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#13 地域ブランドの『単位』

2023年4月某日

新型コロナウイルスによる混乱も少しずつ落ち着きを見せ、町に人が随分戻ってきた。特に、外国人旅行客を見かける頻度が明らかに増え、観光産業の復活と攻めのフェーズへの転換に期待が膨らむ。

さて、そんな中、観光庁が全国11のエリアを『モデル観光地』に認定(2023年3月)している。具体的なねらいは以下とされる。

(前略)今後のインバウンドの本格的な回復を見据え、消費額増加、地方への誘客をより重視するという観点から、訪日旅行における消費単価が高い傾向にある高付加価値旅行者の地方への誘客を促進する(以下略)

観光庁「高付加価値旅行者の誘客に向けて集中的な支援等を行う
モデル観光地11地域を選定しました」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news03_000235.html(2023年4月15日アクセス)。

筆者のざっくりとした要約で恐縮だが、つまるところ、1回の旅行で沢山のお金を使う人々に対して『深く刺さる』コンテンツや宿泊施設を整備することで、超ハイエンドなセグメントを開拓いていこう、ということである。

というわけで、『東北海道エリア』『松本・高山エリア』『北陸エリア』『伊勢志摩及び周辺地域エリア』など、全国で11エリアが採択され、国の重点的な支援を受けながら、調査や戦略づくりなどの活動を進めていくこととなる。

この手の取り組みは従来から存在するが、筆者の主観では、今回のケースはマーケティングの観点から相当高い運営レベルが求められると思う。その理由を『地域ブランド』と『エリアの単位』という2つキーワードを足がかりに考えてみたい。

まず、『地域ブランド』であるが、これは『顧客のアタマの中』に形成される情報と捉えることができる。よって、自治体や地域側が意図して設定した『エリア単位』が、そのまま顧客にとって意味のある(≒価値を感じる)空間としてブランド化できる訳でもない。実際、『東京』は強い地域ブランド・エクイティを持っていると思うが、これが『東村山市』と言われると良くわからん、となるのはおそらく筆者だけではないだろう。実際、学術的にもそのような議論はすでにされている。

このことから、今回観光庁が認知したモデル観光地でも、例えば『東北海道』などは、そもそも『北海道』という強力なブランドがある中、下位概念(※)である『東北海道』という単位でブランド化を試みており、少々違和感を覚える。というのも、今回のモデル観光地は『超ハイエンド』なカテゴリを開拓することがねらいなわけである。目の肥えた顧客のアタマの中で、『東北海道』は『北海道』より前に想起されるのだろうか。より魅力的なのだろうか。欧州の顧客が旅行先を検討する際、『タイ』『シンガポール』『日本』などの検討を経て、『京都』『鎌倉』『北海道』などの選択をくぐり抜け、その先に存在するオプションとして『東北海道』が登場するのが自然だろう。『タイ』『シンガポール』『東北海道』とはならないということである。

※『東北海道』は『北海道』の一部であるという、エリア単位の概念として『下位』という意味であり、両者の優劣を述べている訳では決してない。

そんなわけで、やはり確たる地域ブランドを確立するためには、エリア(少なくともエリアの名前)は工夫したほうが良いのではないかとも思ったりする。実際、『ニセコ』などは独自のブランドを確立しているし、世界を見渡せば『ドバイ』などは国名(アラブ首長国連邦)よりもブランド認知されていそうだ。『○○北海道』では、『北海道の一部』感が拭い去れず、ブランド選択における戦いにおいて、リングに上がれる機会を逸失する可能性がある。などと思った今日このごろ。

ほなら。

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