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こいつ、おれのこと好きなんかな

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主人公の大学生は女の子に話し掛けられた全ての言葉を勘違いし、オチは全て「こいつ、おれのこと好きなんかな」で終わります。結末は全部同じなので、話し掛けられる台詞と、過程を楽しんでく…
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#かわいい

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑫』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑫』

「今度、飲み行こうね!」

バイト終わり、彼女は必ずそう言って去って行く。
「来週のサザエさんは〜」ばりに毎週毎週欠かさずに言ってくる。
雨の日も、雪の日も、彼女がメイクを忘れてマスクをしてた日も。
僕は「うん、絶対ね」と返して見送った後、「今度」の意味をスマホで調べる。

「最も近い将来・この次・次回」
今度という意味を考えれば考えるほど、わからなくなってくる。
近い将来なのに、どんどんどんどん

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑪』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑪』

「夜の匂いが早くなった、初夏がやってくるね」

彼女は言い回しが妙だ。
お婆ちゃんが日本を代表する俳人なのかもしれない。会話に必ず季語を入れてくる。
どこか情緒をプンプンに漂わせて。

朝会った時は、「おはよう、春眠が気持ちよかったねー」
授業を終え外に出ると、「風強いー!薫風だー!」
雨が降り続く午後は、「これは、送り梅雨かな?返り梅雨かな?」

僕は訳もわからず相槌を打って、別れた後にGoog

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『こいつ、おれのこと好きなんかな⑩』

『こいつ、おれのこと好きなんかな⑩』

「あー、私の人生こんなはずじゃなかったのになあ‥」

彼女は僕に弱みを見せてくる。
3回に1回はどこからか湧いてきた感情を、溜息混じりに吐露してくる。
汚れた消しゴムのカスを丸めながら、浮かない表情の彼女を見つめる。

授業中の表情も、学食での表情も、廊下を歩く表情も、彼女はどこか物憂げな感じがした。
その様は、こんな不幸な私を見てほしい、と言わんばかりだった。
こんな顔をしながら存在していれば、

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