![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/125552616/rectangle_large_type_2_b6ef415293ec06416fae2a76e67dcd4e.jpeg?width=800)
テニス上達メモ050.自分のプレーを、ビデオで撮って見たくないと思う心理
前回の「テニス上達メモ049.スイングスピードは、意識して上げる必要はない。それでもボールスピードが楽に上がる、実用性の高い2つの条件」では、自分の体なのに、案外思いどおりには動かせない話を、百獣の王こと武井壮氏の実験について触れつつご紹介しました。
「感覚の通じている自分の腕ですら、イメージどおりに(水平に)コントロールできない」「その先にあるラケットなら言わずもがな!」という話でした。
こう言っても「そんなことはない。自分は思いどおりに腕(体)を動かしている!」などと、疑問符をつける人もいるでしょう。
しかしそういう人に限って、ビデオで撮影した自分のプレーを見てみると 、「まさかこれが自分!?」みたいな驚きを隠せません(笑)。
なかには頑なに、自分のプレーを見ようとしない(見たくない)人も少なくないけれど、それは現実に対するイメージのズレを、「認めたくない心理の表れ」だともとれるのです。
つまりくだんのコラムで指摘したとおり、ヒザの高さでスイングしていると思っているけれど、実際のラケットは腰の高さを通過している、などという空間認知のズレがある。
そのチグハグさが白日のもとにさらされるのを、目の当たりにするのが怖いのです。
あるいはフォロースルーで肩の高さまでラケットを振り抜けていると思っていたけれど、ビデオを見てみると、インパクトしたらすぐにスイングを止めていた、とか。
ここではもちろん、「スイングを止める振り方はよくない」などという、フォームの問題を指摘しているわけではありません。
自分の体を、「こういうふうに動かしているつもりなのに、そうなっていない」という、武井壮氏が紹介した「腕を水平に上げているつもりなのに、そうなっていない」現実に対するイメージのズレを、俎上に乗せています。
ちなみにフォロースルーなんて、すぐにはスイングを止められないから現れる「惰性」でしかありません。
つまり、振り切ろうとするものではなく、スイングの勢いに応じて「振り切れてしまう」のです。
極論すれば(現実的ではないけれど)、なければないで、構わない。
昔は(今も?)、「打球方向に振り抜けばコントロールできる!」などと、まことしやかにささやかれもしたけれど、そんなはずがありませんよね。
インパクトしたあとにどんなフォロースルーを付け足したところで、飛んでいくボールには(ラケットに芭蕉扇のような機能でもついていない限り……)、一切の影響力を与えられないのですから。
むしろ対応するプレーヤー側の観点から言えば、フォロースルーなんて「ない」ほうが、対戦相手から打ち返されてくるボールに素早く備えられます。
なのに「もっと大きく振り抜きましょう!」などというフォーム指導でフォロースルーを意識させるから、取ってつけたような「わざとらしさ」が見て取れる。
だからといって無論、フォロースルーをなくすフォームの矯正を、促したいわけではないので誤解されませんように。
フォームについて私なりに説明を加えるならば、「一切意識するなかれ!」の一言だけで十分でしょう。
イメージの話に戻ります。
イメージは、プレーするうえでの「土台」だとも、くだんのコラムでお伝えしました。
そして「土台」がズレているのだとしたら、その上にどんなプレーを乗せたところで、やっばり上手くはいかないのですね。
スイング軌道のイメージがズレていると、いくらタイミングよくボールをとらえようとしたところで、ショットが成功しないのは当然です。
武井壮氏の実験では、腕を水平に上げる単純な動作でさえ正確にできない事実が明るみになりました。
同様にヒザの高さのつもりで振っているのに、ラケットが腰の高さを通過していたら(スイング軌道に関する空間認知のズレ)、ヒザの高さのボールはフレームショットになってしまう。
それはそうです。
ブラインドタッチで、いくらタイミングよくタイプしたとしても、JのキーポジションをKだと思い込むズレたイメージがあったならば、ディスプレーにはどうしたって、打ち損じた結果が表示されてしまうのですから。
ですから認知の歪みであるところの、現実に対するイメージのズレを書き換えるには自分のプレーを、ビデオなどを使って見てみればよいのです。
だけどそういう人に限って頑なに「見ない!」などといって拒むのは、現実に対するイメージのズレを「認めたくない心理の表れ」。
ダイエット中に、体重計に乗れない。
金欠中に、家計簿をつけられない。
そんな心理と似ているのかもしれません。
現実を白日の元にさらして直視するのが、怖いのです。
ですがそうして見て見ぬふりをするから、現実が改まりません。
またテニスではスイング軌道に関する空間認知のズレのほかにも、相手ショットの深さに関するイメージのズレも、多くのプレーヤーが抱えている問題です。
そんな場合も、『新・ボールの見方~怖れのメガネを外して、ありのままに見る技術~』で紹介されている、ボールを打たずに「見送る」驚異の体験練習が有効です。
「ボールを打たないなんて、練習の意味がない!」などと、あなどることなかれ。
「打とうとする意識」があるからこそ、「上手く打たなきゃ!」「打ち損じるかもしれない……」と焦るフィルターのかかった怖れのメガネでボールを見てしまい、客観視できなくなるのです。
怖れのメガネを外せば、ボールがハッキリ見え出して、なおかつ深さに関するイメージのズレを現状把握するのにも役立てられるのですから驚くばかり。
試さない手はありません。
また把握したイメージが、いつ、どこで、だれとプレーしたときにもズレないように、基準を定めてショットの安定化を図るのが『テニス・ベースメソッド~あなたのテニスがドラマチックに改善するたったひとつの方法~』です。
イメージは、基準がないと、たとえば対戦相手の体格のような「どうでもいい」とすら思える些細な印象からも、すぐに揺らいでしまいます。
小学生を相手にストロークで打ち合う場合、つい、その小柄な体格の印象に引きずられて、ベースライン内に入り込みたくは、ならないでしょうか?
