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【世界杯紀行】中田英寿が引退し、ジダンが頭突きし、イタリアが優勝したけれども、何も変わらなかった<2006年@ドイツ>

Facebookでの過去の思い出/●●●●さん ― Facebookでシェアした年前の投稿を振り返ってみよう。

Facebookを開くと、こういう表示をよく目にする。先月から今月にかけては、過去のワールドカップ取材の画像が、たびたび登場した。4年前のロシア大会、8年前のブラジル大会、12年前の南アフリカ大会──。16年前のドイツ大会は、まだFacebookもスマートフォンもなかった。

 今年は4年に一度のワールドカップイヤー。けれども4年前や8年前と比べると、どうにも盛り上がりに欠けているように感じられるのは、決して私だけではないだろう。モリヤスさんのせい? いやいや。ゼロではないとは思うが、一番の原因は「ルーティーンの問題」なんだと思う。

 第1回ワールドカップが開催されたのは、1930年のウルグアイ。この時は7月13日から30日にかけて行われた。続く1934年のイタリア大会は、5月27日から6月10日まで。その後もずっと、第21回のロシア大会に至るまで、ワールドカップは5月下旬から7月までの間で開催されてきた。

 ワールドカップといえば「夏」のイメージが強いが、南アフリカやブラジルでは「冬」の大会であった。「ルーティーンの問題」というのは、単に季節感の話ではない。11月21日から12月18日までという、カタール大会の開催時期が、本来の盛り上げ感を阻害しているのではないか──。そう、私は感じている。

 われわれサッカーファンは、ワールドカップが開催される4年周期で生きている、といっても過言ではない。そしてわが国におけるワールドカップイヤーは、元日の天皇杯決勝を起点としてシーズン開幕でブーストが入り、6月の本番に向かって気分を高めていく。そんな、これまで慣れ親しんできたルーティーンが、FIFAとカタールの都合によって、見事に崩されてしまったのである。

 せっかくのワールドカップイヤー。業界で禄を食むひとりとして、これから11月に向けて多少なりとも、その機運を高めていきたい。そんなわけで過去のワールドカップの旅を、このOWL magazineにて大会ごとに紹介することを思い立った。「旅とフットボール」という意味でも、ワールドカップは究極的。今回は2006年のドイツ大会について、写真とともに振り返ってみることにしたい。

 この大会のディフェンディングチャンピオンはブラジルだった。2002年大会の決勝、横浜でドイツを下しているだけに、その立ち居振る舞いは余裕そのもの。ちなみに、この大会でのセレソンの10番はロナウジーニョ、前回大会得点王のロナウドも健在だった。(6月8日@ミュンヘン)

 ミュンヘンでのオープニングマッチはドイツvsコスタリカ。結果は、4−2という派手なスコアでドイツが勝利した。前回大会のドイツは準優勝だったが、2年後のユーロ2004ではグループステージ敗退に終わっていたこともあり、ホスト国の人々は想像以上の重圧を感じていた。試合後の中心街では、好試合を演じた両サポーターが大いに盛り上がっていた。(6月9日@ミュンヘン)

 私にとっては、3回目のワールドカップ。とはいえ、前回大会は地元開催だったし、前々回のフランス大会はアクレディテーションカード(記者証)を持たない「旅人」状態だった。初めて海外でアクレディを得て、長期間にわたって大会を取材するのは、実はこの時が初めて。当時40歳の私にとって、この大会は人生のターニングポイントとなるはずだった。(6月10日@フランクフルト)

 日本の初戦の相手はオーストラリア。現在はアジアにおける日本のライバルだが、この大会まではOFCの所属であり、ウルグアイとの大陸間プレーオフを制してドイツにたどり着いた。日本は前半に中村俊輔のゴールで先制するも、終了間際の3ゴールでオーストラリアが勝利。2得点を挙げた、ティム・ケーヒルの恐怖を日本が払拭するのは11年後のことである。(6月12日@カイザースラウテルン)

 その後、日本はニュルンベルクのクロアチア戦で0−0、さらにドルトムントでのブラジル戦に1−4(玉田圭司が一矢報いるゴールを挙げた)。0勝1分け2敗のグループ最下位で大会を去ることになった。このブラジル戦から11日後、中田英寿が自身のHPにて現役引退を発表。(6月22日@ドルトムント)

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