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たのしい地方創生

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地域活性化の業界で働く筆者の、日常のささい気づきを、まじめ風味でお届け。
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#日記

#62 『自然資源』の課金方法

2024年5月某日 松島に来た。旅行である。「日本三景」として知られる松島は、宮城県東部の沿岸部に位置し、松の木が生い茂った、多くの小さい島々が海に浮かぶ独特な景観を形成している。古くは、伊達政宗がどこかの島で宴を楽しんだり、松尾芭蕉が俳句を読んだりと、いろいろと歴史的なストーリーを有しているエリアであると言える。 さて、そんな松島であるが、現在は観光産業を中心に、地域の経済活動が行われている。飲食店、土産物店はもちろん、島々を巡る遊覧船も主要コンテンツの一部として運営さ

#48 地方の『スタートアップ界隈』

2024年3月某日 最近、地域活性化政策の中に、しばしば「起業・創業」「スタートアップ」みたいなキーワードを見かける。個人的には、地域活性化に向けて必要な要素として「しごと」、特に「情報通信」や「クリエイティブ・企画」などと関連する、相対的に若い人々を惹きつけやすいしごとが生まれることは、ひとまず賛成の立場をとっている。 しかしながら、様々な政策の方向性や実施内容を見ていると「ローカルからユニコーンを!」とか「スタートアップ支援プラットフォームを!」といった、キーワードば

#47 お金が『つかえない』

2024年3月某日 小規模ながら、自分でも商売の真似事などやってみると、「お金の稼ぎかた」のみならず、「お金の使いかた」が本当に難しいと思う。筆者は性格的に、リスクをとらずに、コツコツと地道にキャッシュを確保できるタイプのビジネスが好きだ。そのため、「役務提供」による利益率の高いビジネスばかり取り組んでいる。 しかし、役務提供型のビジネスの場合、どうしても個人の「時間≒工数」みたいなものが制約となって、事業としてスケーラビリティの問題に直面しがちである。その際、人や設備に

#46 『現在』と『将来』の意識配分

2024年3月某日 ここ最近、日経平均は随分高値で推移している。40,000円台などという水準が本当の存在したのかと、いまだに違和感を拭えない。筆者が社会人になりたての頃の日経平均は7,000〜8,000円台の水準にあったことを思い出すと、景気のサイクルというのは本当にあることを思い知らされる。 … さて、景気にはサイクルがあるので、良いときもあれば、悪いときもある。その循環を見越して、皆ライフプランなどを立てて、貯金やら投資したりするのである。 先日、大学院時代の友

#45 『バルク』と蟹

2024年3月某日 「バルク」という概念が好きである。 要するに、バラバラのものをガサっとまとめて取り扱う、みたいな概念で「バルク買い(ガサっとまとめて買うこと)」とか「バルクワイン(樽ごと取引されるワイン)」みたいな表現もある。 … さて、先日家族でふるさと納税で届いた蟹を食べる機会があった。美味しかった。その際、誰かがこんなことを言った。「ああ、私はこの"脚"のところばかり食べたいよ。なんならここだけでいい。」と。この主張には筆者も概ね同意するのだが、市場としては

#30 会心の『SWOT分析』

2024年1月某日 人間、何歳になっても知的好奇心を持って学び続けたい。近年の「学び直しブーム」を横目に、あらためてそう思う。人間として生を授かったわけなので、健康で文化的な人生を過ごしたいし、「教養」を携えた日常は「気付き」も多くて楽しい。 さて、そんなわけで「知識をつけること」「学び続けること」は素晴らしい。ただし、「知識の使い方」、すなわち「学びの結実のさせかた」の作法については個人的に大切にしたいことがある。それは、「自己満足のために他者を媒体として使わない」とい

#21 『最初の信用』の難しさ

2023年7月某日 近年、様々な企業で副業解禁の動きが加速している。筆者自身も、その流れに乗って、会社に申請をしたうえで、個人事業主としてビジネスサポートを行なったりしている。しかし、周囲の声に耳を傾けてみると、必ずしも全てのサラリーマンが等しく副業ライフをエンジョイしているわけでもない。聞くと、副収入を増やしたい気持ちは多少あるものの、『仕事がない』というのである。どういうことだろうか。 多くのサラリーマンの考える副業のイメージとして『クラウドソーシング』のような受託型