だけど本来、飛んでくるボールの「深さ」は、相手プレーヤーの「体格」と、何の関係もありませんよね。
小学生の打つボールだって、ベースライン間際まで飛んでくるショットもある。
そんなとき、ベースライン内にポジショニングしていては、ストロークで打ち返そうとすると、とたんに対応に苦慮するのです。
反対に、大柄なプロが打つボールだって、サービスライン付近に浅くコントロールされるショットもある。
ですから「思い込み」「決めつけ」で判斷せず、やはり「現実に即したプレー」でなければならないのです。
「そんなの分かってるよ!」
確かに、当たり前のような話なのですけれども、バイアスがかかると、人はどうしても「ダマされてしまう」ものなのです。
「自分にはバイアスなんてない!」という人は、すでにバイアスにかかっているのですから。
それが証拠にこの話を聞いて、小学生の打つボールだってベースライン間際まで飛んでくる場合もあると、頭では理解しても、イメージが揺らぐと体はつい、ベースライン内にポジションを、衝動的に「上げてしまいたくなる」のです。
私たちは、イメージにはあらがえません。
山道でとぐろを巻いたロープを足元に見つけると、「思わず」飛びよける。
それはもう、衝動的な反応で、そうせずにはいられません。
現実(ロープ)に対するイメージのズレ(ヘビ)があると、体はあらがえずどうしても、ふさわしくない動き方をしてしまうのです。
テニスでは対戦相手の体格のほかにも、インドアかアウトドアかのコートの違い、ハードかクレーか砂入り人工芝(オムニ)かカーペットかのサーフェスの違い、風の有無や向き、1本前のショットの印象によってすら、イメージはグラグラ揺らぎます。
なので、「思い込み」や「決めつけ」を突破し、ヘビがとぐろを巻いたロープだった現実を直視して、いざ見破りましょう!
イメージが現実どおりに改まれば、状況にふさわしい動き方ができます。
それはそうです。
ロープだと気づけば、わざわざ飛びよける徒労をせずに済むのですから。
何なら手に取って、「落とし物でした」なんて届ける親切な対応も、できるかもしれませんね。
なので親切にできるかどうかなどの日常的な振る舞いも、「性格」というよりも「イメージ」が司ります。
イメージが、私たちの言動を支配しています。
苦手な人がいる飲み会に参加したくないのは、苦手なイメージがためらわせるのだし、テーマパークでテンションが上がるのは、楽しそうなイメージがあるからではないでしょうか?
さて、頑なに自分のプレーをビデオで見たくないと拒むのは、現実に対するイメージのズレがある現状を「認めたくない心理の表れ」だと、先述しました。
でもよく言えば、自分のプレーをビデオで見られない人は、自分の体を思いどおりに動かせていない現実に対するイメージのズレに、「気づいている」のです。
そういう人はイメージが改まれば、状況にふさわしい動き方ができるようになります。
スイング軌道も、ヒザの高さのボールに対してはヒザの高さに、腰の高さのボールに対しては腰の高さに、ピッタリ合わせられます。
現実問題として、ヒザから腰まで、そんなに大きくズレることはないでしょうけれども、ビデオを見て「イメージとは違う自分のスイング」に違和感を覚えるならば、ところどころで微妙にズレている動きが複合して、全体として「ヘンな打ち方」に見えてしまうのですよ。
イメージが現実どおりに改まれば、状況にふさわしい動き方ができるようになる。
これが、スイング軌道やポジション取りを含む総合的な動き方の「土台」になると、ご説明しました。
そしてイメージの「土台」が安定してこそ、その上に、「盤石なプレー」が築かれるのです。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
https://note.com/tenniszero
無料メール相談、お問合せ、ご意見、お悩み等は
こちらまで
tenniszero.note@gmail.com
スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero