いのうえひろみ(tetote)

岩手県在住/ライター。得意ジャンルは岩手のものづくり(陶磁器、木工、編組etc)ほか食…

いのうえひろみ(tetote)

岩手県在住/ライター。得意ジャンルは岩手のものづくり(陶磁器、木工、編組etc)ほか食と農に関すること。2011年より「てとて」という屋号で手仕事と食に関するイベントも企画しています。目指しているのは、小さくても温かな場所づくり。https://tetote-iwate.com/

マガジン

  • つくるをつなぐ

    地域でつくられたものを地域でつかう。 「つくるをつなぐ」はそんな世の中の動きを、 食材のみならず工芸やクラフト分野へも広げていく試みです。 まずはウェブから。 岩手のものづくり、お楽しみくださいね。

  • 食のあしあと

    定番、珍品、思い出の味。岩手の「おいしいもん」をほぼ主観でご紹介していくイラストエッセイ。ホームページ(https://tetote-iwate.com/)と連動して展開ちゅう。

最近の記事

「根ざす」ということ/東日本大震災から10年、被災地取材を通して感じてきたこと

東日本大震災から、まもなく丸10年を迎える。 今年も、いろいろなメディアで特集記事や番組が組まれ、復興の進ちょく具合や総括、それに伴う新たな課題といったことが場所や視点を変えながら慌ただしくリポートされている。 3月11日は多くの人が被災地に思いをはせる記念日なのだ。 だがそれも、今回かぎりなのかもしれない。 「けじめ」をやたら連呼する偉い人や「節目」というフレーズを繰り返す新聞やテレビを見ていると、もういいでしょ10年も経ったんだからという空気が世間に漂っていることを感じ

    • あじまんの季節

      冬になると、市内のホームセンターの横に小さなおやきの店が立つ。 名は「あじまん」という。 調べてみたら、山形県に本社があるチェーン店で、 毎年、10月下旬から翌年4月あたりまで冬季限定で営業するらしい。 岩手山に雪が3回降ったらとか、軒下に羽虫が群がっていたよとか 冬の到来を感じる瞬間はいろいろあるけれど、 私の冬は、ホームセンター横にちんまりとたつ空きプレハブに あじまんの看板が掲げられ、それを照らす灯りが点くと、スタートする。 そしてワクワクしながら、今季最初のあじまん

      • 【つくるをつなぐ】短角牛のステーキからひもとく filoの流儀(岩手県盛岡市)

        地域でつくられたものを地域でつかう。 「つくるをつなぐ」はそんな世の中の動きを、 食材のみならず工芸やクラフト分野へも広げていく試みです。 器の作り手と料理人の出会う場づくりに向け、 それぞれの仕事の世界をウェブ上でご紹介していきます。 料理人編 Vol.1 短角牛のステーキからひもとく filoの流儀 盛岡市の南、古い町並みが残る河南地区。 その一角、猫たちがのんびり棲息する静かな小路。 大人気のわんこそば店も程近いその場所に「filo」はある。 瀟洒な土蔵造り

        • 【つくるをつなぐ】小久慈焼ができるまで  スープカップからひもとく「ものづくり」

          地域でつくられたものを地域でつかう。 「つくるをつなぐ」はそんな世の中の動きを、 食材のみならず工芸やクラフト分野へも広げていく試みです。 器の作り手と料理人の出会う場づくりに向け、 それぞれの仕事の世界をウェブ上でご紹介していきます。 器職人編 Vol.1 小久慈焼ができるまで スープカップからひもとく「ものづくり」 .............................. >かたち ろくろに乗った土が手の中で生き物のように動く。 最初に生まれたかたちが円錐形。

        「根ざす」ということ/東日本大震災から10年、被災地取材を通して感じてきたこと

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        • つくるをつなぐ
          2本
        • 食のあしあと
          6本

        記事

          【食のあしあと】永遠に食べそこねた「どっ辛」。好きだったら迷わず買え!

          食べ物は、その土地の個性や風土をよく表しています。 「食のあしあと」は、昔から食べられている食材や郷土料理、 長く人々に愛されている名物を探し出し、主観でご紹介していく イラストエッセイです。岩手はおいしいもんがい〜っぱい。                    illustration by ENGAWA  東北地方を中心に作られている「しそ巻きみそ」。本場は宮城や山形のようだけど、研究熱心な農家のお母さんが多い岩手でも産直などでよく見かける。  見た目は青じその葉に包

          【食のあしあと】永遠に食べそこねた「どっ辛」。好きだったら迷わず買え!

