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#35 『本屋』

2024年1月某日

昔から「古本屋」に憧れがある。街の中に佇む「古書店」みたいな雰囲気のお店である。あのような雰囲気のお店の店主をしながら、地域に溶けるように暮らすライフスタイルは、とても洗練されたものだと思う。そんなことから、最近「本屋」をつくりたいと思うことが多い。動機の背景には、地方における本屋事情の課題もある。

さて、全国には1万強の本屋が存在すると言われている。ただし、方向感としては減少トレンドにあり、地方においては本屋が1つもない行政区も多く存在しているという。筆者が生活している人口10万人強の地方都市でさえも、標準的な本屋は数えるほどしかなく、そのほとんどは大型ショッピングモールにテナントして入居している形態だったりする。

もちろん、Amazonなども使いやすくなっている訳なので、「本を買う」というチャネルに関して不便を感じることはほぼない。しかし、筆者は街の中に「店舗としての本屋」が少ない(あるいは"無い")ことは、大変寂しいことだと感じている。というのは、「本屋」に期待することは、「意図した、偶然の、知識的出会い」だと思うからである。

なんとなく本屋に来て、知的な空間に気持ちが湧き立ち、装丁などさすりながら、全然興味のなかったエッセイなんか手にとり、文化レベルが上がったような気がしてニンマリする、みたいな半日の体験価値をECサイトで提供するのは難しいだろう。自分の生活や知識体系の中に「ランダムネス」を取り込むための「意識的なアクション」として「本屋にいく」という体験機会の多寡は、その地域や人の文化レベルの水準に大きく関係していると思う。

ユニークなアイデアというのは「組み合わせ」の中で生まれるものだと言われる。だとするなら、「偶然なる知識との出会い」を提供する本屋が立地しているか否かは、その地域の「イノベーション創発力」の先行変数の一部であると言っても矛盾しないのではないだろうか。そういうわけで、「本屋」をつくりたいのだけれど、業界のことも良くわからないので、本でも読んで学ぶこととする。

ほなら。

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