『5つのスキル』を鍛えれば “対話力” は向上する! 【対話力 #05】
前回は「スキル」と「あり方」という二つの視点について語り、「とにかくあり方が大事なんだよ〜」ということを、しつこいくらい、たっぷり語った。
というわけで今回からは、どっぷりとスキルの話をしたいと思う。
対話力とは「引き出す力」である。
この話は、このnoteで何度もしてきたが、それをさらに分解していくと、以下の「5つのスキル」に分けられると私は考えている。
① 傾聴力
② 質問力
③ 理解力
④ 再構成力
⑤ フィードバック力
端的に言えば、この5つをバージョンアップさせることで、対話力は向上していくというわけだ。
まずは「傾聴力」。
傾聴という言葉自体は、おそらく誰もが知っているだろう。
とはいえ、「傾聴ってどういうことですか?」とあらためて質問されると、微妙に答えに困ってしまう・・・そんな人が多いのではないだろうか。
傾聴って何だ?
ちなみに私は、傾聴とは「興味を持って、肯定的に、ふむふむ聴くこと」と言い切ってしまっている。乱暴な言い切りではあるが、そう言ってしまって、まあまあ齟齬は起こっていない。
興味を持って、肯定的に、ふむふむ聴く。
言葉にすると、めっちゃ単純なのだが、これがなかなか一筋縄ではいかない。
たとえば、特に意識をしなくても、自然に「興味が持てる相手」「興味が持てる話」という場合は問題にならないだろう。問題は、そうでない(興味が持てない)ケースのときだ。
●そもそも相手のことが好きじゃない。(人として興味が持てない)
●相手の話に興味が持てない。(話がつまらない。よくわからない。興味のない話題ばかり・・・)
●自分にはもっと別に興味の対象がある。(あなたの話より「○○」の方が気になっている・・・、「こんなことを伝えたい」「わかってもらいたい」という思いがこちら側にある、などのケース)
こうしたさまざまな事情によって「興味が持てない」という事態は、けっこう頻繁に起こるのだ。
これが、どうでもいい世間話をしているときなら、それこそどうでもいいのだが、“よき対話者” として相手と向き合う場合はそうはいかない。
対話力を向上させるというのは、つまるところ「興味のない相手」「興味のない話」という場合でも、変わらずに「興味を持って聴くことができるようになる」ということだ。
余談ながら、スキルを向上させる場合、このように「何を向上させるのか」(what)を明確にしておくことは非常に大切だ。(ちなみに「どうやって向上させるのか」(how)については、何号か後にまたしっかり語るので、ここでは「what」に集中して読み進めて欲しい)
話を戻そう。
どんな相手、どんな話でも、興味を持って聴けるようになる。
はっきり言って、これはスキルの領域である。厳密に言うと、2割くらいは「意識」の話だが、残りの8割は「スキル」で補うもの。そう私は捉えている。
「相手の話に興味を持てない」というのは、興味の持ち方を知らないか、興味を持つためのトレーニングが不足しているかのどちらかだ。
これは「肯定的に聴く」という要素についてもまったく同じで、ごく自然に「肯定的になれる相手」「なれる話」の場合はまったく問題はない。
しかし、自分の価値観や正義、常識やモラルと著しく異なる話を聞かされると、どうしても相手のことを否定的に受け止めたくなってしまう。
たとえば、こんなケースはどうだろう。実際に、ある30代の女性が話してくれたことだ。
「私の職場にいる人は、ホントに無能で、バカばっかり。私はこんなバカばっかりの中で働くような人間じゃない。でも、そのことを周りの人も、上司も全然わかってないから、評価もロクにされないし、給料も上がらない。
もちろん転職も考えているけど、世の中、ブラック企業ばっかりだから、転職も、あんまり意味ないんじゃないかと思う。結局、自分の実力を発揮できるような会社に入れなければ、転職活動自体、時間の無駄だし、そもそもここでのキャリアは全然ウリにならないと思うし・・・」
この話を目の前でされたら、あなたはどう感じるだろうか。
●周りの人を「バカだ」「無能だ」なんて言ってるのはよくない!
●「周りは無能で、自分は優秀」っていうのも、ただの思い込みじゃないか?
●いつも「まわりのせい」にしているようでは、何も解決しない!
●転職に関する行動もしないで「できない理由」「しない理由」ばっかり挙げているだけではダメ!
そんなことを感じる人も少なくないだろう。正直言えば、私だってそう思った。
でも・・・だ。
この人の話を傾聴するからには「興味を持って、肯定的に」聴かなければならない。その出発点に立ち戻ったとき、
では、この人の何を肯定すればいいのだろう。
あなたは “対話者” として、この人のどこを肯定しながら、話を聴くだろうか。
これもまたスキルの領域だと、私は考える。
もちろん、これまでのnoteで語った「あり方」が大事なのは言うまでもない。でも、その「あり方」を理解していても、「肯定の仕方」というものがわかっていなければ、(自分の価値観に反するものを)決して肯定することはできない。
だからこそ、「肯定の仕方」を知り、「肯定するトレーニング」を積む必要があるのだ。
早足ではあるが、ここまでが「興味を持って、肯定的に・・・」という部分である。
そして最後に「ふむふむ聴く」の話をしよう。
もちろん、ここにも重要な意味がある。ただなんとなくカワイイから「ふむふむ」なんて言っているのではないのだ。
ここで言う「ふむふむ」とは、「私は興味を持っていますよ」「あなたを肯定していますよ」ということを “相手に伝える” という行為にほかならない。
つまり「ふむふむ聴く」とは、「こちらの興味と肯定を伝えながら聴く」ということなのだ。
いかに相手に興味を持ち、肯定的に聴いているとしても、それが相手に伝わらなければ、傾聴ができているとは言えない。「自分が感じている興味」「肯定しているというスタンス」というものを、いかに相手に伝え返すか。これもあきらかにスキルである。
じつは、この「ふむふむ」というのは「5つのスキル」のなかで、①の「傾聴」の要素であると同時に、⑤の「フィードバック」の領域にも関わっている。
くどいようだが、「伝え返す方法」「フィードバックする方法」を知らず、「そのためのトレーニング」ができていなければ、正しい傾聴はできないということだ。
以上が「5つのスキル」のうちの一つ目「傾聴力」というものである。
対話力を向上させるために、まずこの「傾聴力」をアップさせるアプローチが必要だと、私は考えている。
そのキーワードが「興味」「肯定」「ふむふむ」なのだ。
ちなみに、これを「どのように身につけるのか」(how)という部分については「5つのスキル」すべての説明を終えた後に触れようと思っている。
というわけで、次回は「質問力」について語る。
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