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『三体 Ⅲ 死神永生 上・下』(劉慈欣 著)

※ネタバレします。

【内容】
ベストセラー『三体』の最終巻。

【感想】
最後はこんなところまで、連れてこられたと言った印象でした。
世界全体が二次元世界に飲み込まれ、そこから世界が回復(?)した何百万年後の世界に、コールドスリーブから目覚めた主人公たちが、新天地で新しい生活を始めるという終わり方でしたが…
SFなのに温もりのある読後感だったりしました。


あと、冒頭で要領良く、前2巻の話を要領良くまとめられていて、なるほどそういう話だったのかと思いながら読んだりしました。


正直、情報量の多さと時間軸の長さに、脳みその処理が追い付かないといった感じでした。


読み終わった後で、この物語の内容を思い返してみると、お国柄とかも滲み出ているような気がしました。
そんなに沢山のSF作品に触れてきたわけではないのですが、アメリカやヨーロッパ文化圏の作家の書くものは、どこかキリスト教的な世界観が反映されているような気がしますが…
劉慈欣の場合は、文化大革命から始まるというだけではなく、人間の捉え方や、時間の切り取り方など、そうしたものとは違った切り取り方をしているような気がします。

そういえば、アニメ監督の押井守が言っていたと思うのですが…
SF作品は未来を描くものではなく、現代を描くための枠組みである。
みたいな話をしていて、学生時代にその言説を読んだ時には、確かにという思いと共に多少の反発を感じたりもして…
優れた作品はそうした時代をも乗り越えて、未来の問題がまで描いてしまうという気もするのですが…
それはそれとして、この小説は未来を描きつつも、現代中国を描いているのではないかという気もしてきました。
極小のスパイ装置てある智子(ソフォン)は、超監視社会である現在中国の現状を象徴的に表しているのではない。
そう考えると、劣悪な環境下で生き残り、残忍な侵略者として地球を支配下に置こうとする三体人は…
そうやって考えていくと、三体人の見え方がある種クリアになっていく部分もあるような気がしてきました。

今の中国であれだけお金を稼ぎ、世界的に有名になっている作者のことを考えると、世間的にはそうした見方が広まることは命に関わることなのかも知れないので、あまりそこら辺のことは突っ込んで書かないようにしようかと…

https://www.hayakawa-online.co.jp/smartphone/detail.html?id=000000014829

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