テニス上達メモ049.スイングスピードは、意識して上げる必要はない。それでもボールスピードが楽に上がる、実用性の高い2つの条件
「スイングスピードを上げれば、ボールスピードも上がる!」
「だから、スイングスピードをもっと上げたい!」
そう考えるプレーヤーは、少なくないでしょう。
結論から言うと、スイングスピードを頑張って上げようとする必要はありません。
本記事では、スイングスピードを上げようとしなくても、ボールスピードがアップするメカニズムについて、詳しくご紹介していきます。
なぜ、スイングスピードを上げようとしなくていいのか?(上げようとしてはマズイのか?)
まず上げようと「意識」すると、同時には、ボールが「見えなくなる」からですね。
認識に関する、「一時にひとつ」の原理原則について、まずはおさらいしておきましょう。
私たちは見ているとき、聞こえないし、聞いているとき、嗅げないし、嗅いでいるとき、味わえないし、味わうとき、感じないし、感じるとき、意識できません。
ゆえに(スイングスピードを上げようと)意識しているとき、(ボールが)見えなくなるのです。
分かりやすいのは今、これを読んでいる最中にも「空調の音」が鳴っていたかもしれないけれど、読んでいる最中だったから、聞こえなかったはず。
だけどこうして指摘されると、聞こえてきましたね。
空調の音を聞きながら、今度はこれを読み進められなくなるはずです。
認識に関する「一時にひとつ」の原理原則が働くから、プレー中にスイングスピードを上げようと「意識」する必要はない(上げようとしてはマズイ)のです。
テニスを上手くプレーするには、スイングスピードを上げることよりも、ボールに対する視覚的集中力を上げるほうが、よっぽど優先されるのですから。
※ですから常識的なテニス指導で行なわれる「フォーム」も意識するとマズイのは、言わずもがなです。
また、たとえスイングスピードを上げられたとしても、それでショットのクオリティが著しく向上するとは、考えにくいでしょう。
むしろいたずらにスイングスピードを上げたところで、いい結果にはつながらない。
これはきっと、想像がつきますよね。
例を探せば、枚挙にいとまがありません。
たとえば、やんちゃな男子。
メチャ振りするものの、ガシャ当たりが目に浮かびます。
ブンブン振り回す割に貧打。
しかも、コントロールもままなりません。
ボールスピードを上げたくて、スイングスピードを上げるのだけれど、結果的にボールスピードはガクンと下がっているのです。
このショットの劣化は、認識に関する「一時にひとつ」の原理原則によるものです。
では、こう思われるかもしれません。
「自分はスイングスピードが遅いから、ボールスピードも上げられない……」
あきらめるしか、ないのでしょうか?
いえ、悲観する心配はないので、ご安心ください。
たとえばテニス上級者は、ゆったりと振っているように見えて、飛び出すボールのスピードはそれ以上に速いと、意外に感じたご経験はないでしょうか。
これは、力任せにブンブン振り回す「やんちゃ男子(←あくまでも主観的な例)」と、一体何が違うのでしょうか?
ひとつは、スイートエリアの中心でボールを捉える空間認知の精度。
そしてもうひとつは、ボールを「ここだ!」と感じる瞬間に捉える打球タイミングの精度(「ここだ!」は、打点の位置ではなく、打時の時間)。
この両方が兼ね備わったとき、「ジャストミート!」となるのです。
両精度の高さを兼備。
これをコンスタントに再現し得るのが、先のゆったり振る割に、飛び出すボールはそれ以上に速いテニス上級者です。
そうなるためには、どうすればいい?
前提として、空間認知が正確である土台作りこそ、ジャストミート率を高めるための重要な取り組みとなります。
空間認知というと、前方に展開するテニスコートのラインやネットが、どこにどんなふうにあるかを、目で見なくても、イメージとして把握できる能力と、いつもお伝えしています。
一方で、今回取り上げているボールをスイートエリアの中心で捉えられるか否かも、空間認知による。
具体的には、ラケットがどこにあるかを、目で見なくても把握できる能力です。
当然ですが、テニスを上手くプレーするには、プレー中は、自分のラケットは見ませんね。
ラケットではなく、プレー中は、ボールを見なければなりません。
なので、ラケットを引いたり、振り出したり、振り抜いたりしている最中は(つまりインプレー中はずっと)、ラケットは見えないので、どこにあるのかは、イメージとして感覚的に把握できなければならないのです。
要するに、ラケットはまったく見ずにプレーするということ。
見えないラケットをイメージで操作して、見ているボールのところへ持っていくのです。
なのでそのイメージがズレていると、スイートエリアの芯を外す。
当然です。
「ここにある」と感じているはずのラケットが、そこになかったら、正確にボールを捉えられるはずがありません。
それはそうですよね。
ヒザの高さだと思って振っているのに、実際にはそれが、太ももの高さを通過していたら、スイートエリアの中心を外してボールを打ってしまうに決まっています。
「そんなの当たり前だろ!」
「ラケットの位置ぐらいちゃんと把握しているよ!」
そのようにおっしゃる方もいるかもしれませんが、案外そうではないのです。
百獣の王として知られる武井壮氏が、テレビ番組『笑っていいとも!』でタモリさんに紹介した、両腕を水平(真横)に上げる実験を振り返ります。
※動画が見当たらなかったのですが、こちらのページに詳しく紹介されていました。
多くの人が、「そんなのできるに決まっている!」と、思い込んでいたのではないでしょうか?
ところが実際に試してみると、腕でさえ、自分のイメージどおりに動かせないのです。
水平の高さにコントロールできない。
感覚の通じている腕ですら、そうなるのですから、それより先で振り回すラケットなら、いわずもがなでしょう。
「そんなのできるに決まっている!」と、思い込んでいるだけで、イメージがズレているから、毎回間違う(芯を外す)のです。
では、ズレている空間認知を修正するには、どうすればいいでしょうか?
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