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あばらぐらむ

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読んだ本の感想をかきます。
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#読書

ゼツメツしたくない。


本を読んで泣いたのは久々だ。しかも、電車の中だった。目の前に座るお姉さんのの輪郭が、涙のせいでほどけていく。見られたくないなあ。変な奴だと思われたくないなぁ。周りにばれないように、時期は少し早い気もするけれど花粉症のふりをしてティッシュで鼻をくるんだ。

悲しくて、悔しくて、辛い。登場人物たちの寂しさと、彼らの周りの人たちのことを思うと、涙が止まらなかった。決して明るい話ではない。だが、真っ暗闇

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踊らされず、踊れ。

本を閉じて、短く息を吐いた。体から出てきた二酸化炭素には、抱えてきた苦しみが少しだけ混じっている。読み終えるまでずっと張りつめていた気持ちが少しだけ緩んだ気がした。

自意識過剰という言葉が服を着ている。『舞台』の主人公・葉太はそんな奴だ。周りの目なんか気にしたことがない、何でもかんでもソツなくこなしてきた。サラリと器用に生きていく。そんな風に見せておいて、ソツなく見せるための努力は不断だ。周りに

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読書感想文①『ナイフ』

アルバイト先の大掃除中、偶然見つけた本。処分されるから、ともらってきた重松清さんの『ナイフ』。

心を常にナイフの先端でぐりぐりと抉られる。読んでいる最中は生きた心地がしなかったけど、ページをめくる手は止まらなかった。

用事がある場所へと向かう電車で読み終わらなかったので、最後は結局駅のベンチで見届けた。

登場人物は、小学生、中学生、働く大人たち。ただ、 全員に共通していたのは何かと闘っている

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『きりこについて』について話そう

会社訪問がえりの長い電車の中での暇つぶしに。と、 電車の中で読み切れそうな薄い文庫本を手に取ったのがきっかけ。

不自由だと気が付いた瞬間に、私たちは自由になれる。そんな風な気持ちになることのできる物語でした。

まず、目につくのは主人公きりこが「ぶす」だということ。しかも、このぶすという言葉は全編を通して太字で書かれ続けます。

全編を通してきりこは賢く強い女性であり続けますが、私が好きなのはき

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