          【食のあしあと】素朴さって実は豊かさ。爽やかな香りと口溶けが恋しい盛岡銘菓

          食べ物は、その土地の個性や風土をよく表しています。 「食のあしあと」は、昔から食べられている食材や郷土料理、 長く人々に愛されている名物を探し出し、主観でご紹介していく イラストエッセイです。岩手はおいしいもんがい〜っぱい。                    illustration by ENGAWA  ちょっとだけ甘いものが欲しくなるときってないだろうか。それもケーキや菓子パンみたいなヘビィ級ではなく、“スイーツ”と称するほどもったいぶらず、ポンと口に放り込めるよう

          【食のあしあと】素朴さって実は豊かさ。爽やかな香りと口溶けが恋しい盛岡銘菓

          【食のあしあと】賢治のふるさと花巻発。やさしさも巻いて、揚げたてをどうぞ

          食べ物は、その土地の個性や風土をよく表しています。 「食のあしあと」は、昔から食べられている食材や郷土料理、 長く人々に愛されている名物を探し出し、主観でご紹介していく イラストエッセイです。岩手はおいしいもんがい〜っぱい。                    illustration by ENGAWA 日和佐のしそ巻き定食  もういい年なのに揚げ物の誘惑には勝てず、食べてから「ああカロリーが」などと気にしてしまう。肉も魚もそして野菜も、衣をまとわせ揚げただけで、なぜ

          【食のあしあと】賢治のふるさと花巻発。やさしさも巻いて、揚げたてをどうぞ

          【食のあしあと】ある意味門外不出。岩手県沿岸地域の最強ソウルフード

          食べ物は、その土地の個性や風土をよく表しています。 「食のあしあと」は、昔から食べられている食材や郷土料理、 長く人々に愛されている名物を探し出し、主観でご紹介していく イラストエッセイです。岩手はおいしいもんがい〜っぱい。                    illustration by ENGAWA 豆腐田楽(岩手県 久慈地域)  久慈市の名前を一躍有名にしたドラマ「あまちゃん」に出て来たのはまめぶだった。あれも美味しい。安部ちゃんじゃないけど、甘いんだかしょっぱ

          【食のあしあと】ある意味門外不出。岩手県沿岸地域の最強ソウルフード

          【食のあしあと】盛岡人にはわかる?!筋目としなみの黄金バランス  きりせんしょ

          食べ物は、その土地の個性や風土をよく表しています。 「食のあしあと」は、昔から食べられている食材や郷土料理、 長く人々に愛されている名物を探し出し、主観でご紹介していく イラストエッセイです。岩手はおいしいもんがい〜っぱい。                         illustration by ENGAWA  モチモチとよく伸び、サクッと歯切れが良い。  「しなみ」を言葉にすると、こんな感じだろうか。お餅やまんじゅうとは似て非なる独特の食感を表現するのは、意外とむ

          【食のあしあと】盛岡人にはわかる?!筋目としなみの黄金バランス  きりせんしょ

          春のはじめは美味なるオノマトペ    うこぎのほろほろ

          食べ物は、その土地の個性や風土をよく表しています。 「食のあしあと」は、昔から食べられている食材や郷土料理、 長く人々に愛されている名物を探し出し、主観でご紹介していく イラストエッセイです。岩手はおいしいもんがい〜っぱい。                         illustration by ENGAWA  マンサクの黄色から桜のピンク色へ、一気呵成に風景が七変化していく岩手の春。待ちに待った季節の到来と同じくらい、盛岡の人が楽しみにしているこの時期ならではの食

          春のはじめは美味なるオノマトペ    うこぎのほろほろ

          大きさも柔らかさも変わらない。    口いっぱいにほうばる幸せの飴。

          大船渡市 チダエー「エイサク飴」  巨大な回転釜のなかでは、ドロドロに溶けた水飴が下からの火に炙られてマグマのように泡立っています。まだ見たことはないけれど、地獄の釜というのはおそらくこんな感じじゃないかしら。まんま灼熱地獄なその鍋の前に立つ、白衣姿の千田昭夫社長。おもむろに一升瓶のお醤油をドボドボと投入し、あろうことか勢いよく泡立つ水飴のなかに指を突っ込みました! 地獄の釜ではありません。飴です。 「飴のかたさは手で触って確かめるんだけど、熱い飴が手とか顔とかにはねる

          大きさも柔らかさも変わらない。    口いっぱいにほうばる幸せの飴。

          ベテラン菓子職人がつくりだす、    繊細で愛らしい冬の使者

          北上市 いなば菓子舗「白鳥クッキー」  店主の稲葉重利さんはアイデアマン。20歳で今の場所に自分の店を構えて以来60年あまり、いろいろな菓子づくりに挑戦してきました。 当時の江釣子村(現北上市)から特産品を開発してほしいと依頼された時につくったのは、豊富な湧水を利用して養殖が行われていたアメリカナマズの焼き菓子。古墳群にちなみ埴輪まんじゅうをつくったこともあるそうで、ユニークさでも群を抜いていたのだろうと想像できます。 「なんでも新しいことに挑戦したい性分だし、見たもの

          ベテラン菓子職人がつくりだす、    繊細で愛らしい冬の使者

          「お前はそれで満足するな」 祖母の教えのカリカリ、サクサクな味わい

          宮古市田老 田中菓子舗「田老かりんとう」  かつてはマグロ船の漁師がよく買い求めていったという、うずまきかりんとう。いまと比べてだいぶ厚くて硬かったため日持ちがし、三陸や北海道では航海中の常備食として重宝されていたといいます。それを変えたのが「田老かりんとう」です。今から55年ほど前、現店主・田中和七さんの祖母のソノさんが「子供やお年寄りでも食べやすく」と、薄くてソフトな食感のかりんとうを考案しました。  つくる上で重要なのが「トンネル」と呼ばれる木の道具で、海苔巻きのよ

          「お前はそれで満足するな」 祖母の教えのカリカリ、サクサクな味わい