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太宰治『斜陽』

『斜陽』は戦後のとある貴族の一家が没落して行く様を描いた小説です。

主人公はかず子という女性で、父親は既に鬼籍に入り、弟直治は戦争が終わっても音信普通状態になっていて、母親と二人で暮らしています。

母子を父の弟である叔父が面倒見てくれていましたが、戦争の煽りを受けて不況となっており、母子は持ち家や女中を手放して、田舎のこじんまりとした家に移ることになります。

それまで自分たちの力で暮らして来たことはなかったのに、かず子は自分で畑をしたり風呂を焚いたりして暮らすことになるのです。

「本物の貴族」として生きていたお母様は、結核にかかり、次第に体調を崩すようになります。

そんな中、音信普通であった弟直治が帰宅しますが、直治はアヘン中毒者になってしまっていました。

お母様は貴族の面影を色濃く残したまま結核で亡くなり、弟直治は生きて行くために庶民になろうとしてもなれず、かと言って一度捨てた貴族らしさも取り戻すことはできず、自死を選択することになります。

一方でかず子は、彼女なりの「革命」を生きる選択をするのです。

男の太宰が書いたと思われないくらい、かず子の心理描写が女として自然に感じられ、大変驚きました。

時代の過渡期には、古い時代のままを生きるか、新しい時代の変化を自分自身の身にも受け入れるのか、選択が迫られるのですね。

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