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まりさんのこたえ:「昔からの慣習」は正しい?(リレ哲)


「昔からの慣習」は正しい?

 私はこの問いに対してすっきりとしない感じがある。でも言葉にならない。なので今回は、まず「慣習」という言葉を検索してみることから始めた。

「慣習」とは、ならわしやしきたりという言葉でも表現され、一定数の人が集まった集団、社会などで、そこに所属する多くの人が認めていたり繰り返し続けられたりする行動様式であり、広義の社会規範(social norms)という側面もある1)2)3)。

あゝそうか、すっきりしない理由がわかった。 「慣習」という言葉にポジティブとネガティブの両面を感じるからである。

 私が、「昔からの慣習」→ポジティブと感じるのは、伝統文化や伝統工芸だ。

華道や茶道、歌舞伎などに代表される伝統文化や日本各地に残る伝統工芸は、その文化や工芸において、長年に渡り人々に受け継がれてきた作法や技術である。この長い時間をかけて繰り返されてきた型は、先人達の知恵や技術の伝承としての行動様式なくしては、今私たちが目にしたり触れたりすることはできないであろう。この文化や工芸技術等の面々と繋がって継承されてきたことに感服するのである。
(こんなに、とうとうと語るのも、実は私、伝統工芸全般が大好きなのだ!)

 でも「昔からの慣習」→「社会規範」となると、モヤっとネガティブなイメージを抱く。私は何に反応しているのか?そこでこの「社会規範」も調べてみた。

「社会規範」とは、集団や社会の中で共同生活を維持するためのルールであり(芸術や文化、宗教、慣習、法律等)、その集団に存在する暗黙のルールを示すことも含まれる。集団の多くの成員からルールに従った行動が期待され、守らない行動は周囲から負の感情を向けられるだけでなく、時に罰が与えられる4)。

 なるほど、この“暗黙のルール”と“周囲から向けられる期待”とそれに“添わない時に向けられる負の感情”。「昔からの慣習」という言葉の中に、これらの社会規範の側面を感じ取ると、私はネガティブな感覚として受け取るのだ。

 幼い頃、大人から「これって、こういうものでしょ!」と言われた時、無邪気に「え?それはどうして?」と尋ねる度に、気難しい子とか面倒くさい子と言われたことを思い出した。

ここまで書いて、ある記事を思い出した。

 秋田に無形文化財として指定される「秋田銀線細工」という伝統工芸がある5)。

0.2mmほどの銀線でつくり出される伝統工芸品で、元は江戸時代、秋田藩の城下で刀や刀装金具・武具・甲冑などの武家向け製品製造から始まったという。その伝統技術は継承しつつ、時代の変化や産業化に伴って新たな技術やデザイン性を加え今に残っている。

それが更にデザイン性の高いアクセサリーとしてブランド化されたという記事だった6)。

 何百年と続く先人の知恵や技術を次の世代に残していくためには「変えてはいけないもの」と「変えていかねばならないもの」を見分けつつ模索と研鑽をし続ける必要があるのだろう。

 となれば「昔からの習慣」の“暗黙のルール”も、今の時代に添ったものにアップデートしていくのはどうだろう。

 先ず手始めに、「あたりまえでしょ」に対して「それはどうして?」と誰かが問うた時、問われた側が「そうだね、どうしてだろうね?」と考えてみるとか、

誰もがもしも昔からの慣習に対して「あれ?」と思ったら「なぜ?」と言えて、誰でもみんなで対話や検討できるということが”暗黙のルール”になったらおもしろい。(そうかこれって「心理的安全性」)

 ただし、この”暗黙のルール”、コスパは良いが(対話をするだけで、新しいアイデアや価値が生み出される可能性がある)、タイパ(対話の時間はプラスされる)は悪そうだ。

もしかすると近年の“タイパ”を”暗黙のルール”とするのは、既に要検討の時期にきているのかもしれない。

 今回は、「慣習」という言葉の意味を調べることから始め、言葉の意味から自由に連想をしていった。そこで経験したことは、今と昔、未来へと想いが揺れて行きつ戻りつ、気づきを得ながら、普段ははっきりと意識していなかったことへも広がっていったように思う。

お題という*ひと雫*がまるで波紋のように広がっていくような体験。私にとって、とても贅沢な時間だった。


<参考文献>

1.  慣習 - Google 検索 Oxford Languagesの定義(2024年6月27日検索)
2.  ならわし - Google 検索 Oxford Languagesの定義(2024年6月27日検索)
3.  しきたりとは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp) 日本大百科全書(2024年6月27日検索)
4.  社会規範 コトバンク 日本国語大辞典(2024年6月28日検索)   https://kotobank.jp/word/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E8%A6%8F%E7%AF%84-75570

5.  秋田 工芸 秋田銀線細工(2024年7月5日検索)
6.  新ジュエリーブランド〈TOUROU〉。デビューコレクションに秋田銀線細工を採用|「colocal コロカル」ローカルを学ぶ・暮らす・旅する(2024年7月12日検索)

(まりさん)


まり

◆ステータス:プラクティショナー
「止まり木ファシリテーター」

◆プロフィール:
「働く」をキーワードに、産業・医療・福祉・教育の分野でカウンセラー(臨床心理士/公認心理師)として働いてきました。「働くことは生きることに繋がる」をモットーに、個人、集団、組織を支援させて頂いています。「半径2メートルの安心」をいかに提供できるか。これからも自分の在り方を模索してきたいと思っています。

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【ピョエ坊(ソジテツ広報)より】
ある問いに対する自分のことばをリレー形式で書いてもらうリレ哲。次回のバトン走者は、問いを変えて準備中。どんな「自分自身のことば」を紡いでくださるか、楽しみです。

ソジテツは、ふつう・当たり前や、一般論、世間的な正しさではなく、ひとりひとりの中にある様々な「自分の考え・体験・価値観」を表現することを、大事にしています。こたえはきっと百人百様だと思いますが、それが素敵なことなんです。

これをご覧のみなさんも、良ければ「自分の考え・体験・価値観」で考えてみてくださいね。

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