マガジンのカバー画像

たのしい地方創生

71
地域活性化の業界で働く筆者の、日常のささい気づきを、まじめ風味でお届け。
運営しているクリエイター

#ローカルメディア

#32 『肩たたき券』とふるさと納税

2024年1月某日 年末年始、親戚同士の集まりに顔を出した。「お年玉」という名目で、未来への教育的投資も行なったりした。「将来は落語家になりたい」というA銘柄(息子)と、「大人になったら割烹屋さんになりたい」というB銘柄(甥)。どちらも魅力的だが、センスが渋い点が少々気になる。 さて、皆が集まる場でテーブルは、昨年の「ふるさと納税」による返礼品が埋め尽くしていた。カニ、ホタテ、牛タン、馬刺し など、満漢全席と見紛う絵面である(なお、筆者は地域経営を専門とする人間として、ふ

#23 『地方』である理由

2023年11月某日 最近、ふと疑問に思うことがある。なぜ、自分は地方で働いているのかということである。ふりかえると、なんとなく地方で生まれ・育ち、就職する際になんとなく地元に帰ってきた。よくよく考えると、筆者は地方で働く理由はあまりないのではないかとすら思えてきた。 … コロナ禍の際に、「地方移住」「東京からの脱出」「地方でリモートワーク」みたいな話題がよく聞かれ、世の中、「ほんとうは、地方がとても良いと思っていたんだよね。」という空気感につつまれた。筆者はこれに対し

#22 『時給』からの脱却

2023年11月某日 筆者は地方で会社員をしながら、副業で個人事業を営んでおり、いくつかの企業と取引している。取引のきっかけは、「知り合いから派生したもの」とか「知人から紹介されたもの」とか「クラウドソーシングで受注したもの」がほとんどであると言える。多くの会社員が副業を始めた最初の受注は、これらのチャネルから獲得することが多いだろう。 視点を変えて、業務内容はどうだろうか。筆者の場合、基本的には「ビジネスに関わる役務提供」が仕事のほとんどである。企画の代行や、資料作成の

#21 『最初の信用』の難しさ

2023年7月某日 近年、様々な企業で副業解禁の動きが加速している。筆者自身も、その流れに乗って、会社に申請をしたうえで、個人事業主としてビジネスサポートを行なったりしている。しかし、周囲の声に耳を傾けてみると、必ずしも全てのサラリーマンが等しく副業ライフをエンジョイしているわけでもない。聞くと、副収入を増やしたい気持ちは多少あるものの、『仕事がない』というのである。どういうことだろうか。 多くのサラリーマンの考える副業のイメージとして『クラウドソーシング』のような受託型

#20 『充て職』の呪い

2023年7月某日 地方をフィールドに、活性化の仕事に携わっていると、何かと『とある会議体に有識者として参加して欲しい』とか、『地元の大学で、講座をひとつ持って欲しい』という類の依頼に直面する。そして、その手の声がかかるのは、概ね地元の『定番企業』の『定番役職』の人だったりするわけで、結果として、どの会議体であっても顔ぶれは大体同じという状況が出来上がる。 筆者としては、地域の議論には、つねに『新鮮な視点』をとりこむ方法を考えることが大切だと思っている。それは、単に『ワカ

#19 『読み書き』

2023年7月某日 地域活性化の仕事に長らく携わっていると、その仕事のほとんどが『ペーパーワーク』で構成されていることに気づく。このことに対する是非は、別の機会に検討することにしたいが、事実はそうだ。 ペーパーワークがもっとも多い仕事として、自治体からの受託業務や、助成金を活用した事業などが挙げられる。ただ、SNSなどを広く見ていると、こういった仕事に対する不平・不満を多く見かける。『書類作業が煩雑すぎる!』『事務手続きに忙殺されて、事業の内容を検討する時間が無い!』とい

#18 『入力の創造性』

2023年5月某日 最近、何かと話題の『ChatGPT』をよく触っている。『まちづくり』『地域活性化』『地方創生』などのテーマ感で、課題や論点を聞いてみると、観光や地場産業振興など、当たり障りのないものしか返ってこない。ここに、筆者の『質問力の無さ』が明らかになることがなんとも悲しい。 AIとの対話を重ねていくと、だんだんと『質の高い質問』を考える癖がついてくる。これは、ものを考えることを仕事にしている人にとって、言うまでもなく重要なことである。例えば、研究論文などを書こ

#17 『福岡』

2023年5月某日 福岡市に来た。観光である。博多区の繁華街や、臨海部の開発地域を一通り見学して、あらためて都市の魅力に虜になった。『遊ぶ場所』『働く場所』『住む場所』が近接していて、空港までのアクセシビリティも良い。こういう場所が域外の人々からも選ばれやすいのも頷ける。 同じ地方都市の雄である名古屋と比較をしてみると、福岡の『緑』の多さに気がつく。特に、街路樹を中心に、身丈以上の高さの位置に豊富な緑があり、それらがもたらず木陰が景観の一部として機能しているとも思う。東京

#16 『ワカモノ』の加齢臭

2023年4月某日 山口周氏の『劣化するオッサン社会の処方箋(光文社新書)』を読んだ。ざっくりと理解した話はこうだ。従来、年配者は若年者よりも充実した経験と知識を保有しているから、情報蓄積媒体という点で優れていた。だから敬うことが美徳とされた。しかし、最近は環境変化のスピードが早くなってきたり、情報のコモディティ化が進み、年配者が相対的に多く保有していた『経験』や『情報』の価値の陳腐化が進んでいる。ゆえに、年配者だから無条件で『優れているとは言えない』ということである。その

#15 二極化する『経験豊富なシニア』

2023年4月某日 最近、地方のビジネス界で『荒ぶる先輩(シニア)』に悩む声が散見される。具体的には、会議体などで、ファクトに基づかない『経験』『感想』『持論』を一方的に述べ続け、場を制圧してしまうといった不具合が生じている。『今どきのワカモノ』はやさしいから、『傾聴』を基本姿勢としていることも、彼らのマウントエンジンを加速させるのだろう。みなさんお疲れ様です。 さて、少々毒づいた書き出しになっているが、実は、筆者は人生の先輩(シニア)を大変リスペクトしている。過去には、

#14 『地方』というファッション

2023年4月某日 最近、『地方創生』や『地域活性化』みたいな営みは、コモディティ化しているのではないかと感じる。決して、当事者としてニヒリズムに陥っているわけではない。おそらく、地方創生やまちづくりに関する営みが、ほんの少しだけ、ファッションとしての『おしゃれさ』を纏いつつある状況に、戸惑っているのだと思う。 筆者は、リーマンショック直後に就職活動し、紆余曲折を経て、現在では地域経済を調べたり、まちづくり事業の企画をしたりすることを仕事にしている。今でこそ、『地域活性化

#13 地域ブランドの『単位』

2023年4月某日 新型コロナウイルスによる混乱も少しずつ落ち着きを見せ、町に人が随分戻ってきた。特に、外国人旅行客を見かける頻度が明らかに増え、観光産業の復活と攻めのフェーズへの転換に期待が膨らむ。 さて、そんな中、観光庁が全国11のエリアを『モデル観光地』に認定(2023年3月)している。具体的なねらいは以下とされる。 筆者のざっくりとした要約で恐縮だが、つまるところ、1回の旅行で沢山のお金を使う人々に対して『深く刺さる』コンテンツや宿泊施設を整備することで、超ハイ

#12 『リカレントくん』と『リスキリングちゃん』

2023年1月某日 とある大学関係者から『リカレント』と『リスキリング』について話をきかせてもらった。どちらも、対象は『社会人』とした『学び直し』に関連する概念である。両者の定義の違いは以下の通りで、そこから気づいたことや自分の考えを少し整理してみたい。 一旦この定義をベースに考えてみると、両者の異同は『学びの先の目的』にあるように思う。具体的には、『リカレント教育(以下:リカレント)』は、社会人が自らのビジネスキャリアを発展するための多様な学びを対象とする反面、『リスキ

#11 流行と定番

2022年12月某日師走の忙しさに心を亡くしていたら、新型コロナに感染してしまった。幸いにして症状は軽く、10日間ほど自宅で仕事や勉強しながら、少しじっくりと内省する機会を得た。思えば、新型コロナが日本で認知されたのは、2020年初頭頃だった。2022年末までのおよそ3年間で、彼らは『流行』から『定番』へのシフトしつつある。この時間の長さについて、『長い』か『短い』かと考えてみると中々判断が難しい。とはいえ、ビジネスのフィールドで考えてみると、自社商品をたった2~3年で、『定