マガジンのカバー画像

たのしい地方創生

68
地域活性化の業界で働く筆者の、日常のささい気づきを、まじめ風味でお届け。
運営しているクリエイター

2024年1月の記事一覧

#39 『巣箱とセレンディピティ』

2024年1月某日 実家の父親が、庭にある楓の木に手製の「鳥の巣箱」を据えていた。なんなのかと聞いてみると、「何かの縁で鳥でも住みついてくれたら、庭の景観がよくなるだろう」とのことであった。粋な発想なのか、単にセコいだけなのかはよくわからないが、とにかく父親は楓の木に鳥が遊びに来るたびに、「よしきた、いけっ!いけっ!」と、まるで競馬場の最終コーナーのような奇声を発している。鳥は、いっこうに入らない。 … さて、思えば、アイデアとかセレンディピティなんかも、「こい!降って

#38 『少ないコーヒー』

2024年1月某日 最近コーヒーを飲むことが増えた。朝、自宅ではほぼ毎日インスタントコーヒーを飲んでいるし、外出の途中ではコンビニコーヒーを買ってばかりいる。さらに、打ち合わせの最中にもコーヒーを出していただくこともある。ちょっと飲み過ぎなきらいもある。こんなにも沢山コーヒーを飲んでいると、豆の産地や淹れ方などにも興味が湧きそうなのだが、筆者は「ド素人」の領域から脱却できていない。 … さて、コーヒー素人ゆえに気になることがある。「エスプレッソ」というやつである。ちょっ

#37 システムの『見た目と中身』

2024年1月某日 デジタル化が加速している。地方のビジネス業界においても、「DX」を「デラックス」という人は皆無に近づいてきたし、財界の大御所による「チャット"ジーティーピー"」という間違いも修正されてきた。みなさん、テクノフォビアを克服しつつある。もうすこし、がんばろう。 さて、地方創生の文脈においても、テクノロジーの活用が進んで久しい。自治体業務の効率化だの、DMOのマーケティングだの、様々な領域でシステムやアプリケーションが導入されている。また、人手不足に悩む地域

#36 『百貨店』のコア・コンピタンス

2024年1月某日 名古屋の百貨店を訪れる機会があった。ここ数年、オンラインコマースに慣れて、だらしないカラダになってしまっていた。やっぱり、リアルな買い物には相応の魅力があるとあらためて感じた。 さて、最近は百貨店も様々に独自色をだそうと、空間づくりやキュレーション面で面白い取り組みが増えていると思う。名鉄百貨店では、中部の工芸品らを中心に取り揃えた「名鉄商店」なるセレクトショップもできていた。かっこいい。 まがりなりにも地方創生に関わる者として、このような店舗は大好

#35 『本屋』

2024年1月某日 昔から「古本屋」に憧れがある。街の中に佇む「古書店」みたいな雰囲気のお店である。あのような雰囲気のお店の店主をしながら、地域に溶けるように暮らすライフスタイルは、とても洗練されたものだと思う。そんなことから、最近「本屋」をつくりたいと思うことが多い。動機の背景には、地方における本屋事情の課題もある。 さて、全国には1万強の本屋が存在すると言われている。ただし、方向感としては減少トレンドにあり、地方においては本屋が1つもない行政区も多く存在しているという

#34 『土管の上のリサイタル』

2024年1月某日 仕事をしていると、色々な人とコミュニケーションをとることになる。性別・年齢・国籍・業界・趣味嗜好など、実に様々だ。プライベートな生活の領域ならば「付き合う相手」は自分で取捨選択することがしやすいが、仕事となるの少々難しい(そこを選んでいける境地に辿り着きたいものだが)。 さて、仕事におけるコミュニケーションの風土について、筆者なりの好みがある。筆者のような小者は、相性次第で会議での発言品質が大きく変動してしまうこともあるため、できる限り「合う」お相手と

