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映画『君たちはどう生きるか』感想。駿は1回置いといて今作のストーリーについて考えてみた!


3、4年前にタイトル元の小説を読んだことがあったので興味津々で公開2日目に観てきました!



⚠️余裕でネタバレするので見てない方は注意⚠️





いいところ!SFってだいすき!


異世界!SF!大好き!

あまり考察とかとは関係ないけれど、時空の歪みとか大好きなのですごく良かった。
お屋敷が『いろいろな世界と繋がってる』とか、ドアが沢山あって『それぞれ違う世界と繋がってる』とか、『実はあの塔は空から降ってきたの』とか(おばあちゃん迫真の「どーーん!ピカピカ!!」みたいな擬音も大好き)SF好きにはたまらないセリフが多いし、絵も綺麗でワクワクしながら見れた。
中でも大おじさんが精神と時の部屋みたいなところで積み木をしてるのとかもなんか意味深で楽しい。
キリコやヒミの圧倒的な強キャラ感もいい。当然迷い込んだ異世界!!ってだけだとかなり不安だけど知ってる大人(?)がいて案内してくれたり、それが会いたかった母親(別世界線でのだけど)だったりするから不安感少ない探索でよりエンターテインメント要素が強くなったと思う。キリコとヒミありがとう。

あとは生き物のシュールさとか擬人がちょうどよく鳥寄りで、異世界感満載で楽しめる。
キリコと過ごすシーンも、海に巨大魚がいたり、遠くの水平線に船が沢山みえるけど「あれは幻」と言われ、黒い影の死人は殺生をできなくて船を漕いで魚を買いに来る…。めちゃくちゃ良い。

ちゃんと可愛い小さいのとかもいるし種族の特徴も自ら教えてくれるし、画面が数の暴力で溢れてる時もある。
それだけで観る価値あったとおもった!




青鷺って何??


ここからはちょっと考察寄りの話。

青鷺って最初から眞人をからかうように飛んだり、屋根を歩いて騒音でイライラさせてみたり、窓から覗いてみたり、眞人の真似で「お母さん!お母さん!」と鳴いてみたり、なんかかなり嫌なやつであることは分かる。あと形態的に妖怪とか宇宙人とかその辺のなにかだろう。

眞人は初めかなり本気で青鷺を殺害しようとする(木刀、ナイフ、弓矢など武器も揃える…)が、話が進むほど青鷺のことをなんとなく許したようになっている。最後はなんと友達になっている。

キリコに「青鷺は嘘つきで嫌なんだ!」みたいなことも言うけれど、キリコは「これでも飲んで仲直りしなさい!」と軽く返す。
このシーンからしても完全に悪役という訳ではなくて、折り合いをつけて付き合うべき存在なのかなと思った。

青鷺は眞人の中の悪意の象徴だ!とまでは言わないけれど、今まで悪い人と関わってこず(学校でいじめられたが直ぐに逃げた)フラットな人間関係しか築いてこなかった眞人は、青鷺と関わることで学び、自分の中の弱い面や良くないこともだんだん受け入れられるようになったのではないかと思う。こいつよりマシみたいな理論かも。
それはそうとして青鷺も元は人間だったのかなあ。青鷺!って形態の時は超カッコよくて強そうで、でも中身はひょうきんで明け透けな感じなのに意外とミステリアスな存在だった。きになります。




冒険で眞人が学んだこと


主人公の眞人は周りが貧しい中、裕福な生活をしていることが伺える。
父親のトランクを取り囲んで勝手に開けるおばあちゃん達を眞人が廊下から見ている時に、なにかおぞましい物を見ているかのような場面になっていたり、そのおばあちゃん達が作った朝食を一緒に食べて「おいしくない!」と口にする眞人。

このシーンを見た時に、この後食物連鎖についての話来るな!と思った。

子どもって生きるとか死ぬとか殺すとか殺したもの食べてるとかよく分かってなかったりする。

ペリカン=わらわらを殺してるから悪!と思ったら、実はペリカンも魚が少ない海で飢えていて…みたいなあの辺は小さい子供にもわかり易くてよかったと思う。
さらにそこから一歩進んで、ペリカンを退治すると少数のわらわらも道連れでしんじゃう場面。それも現実的でよかった。ペリカンもわらわらも殺してるヒミは最悪なのかと言われたらちがうし、小さい子には難しいよね。

そういう難しいことが終盤になるにつれて眞人にも分かってきたから「おばあちゃんごめんね」に繋がったのかなと思う。
ヒミの家でバターと苺ジャムがたっぷりついたパンを食べて、眞人の口の周りが赤くなっていたのも血の隠喩で、生き物を殺して食べているとかそういうことが分かるようになったから、「おいしくない」と対比させて「おいしい!」と言わせたりしてたり。考えすぎか?

キリコさんと魚を解体したときも、初めは魚からオレンジ色に近い体液が出てきて(あーそこまで描かないのかな)と思ってたら、あとから血も臓器もそこそこ出てきて(おお…)と思った。

最近、動画サイトで魚の解体動画などが規制対象になるみたいな話を聞いたことがあって、そういうところを子どもの頃に全く見ないで食べ続けるのってどうなんだろうと思っていたから自分はいい表現だと思った。

あとはキリコのところでお水自分で入れたりしててよかった。お屋敷でトイレ行こうとしたらおまるあるのに…とか言われたり、水差しでお水飲んだり、さすがに甘やかしすぎの描写だと思ってた。ので、お水汲めてえらかった。

