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100年先を突き抜ける経営の視点~無常:変化を受容し活かす智慧~

不滅の経営 ~300年企業に学ぶ12の智慧~(全12回) 第1回

「このままでは、会社が時代に取り残されてしまうのではないか―」
「変化が求められているのはわかるが、これまでの良さも失いたくない―」

こうした不安や迷いを抱える経営者は少なくありません。しかし、日本には300年、400年という長きにわたって事業を継続している企業が、実は数多く存在します。

彼らは、どのようにして激動の時代を生き抜いてきたのでしょうか。

創業400年を超える老舗和菓子店A社では、伝統的な和菓子の製法を守りながらも、時代とともに変化する顧客の嗜好に合わせて商品ラインナップを柔軟に進化させてきました。

「守るべきものと変えるべきものを峻別する」という経営哲学が、同社に深く根付いています。

たとえば、創業時からの代表的な和菓子は、その製法と味を頑なに守り続ける一方で、若い世代向けに斬新なフレーバーを取り入れた新商品の開発も積極的に行っています。

さらに近年では、オンラインショップの開設やSNSでの情報発信にも注力。「変化を恐れず、むしろ積極的に取り入れることで、伝統の価値を現代に届ける」という考えが、全社員に共有されています。

また、創業350年の老舗旅館B社では、バブル崩壊後の苦境期に、従来の接客サービスの在り方を大きく見直しました。

「お客様の期待は常に変化している」という認識のもと、伝統的な和のおもてなしの本質は保ちながら、現代のライフスタイルに合わせたサービスの刷新を行いました。

その結果、新たな顧客層の開拓に成功し、業績を大きく回復させています。

これらの事例から、長期存続企業に共通する7つの視点が見えてきます:

  1. 変化を脅威ではなく機会として捉える姿勢

  2. 本質的な価値と形式的な要素の明確な区別

  3. 伝統を固定的なものではなく、進化し続けるものとして理解する考え方

  4. 顧客との対話を通じた、ニーズの変化への深い洞察

  5. 全社員が変化の必要性を理解し、受け入れる組織文化の醸成

  6. 過去の成功体験に縛られない柔軟な意思決定

  7. 長期的な視点での投資判断

特筆すべきは、これらの企業が「変化」を当たり前のものとして受け入れている点です。

仏教でいう「無常」の概念、つまり「すべてのものは常に変化している」という認識が、経営の基盤に据えられているのです。

ある酒造メーカーC社の現社長は、こう語ります。「昔からのやり方を変えることは、時として社内の反発を招きます。

しかし、変化を受け入れないことこそが、最大のリスクなのです。大切なのは、何のために、何を変えるのかを明確にすること。その軸がぶれなければ、必要な変化は必ず受け入れられます」

変化の時代を生き抜く経営とは、揺るぎない軸を持ちながら、環境の変化に柔軟に適応していく営みといえるでしょう。

次回はコチラ。

不滅の経営 ~300年企業に学ぶ12の智慧~第2回:
30年かかる変革を3年で実現する極意~因果:時を味方につける智慧~


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