#33 『余白』の最適化

2024年1月某日 10年ほど前から、いわゆる「ミニマリスト」的な価値観を大事にしている。所有するモノはなるべく少なくしているし、軽薄短小をコンセプトとしたガジェット類にも目がない。また、ライフスタイルにおいても「机の上には何も置かない」とか「ガラモノの服はほとんど着ない」とか、ちょっとしたこだわりもある。 さて、このような考え方は、一体何を目的にしているかというと「余白のマネジメント」である。個人的な肌感覚として、心理的・物理的に「余白」が多い状態のほうが、なんだか心地

#32 『肩たたき券』とふるさと納税

2024年1月某日 年末年始、親戚同士の集まりに顔を出した。「お年玉」という名目で、未来への教育的投資も行なったりした。「将来は落語家になりたい」というA銘柄(息子)と、「大人になったら割烹屋さんになりたい」というB銘柄(甥)。どちらも魅力的だが、センスが渋い点が少々気になる。 さて、皆が集まる場でテーブルは、昨年の「ふるさと納税」による返礼品が埋め尽くしていた。カニ、ホタテ、牛タン、馬刺し など、満漢全席と見紛う絵面である(なお、筆者は地域経営を専門とする人間として、ふ

#31 『ゆかり』から考えるカテゴリ

2024年1月某日 「2024年」とタイピングするのも慣れてきた。少しずつ、年明けムードも薄くなり、「今年」が肌に馴染んできた印象だ。 … さて、筆者はとある地方都市で会社員をしながら自営でフリーランスとしても活動している。そんなことから、基本的には毎朝決まった時間に自宅を出発し、電車にて通勤している。 自宅を出る前に軽めの朝食をとることが多い。メニューは「おにぎり」が6~7割である。今日のおにぎりは「ゆかり」味だった。何気なく妻に問いかけてみた。わが家のおにぎりの"

#30 会心の『SWOT分析』

2024年1月某日 人間、何歳になっても知的好奇心を持って学び続けたい。近年の「学び直しブーム」を横目に、あらためてそう思う。人間として生を授かったわけなので、健康で文化的な人生を過ごしたいし、「教養」を携えた日常は「気付き」も多くて楽しい。 さて、そんなわけで「知識をつけること」「学び続けること」は素晴らしい。ただし、「知識の使い方」、すなわち「学びの結実のさせかた」の作法については個人的に大切にしたいことがある。それは、「自己満足のために他者を媒体として使わない」とい

#29 『ラボのハコ』

2024年1月某日 最近のまちづくりの取組事例などをパラパラ見ていると、圧倒的に「場づくり」に関するものが多い。コミュニティを起点とした、ゆるやかに人が集まる空間を演出するといったものである。コミュニティを編集するテーマはさまざまで、「起業・創業」を謳うものから「世代を超えた交流」まで、色々ある。 さて、筆者は「場づくり」に関する取り組みについて、基本的には前向きに評価している。実際、そのような機会があれば、積極的に顔をだすようにもしている。そして、できればこれらの活動が

#28 『安眠列車』

2024年1月某日 新年初出勤のために電車に乗る。学生諸君は学期がはじまる前なのか、ふだんより席が空いている。まだ仕事を始める前なのに、なんだかぐったり疲れた風体の企業人のみなさんが、ちょっぴり傾き、目を閉じ、座っている。みなさんお疲れ様です。 さて、筆者は普段あまり電車の中で眠ることはしない。かなりの確率で降車駅をスルーするためである。器用に起きれる自信もないし、そもそも「○○駅で降りなきゃ…!」というプレッシャーが心を支配してしまい、心地よい睡眠体験を享受できる気がし

#27 『上流過多』

2024年1月某日 地方のビジネス界隈でも、いわゆる「デキる人」の層が厚みを増しているような気がする。「デキる人」の多くは、論理的思考やマーケティング分野についてよく学んでいて、いわゆるコンサルタントのような雰囲気を纏っている人が多い。まちづくりに関わる大学生などにも、この特徴が見られることも少なくない。 さて、「デキる人」が地域ビジネスの文脈に関わっていただくことは喜ばしいことであるが、個別のケースでは同時に少し困った状況も生まれている。「デキる人」の皆が「上流工程」を