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『おいしいごはんが食べられますように』(高瀬隼子 著)

【内容】
職場でそこそこ上手くやっている二谷と、皆が守りたくなる存在の料理上手な芦川、仕事が出来て頑張り屋の押尾。
そんな面々の集うオフィスに、芦川は手作りのお菓子を配り、それに喜びの声を上げる同僚たち。
そんな市井に暮らす普通の人々のほのぼのとしたストーリー…
のような設定から始まり、心の奥からはドロドロした感情が止まらず、芦川の手作りのお菓子を握り潰しゴミ箱に突っ込んだり、捨てられたお菓子を芦川の机に置いたりして、オフィスは戦々恐々とした雰囲気へ変わってしまう。

第167回芥川賞受賞作。


【感想】
職場恋愛を絡めた軽い読み物としてのお料理エンタメ小説にもなりそうな設定…
テレビ東京の深夜枠でやりそうなドラマですが、そんなほのぼのドラマとは程遠い陰々滅々とした人間の内実が描かれていました。
職場恋愛の彼氏の家に泊まりに行った芦川が作る健康的なご飯に、表面上は喜んでいる風を装う彼氏は、実は自己否定された気がして悶々とするとか…
更に、芦川が職場みんなのために作って来た手作りお菓子を、彼氏は人知れず握りつぶしゴミ箱に捨てるとか…

人間の生々しい部分を描かれると、まあわかっちゃいるけど、そんなにはっきり描かなくてもいいじゃないか。あんまり見なかったことにしてきたんだから、なんてことを思いながら読んでいました。
そこら辺の曰く言い難い感情や在り方を描くという、居心地を悪くするエンタメみたいな分野ものがあるなあと思いました。
この作品のようにより日常的であればある程、その落差でより居心地が悪くなるという楽しみ方(?)が出来ました。

また、タイトルの付け方が読み始める前と後で、ここまで印象が違う後味の悪い印象に変わるというのも、後味が悪く最高(?)だなあと思いました。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000363638

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