパーフェクト。掻き揚げにしたら想像以上に香りは強く残った。しなやかで瑞々しくて甘みがある。毎日でも食べられそう。実際、20日間ほどかけて毎日食べ続けたがまったく抵抗感はなかった。

 写真を撮って、本島のハーブ農家大原さんに送る。

「あぁっやっぱり。若いうちに摘んでるんですよ。普通は20センチくらいが食べ頃なんですが、その前だと思うな。水分が多い上に、もしかしたら土の質もあるかなぁ。コリアンダーは大きく育つほどにアクが出てエグミが強くなりますから。本土ではそのエグミがコリアンダーの香りだと思っている人が多いようですが。これなら確かに柔らかで香りは華やか、瑞々しくておいしいと思います」

与那国島クシティ。茎は細いが徒長ではない

 与那国島には独自の栽培時期と収獲のタイミング、その方法、そして食べ方が存在する。人が何世代にも渡り、少しずつ経験を重ねて成し得た、熟成の習慣である。それを地域独自の食文化というのだと思う。与那国島には確固たるクシティ文化が存在した。

 詳しい話は、当ページのコンテンツをクリックしていただくとして、今回は特別編として、クシティを思い浮かべながら考えたカワムラ流レシピをお届けしたい。実際にイベントなどで何度も提供して大絶賛だったものなので、ぜひお試しあれ!


「与那国インセンスサラダ」(一人前)

●材料
・コリアンダー 18g(1袋) *近所のスーパーで購入
・ミズナ 13g
・オニオンスライス(水に浸けたもの) 13g
・皮むきピーナッツ(ロースト)  4g *なければ他のナッツで可
・シーチキン  15g
・かつおぶし(ソフト) ひとつまみ適量

ドレッシング(約10人分)一人前あたり約10g
・ポン酢 38~40g
・マヨネーズ 38~40g
・リンゴ酢 14g
・オリーブオイル 7g
・塩 少々

スパイス
・マスタードシード 小さじ1/4~1/3
・粗挽き黒胡椒 小さじ1/4~1/3
・ドライバジル 少々
・ドライミント 少々
・ドライパセリ 少々

●作り方
1.コリアンダーリーフを洗浄し、根と茎(葉の下あたりまで)をきる。葉側は2センチ幅ほどに切り分ける。
2.ミズナは洗浄し根を切り、2センチ幅に切り分ける。
3.オニオンは薄くスライスし、水に漬けて辛味を抜く。2、3回水を入れ替える。
4.ピーナツはローストして、乳鉢で軽く潰し割るか、包丁で半分ほどにざくざくと切る。
5.ドレッシングを作る。フライパンにオリーブオイルをたらし、マスタードシードを過熱し弾けたら火を切り、粗挽き黒胡椒、他のハーブを加える。
6.(5)にリンゴ酢、塩を加え、よく混ぜたらポン酢とマヨネーズを加え、さらによく混ぜる。
7.コリアンダーリーフ、ミズナの水気をよく切り、特にオニオンはしっかりと水分を切り、軽く絞るようにしてから、ピーナツと共に和える。
8.器に60~65g盛り付け、ドレッシングをかける。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?