#20 『充て職』の呪い

2023年7月某日 地方をフィールドに、活性化の仕事に携わっていると、何かと『とある会議体に有識者として参加して欲しい』とか、『地元の大学で、講座をひとつ持って欲しい』という類の依頼に直面する。そして、その手の声がかかるのは、概ね地元の『定番企業』の『定番役職』の人だったりするわけで、結果として、どの会議体であっても顔ぶれは大体同じという状況が出来上がる。 筆者としては、地域の議論には、つねに『新鮮な視点』をとりこむ方法を考えることが大切だと思っている。それは、単に『ワカ

#19 『読み書き』

2023年7月某日 地域活性化の仕事に長らく携わっていると、その仕事のほとんどが『ペーパーワーク』で構成されていることに気づく。このことに対する是非は、別の機会に検討することにしたいが、事実はそうだ。 ペーパーワークがもっとも多い仕事として、自治体からの受託業務や、助成金を活用した事業などが挙げられる。ただ、SNSなどを広く見ていると、こういった仕事に対する不平・不満を多く見かける。『書類作業が煩雑すぎる!』『事務手続きに忙殺されて、事業の内容を検討する時間が無い!』とい

#18 『入力の創造性』

2023年5月某日 最近、何かと話題の『ChatGPT』をよく触っている。『まちづくり』『地域活性化』『地方創生』などのテーマ感で、課題や論点を聞いてみると、観光や地場産業振興など、当たり障りのないものしか返ってこない。ここに、筆者の『質問力の無さ』が明らかになることがなんとも悲しい。 AIとの対話を重ねていくと、だんだんと『質の高い質問』を考える癖がついてくる。これは、ものを考えることを仕事にしている人にとって、言うまでもなく重要なことである。例えば、研究論文などを書こ

#17 『福岡』

2023年5月某日 福岡市に来た。観光である。博多区の繁華街や、臨海部の開発地域を一通り見学して、あらためて都市の魅力に虜になった。『遊ぶ場所』『働く場所』『住む場所』が近接していて、空港までのアクセシビリティも良い。こういう場所が域外の人々からも選ばれやすいのも頷ける。 同じ地方都市の雄である名古屋と比較をしてみると、福岡の『緑』の多さに気がつく。特に、街路樹を中心に、身丈以上の高さの位置に豊富な緑があり、それらがもたらず木陰が景観の一部として機能しているとも思う。東京

#16 『ワカモノ』の加齢臭

2023年4月某日 山口周氏の『劣化するオッサン社会の処方箋(光文社新書)』を読んだ。ざっくりと理解した話はこうだ。従来、年配者は若年者よりも充実した経験と知識を保有しているから、情報蓄積媒体という点で優れていた。だから敬うことが美徳とされた。しかし、最近は環境変化のスピードが早くなってきたり、情報のコモディティ化が進み、年配者が相対的に多く保有していた『経験』や『情報』の価値の陳腐化が進んでいる。ゆえに、年配者だから無条件で『優れているとは言えない』ということである。その

#15 二極化する『経験豊富なシニア』

2023年4月某日 最近、地方のビジネス界で『荒ぶる先輩(シニア)』に悩む声が散見される。具体的には、会議体などで、ファクトに基づかない『経験』『感想』『持論』を一方的に述べ続け、場を制圧してしまうといった不具合が生じている。『今どきのワカモノ』はやさしいから、『傾聴』を基本姿勢としていることも、彼らのマウントエンジンを加速させるのだろう。みなさんお疲れ様です。 さて、少々毒づいた書き出しになっているが、実は、筆者は人生の先輩(シニア)を大変リスペクトしている。過去には、

#14 『地方』というファッション

2023年4月某日 最近、『地方創生』や『地域活性化』みたいな営みは、コモディティ化しているのではないかと感じる。決して、当事者としてニヒリズムに陥っているわけではない。おそらく、地方創生やまちづくりに関する営みが、ほんの少しだけ、ファッションとしての『おしゃれさ』を纏いつつある状況に、戸惑っているのだと思う。 筆者は、リーマンショック直後に就職活動し、紆余曲折を経て、現在では地域経済を調べたり、まちづくり事業の企画をしたりすることを仕事にしている。今でこそ、『地域活性化