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torutoru
2020年6月2日 23:54
「今度、飲み行こうね!」バイト終わり、彼女は必ずそう言って去って行く。「来週のサザエさんは〜」ばりに毎週毎週欠かさずに言ってくる。雨の日も、雪の日も、彼女がメイクを忘れてマスクをしてた日も。僕は「うん、絶対ね」と返して見送った後、「今度」の意味をスマホで調べる。「最も近い将来・この次・次回」今度という意味を考えれば考えるほど、わからなくなってくる。近い将来なのに、どんどんどんどん
2020年5月29日 19:53
「夜の匂いが早くなった、初夏がやってくるね」彼女は言い回しが妙だ。お婆ちゃんが日本を代表する俳人なのかもしれない。会話に必ず季語を入れてくる。どこか情緒をプンプンに漂わせて。朝会った時は、「おはよう、春眠が気持ちよかったねー」授業を終え外に出ると、「風強いー!薫風だー!」雨が降り続く午後は、「これは、送り梅雨かな?返り梅雨かな?」僕は訳もわからず相槌を打って、別れた後にGoog
2020年5月28日 19:04
「あー、私の人生こんなはずじゃなかったのになあ‥」彼女は僕に弱みを見せてくる。3回に1回はどこからか湧いてきた感情を、溜息混じりに吐露してくる。汚れた消しゴムのカスを丸めながら、浮かない表情の彼女を見つめる。授業中の表情も、学食での表情も、廊下を歩く表情も、彼女はどこか物憂げな感じがした。その様は、こんな不幸な私を見てほしい、と言わんばかりだった。こんな顔をしながら存在していれば、