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#5 固まった塊

2022年11月某日:『固まった塊』

中会議室での会議にて。ロの字で囲った机の前で、固まっているように見える男性が見える。寝ている訳ではなさそうで、よく見れば手元の赤のフリクションが動いている。配布された次第に何やらメモをしているようだ。議論のペースからして、記録する情報は限られているから、きっと自分のアイデアを文字でアウトプットしているのだ。立派な人だなと思った。

数分後、議論の流れを組みながら、少し話を振ってみた。名指しは避けたが、彼の立場から発言すべきテーマで。一瞬フリーズ、数秒の沈黙の後、彼の手元のフリクションが再び動いた。黙々と何か書いている。会議が終わり、荷物をまとめた頃、彼の姿はそこにはなかった。彼の声を聞けずじまいだった。そんな有識者だった。バリューの発揮などという無粋なことを言ってはいけない。彼がそこにいてくれることが価値なのだろう。知らんがな。


2022年11月某日:『意識的飛躍の難しさ』

最近なにかと『デザイン思考』が注目される。コンサル業界と広告代理店業界も接近している印象だし、地域活性化業界も経営系、広告系、デザイン、建築系など、様々なプレーヤーが競合している。地方予算を巡り、群雄割拠の乱世に突入していると言えよう。

デザイナーの思考法で参考になるのは『意図的に外す』視点である。彼らは、頭の中に存在する、常識的な因果・相関の関係を狙って外し、新らしい連関を見出し、イノベーションを起こす。パーソナライズドされたサービスのレコメンド機能に染まった世の中では、この力が必要とされるのも頷ける。

『意図的な外し』は、ネタ系ライターの人々も強い。『バーグハンバーグバーグ』や『おくりバント』などの広告系企業では、ライターのぶっとんだ妄想力こそが大きな商品価値として競争力を生んでいる。彼らは、概念間の意味的なつながりに囚われず、最も遠い概念を集め、組み合わせる。その結果生まれる言葉がパンチラインとなり、インターネットが梃子となり、笑いの環を大きくする。呼吸をするように遊べる彼らと、意識的にしか遊べない大衆での生み出せる社会的インパクトの差を感じざるを得ない。

ほなら。

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