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#9 『アントレプレナー』と『虎』

2022年11月某日

ふと、地方ビジネス界隈でのロールモデル像の変化を感じた。筆者が就職活動に精を出していた頃(リーマンショック前)は、「IT、六本木ヒルズ」などのキーワードが憧れの象徴かのごとく存在していたように思う。その後、リーマンショックを経て、2010年頃からは「newspicks」などのメディアの台頭もあり、「社会課題の解決」みたいなキーワードを耳にする機会が増えた。

その過程での地方ビジネスの様子はというと、正直、2010年代半ばくらいまでは、都市的なビジネスよりも「カッコ悪い」存在としての評価されてきたようにも思う。「ITプラットフォームを築き、GAFAを目指します!」のような世界に比べ、「板金からスタートして、飲食、介護福祉までゴリゴリ行きます!」という世界は、シュッとしたビジネス(メディア)界隈で「じゃない方」として扱われてきたと感じる。

しかし、最近、2020年以降あたりからは特に顕著に、ローカルを拠点とした地に足がついた、手触り感のあるビジネスが「カッコ良い」世界として認識されている。この要因は何だろうか。思うに「メディアの変化」というファクターは無視できない。具体的には、この時期はyoutube上に「ビジネス系」というカテゴリが大きく視聴を伸ばした時期でもある。その中で、「竹之内社長」や「竹花社長」など、新たなビジネスアイコンが登場し、話題の中心に位置づけられた。また、「令和の虎」の成長なども、所謂ローカルに根を張ったマイルドヤンキー型の優れた経営者を「憧れの対象化」することに貢献したと言える。

その結果、地方ビジネス界隈でも、「IPO」「M&A」などによるエクジットを目指す「スタートアップ」とは異なり、「暖簾分け(フランチャイズ)」「ローカル・コングロマリット」などを目指す成長、すなわち地元のフッドスターを目指すような起業家が増えている。地方の地縁やロードサイド市場の空隙を見つけてクイックに収益化してしまう、かつての「豪族・豪商」という世界観だ。そして、そのビジネススタイルに、コモディティ化したIT技術やマーケティング知識が溶け合うことで、成長速度は早まっている。何屋かイマイチわからないローカル・コングロマリットが増えている理由も頷ける。このような起業家を「ネオ豪族」とも表現できるかもしれない。

今後、本格的な人口減少局面に入るわが国において、ネオ豪族は地域経済の中で、今後も成長機会を見出すことができるだろうか。見ものである。そんなことを感じた。

ほなら。

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