他にはペリカンが死ぬ場面もそこそこ生々しくて、お母さんだ!と思ったらドロドロ溶けたり、鍛冶屋(多分人間)がペリカンに食べられてたり、主人公も軽く食べられそうになったりで(食事に関連するものも含む)生と死は冒険で眞人が学んだことの中で大きな位置を占めるから、印象深い描写になっているのかなあと思った。




大おじさんの一生について考える



なんか凄そうな部屋で意味ありげなことしてた大おじさん。
元々本を沢山読んでたらしく頭も良さそうだけど、自分が紛れ込ませたインコの大王のせいで世界滅んじゃってるし、現世のことを「もうすぐ火の海になる。憎しみに溢れた世界。」みたいに言っていたけれど、私には大おじさんの世界もそんなに良くないように見えた。

大おじさんの世界では人と人が(鳥と鳥が?)憎しみ合うとか、戦争が始まるとかは確かに眞人の生きる世の中より無いかもしれない。
何というかあの世界は純粋な『生と死』『食』『繁殖』が優先された世界だったように思える。
作中で語られる鳥たちの一族の話は種の存続や食べる食べられるの話ばかり。
夏子は赤ちゃんがいるから食べないとか、夏子の産屋に入るのが禁忌とかも、そういうこと(繁殖優先の価値観)だったのかなって。

大おじさんは力を持つ石と契約してその世界の神みたいになった。眞人に3日おきに積み木をつめ!みたいなこと言ってたのも神ぽい。わしももう歳だ…みたいなこと言ってるのも今までがんばってきた感じがする。でもそこまでして維持するべき世界は作れてなさそう。

そもそも元いた世界でタワー建設した時も「貴重なものだから周りを囲って守ろう!」みたいな動機でたくさん人が死んでるのに進めていくのはどうなんだろう。
単純に元いた世界にどこか満足できなかったとか、本を読んで世界の罪について色々考えたりして神になってみたかったとか、石に唆されたのかなとしか思えなかった。
自分の作った世界が終わる最後までやり遂げたのはすごいと思うけど、元の世界の悪口は言えるのに自分の作った世界の良いところは何も言わないことから、そこまで作った世界に満足してないんじゃないかと思った。だから眞人も断れて良かったし(眞人は序盤口数もかなり少なくて大人の言う通りに振舞っていたのに、自分の意見を伝えて断っていたので少し驚いた。成長が見えた。)大おじさんも最後眞人とヒミに逃げ方を教えてくれてよかった。インコ大王が来た時もそこまで抵抗しなかった大おじさんの姿が切なかった。どこかで解放されたかったのかもしれない。役目を手放して楽になれたんじゃないかと思う。




夏子はなぜあの世界にいた?


大おじさんと同じで元いた世界に嫌気がさしていたからではないかと思う。(妊娠で身体と精神が不安定。眞人が自分のせいで大きな怪我をしたと気づいていた。眞人と仲良くなれない。姉への罪悪感などの理由から)

同じように父親が入って来れないのは、戦争を利用してバリバリ働いて、裕福さを誇っていたり、夏子が好きで幸せで、眞人の怪我の理由にも気づかないなど、元いた世界に馴染んでいて不満がなかったからでは無いかと思う。

夏子は別の世界の産屋で眞人に「あなたなんて大嫌い!」と言うが、眞人が嫌いというよりは眞人を通して自分の中の悪い面を見てしまうことや罪悪感に耐えられなかったのでは無いかと思った。

表情も登場場面の整った穏やかな感じから、一変して顔を歪ませた凄みのあるものになっていて余裕のなさが伺えた。

「帰りたくない」と言っていたのも、産まれてくる赤子が眞人に認められないことへの恐れや、出産が原因で眞人の精神状態がさらに悪化することも考えられるし、分からなくもない。

もしかしたら今まで使用人に助けられてきただろうし、あまり悪意のある人と出会ってこなかったから精神的に未熟なところがあるのかもしれない。

眞人は「大嫌い!」と言われて今までならすぐに逃げていただろう。そもそも「夏子という人はお父さんの好きな人だから」という理由をしきりに口にして探していたのに、逃げずに戸惑いながらも夏子お母さんと呼んで、一緒に帰ろう!と訴えていたので驚いた。何なら夏子の余裕のなさを察知して自分が守ろうと言う様な気合いさえ感じた。眞人の成長が本当にすごい。




最後に


君たちはどう生きるか?というタイトルだけどかなり難しい。

ヒミが最後に扉の前で言う「(病院が燃えて自分が死ぬ未来が見えていても)眞人の母親になれるなんて素敵じゃない!」みたいなセリフとか、眞人の「この傷が僕の悪意の印です。だから僕にはこの世界を継ぐ資格がありません」みたいなセリフが潔くてかっこよかったからそういう風な生き方はいいなと思った。

逆に大おじさんみたいな生き方は自分を貫いているけれど、葛藤や成長が見えなさすぎてあまりしたくないなと思った。


冒頭の静かな感じから後半にかけての盛り上がりがすごくて、情報量も多く本当にいろいろ謎とか疑問が浮かんでくるからまた繰り返し観てみたいな。
今回同じ種族のキャラクターが画面いっぱいにたくさん出てくる場面が多すぎて、目がいくつあっても足りなかった。そういう意味でももう一度みたい。

あとは久石譲のピアノと木村拓哉の声、大おじさんがインコ大王を待つ『天国みたい』な場所がすごくハウルの動く城みたいだった。他の作品を彷彿とさせる場面もあったり、鳥のアニメーションとか、笑えるセリフとか、いろいろやりたくてやった!みたいなシーンもあるのかな。

他の作品と比べて明らかに異彩を放っていて、賛否は分かれそうだけど、SF好きな人は絶対楽しめると思います。
ここからジブリがどうなっていくか本当に楽しみ!

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