『頭の回転の速い人とは?』体験をことばにする大切さ
突然ですが質問です。
あなたには今、何が見えていますか?
こんな質問をされて、「何を当たり前なことを聞いているのだろう、パソコンのディスプレイに決まっているじゃないか」と訝しく思う方もいるかもしれません。
また反対に、「ディスプレイの他にもマウス、マウスパッド、お茶のボトルとコップ、窓、窓の外には隣のマンション。マンションのベランダでは、洗濯物を干している。赤いTシャツに、ジーパン……。」といった具合に、一つひとつ並べていくとキリがないと、困ってしまう方もいるかもしれません。
さてこのような質問をした理由は、今回、「五感を通して感じた実体験を言葉にすることの大切さ」についてお話しさせていただきたいからです。
まず、早稲田大学社会科学部2008年度入試問題の国語で使用された茂木健一郎さんの文章の一部を元の著作から引用したいと思います。
身の回りにあふれる豊かな情報に気がつく
顕微鏡の拡大率を上げていくにつれて新たな世界がとめどなく開かれていくように、実は日常の生活の中で私たちは無限といっていい情報にさらされています。
しかし、同時に私たちはその情報を無意識に選別し、必要な情報だけを読み取り、理解しています。
リテラでは、作文指導の第一段階として、まず五感に着目します。
五感、すなわち視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚をテーマに、それらの感覚から得た情報をことばで表現するのです。
自らの実体験をことばにする(概念化する)ということは、「視覚的アウェアネス」を「要約」することです。
いいかえれば、自分だけが感じとったこの世界の有り様を、よりはっきりとした輪郭で囲んで、確かにそこにあったと実感できるようにすることです。そして、それを他人にもわかるような形に縁取ることです。
私たちの生きるこの時間と空間に、いかに豊かな情報があふれているかということに気がつくこと。
それが特に低学年のうちに「五感を使った観察作文」をする目的です。
言葉にする=情報を道具にする
また、「見る」ということは、「わかること」そして「思考すること」につながっています。
つまり、体験から得た情報をことばにするということは、その情報を概念化し、操作可能なものにするということです。
その時、ことばは、自らの思考の道具になり、同時に他人とのコミュニケーションの道具になります。
言語技術のレッスンにおいて、その基礎として五感に着目する理由は、「ことばを使う主体は自分であるということ」、「ことばが自分の使う道具であること」を意識することなのです。
ことばを手に馴染んだ道具のようにあつかえるようになるために、私たちの教室ではそうした「ことばが生まれる瞬間」が重要であると考えています。
豊かな第一次情報が、抽象的・形式的思考を支える基礎になる
さらに、五感を通して得た具体的・基本的な情報=第一次情報をことばにすることは、やがて子どもたちが成長し、より抽象的な言葉の運用段階に達した時、その抽象化を支える基礎となります。
豊かな一次情報を得ること
その情報を整理・カテゴライズ・抽象化し、操作しやすい形にすること
その情報を適切に操作すること
こうした一連のアクションがスムースにできる人がいわゆる「頭の回転の早い人」なのです。
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