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阿部和重「Pistils」を読んで

ハーブときのこ類を主に使う草花の秘術を伝承する菖蒲一族の物語。
その技はハーブ等を使った秘薬と話術で人身を操作し意のままに操るというもの。
口伝のみで伝えられ、1200年の昔から続いている。。。

物語は神町に住む書店経営、石川氏のヒーリングを一族の四姉妹のうちの次女、菖蒲あおばが行うという形で物語が進んでいく。ヒーリングセラピーの中であおばの口から菖蒲一族の歴史と秘密が語られていく。

草花の秘術は菖蒲一族の男子に一子相伝で壮絶な精神修養の元、伝えられてきた。祖父である瑞木、父、水樹。しかし、水樹の子は3度とも女が生まれる。(菖蒲家伝承者は草花の秘術を使って、伝承者の母として相応しい相手を口説き落とす。)水樹が4度目となる相手は草花の秘術が一切効かない体質を持つ吾川捷子だった。
菖蒲一族の遺伝子はそんな体質を持つ吾川捷子に何とか次なる子をと求めるが、水樹はなかなか相手にされない。しかし、虐待を受け死んだ親友の復讐を果たすため吾川捷子は草花の秘術を必要とし、水樹の求愛を一度だけ受け入れることにする。

そうして生まれた第四子もまたも、女であったが、代々のアヤメミズキと同じ誕生日に生まれ、母親の体質を考慮し、四女を継承者とする。アヤメミズキの名を受け継ぐため、みずきと名付けられた。

幼い女の子と言えど、9歳から修行が始まり10歳から秘薬を使った修行が始まる。
魔法使いとなるための修行は半端ではない。恐怖のどん底に何度も落とし、精神破壊の苦行の中でも冷静に自己を保つようにするためだ。そのようにして、どんな状況でも冷静に草花やきのこの成分に自分自身がやられないような修行の果て、アヤメミズキ達は草花の香り成分と話術による人身操作術を納めるのであるが、4女みずきは秘薬の香りと一節歌を歌うだけで、周りの人間を意のままに操るという、今までにない能力を覚醒させる。

「What the world needs now is love」のサビを歌うだけで。

菖蒲一族の秘術は海外のエージェント組織にも知られるところになっていた。戦後祖父瑞木はGHQによる麦角アルカロイドによる大規模人身操作実験に協力したり、父水樹時代に菖蒲家にCIAが訪ねてきたりするわけだが、アメリカの地ではサイキック能力の研究が進み、「弾丸の力は力のヒエラルキーの中でも最も弱く、弾丸の力より強いのは意思の力であり、さらにそれより強いのは精神(スピリット)の力であり、そして、最強の力は愛である。」と解き明かされている。

菖蒲みずきは、こうして、「弾丸の力より強い」とされる力のうちで「最強のもの」たる「愛の力」を手にし青春時代を過ごしていく。

と、あらすじをどどどと書きましたが、とても面白い物語。山形県の神町は作者阿部和重の故郷で他の作品でも何度も舞台になっています。この「Pistles」は神町シリーズ第二部となっていて、第一部は「シンセミア」そして、第三部は一昨年発刊された「Orga(ni)sm」となっています。「Orga(ni)sm」ではCIAvs菖蒲みずきの「愛の力」となっていき、元大統領のオバマ氏も登場となります。(作中では大統領として)

この「Pistles」、「1Q84」「鳥類学者のファンタジア」とともに昨年中に記事にしたかったのですが、漸く記事に出来ました。

最後に「What the world needs is love」youtubeリンクです。

皆々さまが良き本、必要とする本と出会えますよう!




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