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うちの子は、どうして字が上手に書けないの?

どうして、上手に字が書けないんだろう?
自分、あるいは他の人の字を見て、こんな疑問を抱いたことはありませんか。
今回は、子どもたちが感じる「字を書くことの難しさ」や、その原因についてご紹介いたします。

今回、記事を書いたのは、リテラ言語技術教室の講師、黒木里美です。

字を書く機会が多い子どもたちだからこそしからないで

字のことを言いすぎると学習への意欲がなくなってしまいます

仕事も日常生活でも、文字を書くのはパソコンやスマートフォンを使うことが多くなり、大人になると手書きをする機会はぐんと減っていきます。しかし、子どもたちは違います。学校でもタブレットやパソコンを使った取り組みが増えていますが、まだまだノートや作文用紙に文字を書く機会はたくさんあります。そのような環境にいる子どもたちが、「字が汚い」「字をきれいに書きなさい」と、字を書くたびに注意をされてしまっては、自信を失い、学習そのものへの意欲がそがれてしまいます。

文字を書くのが苦手な子の保護者の気持ち

子どもの字がきれいにならないのはなぜか、多くの保護者が悩んでいます

保護者からも、「字が汚いのはどうしたら治りますか?」「字をきれいに書くように注意してほしい」など字に関する質問や要望が多々あります。

その背景には、学校や塾の先生から注意されたという話をよく聞きます。


・担任の先生が字の形に厳しくて、練習ノートが赤ペンで真っ赤。毎日書き直しが大変で、子ども宿題を嫌がっている。

・ノートに字が汚いということは、やる気がないからだと注意されてしまった。

学校や塾の先生と、お子さんとの間で板挟みとなって悩む保護者の辛い気持ちが伝わってきます。

また、保護自身も「字が汚いのは、本人のやる気がないからではないか」、「真面目に取り組んでから字が汚いんだ」という考えをお持ちの場合もあります。

書くことが苦手な子の字の特徴


・マスからはみ出している
・上下左右とバランスがとれていない
・トメ、ハネがはっきりとしていない
・線が曲がっている
・文章にしたとき、字の大きさがバラバラになっている
・文章にしたとき、字によって筆圧が濃かったり薄かったりする
・句読点を忘れる、改行で段落を下げるのを忘れる
・「ぬ」と「ね」のように似た字を書き間違える
・漢字を書く際に線が多かったり少なかったりする

字を書くのは、実はとても大変!

ここで、子どもたちが、字を書くところを想像してみましょう。

いくつものタスクを同時にこなす文字の書き取り練習


座ってる机の上には、マス目に十字の点線が漢字の練習帳が開いています。
利き手で、正しく鉛筆を握ります。
鉛筆がうまく運べるよう背筋を伸ばした良い姿勢をつくります。
利き手と反対の手は、ノートに添えます。
お手本の字を見ながら、書き順を通りに書き始めます。
鉛筆の動きを目で追いながら、線の長さと角度、トメ・ハネ・ハライに気を付けます。
字は大きすぎても小さすぎてもいけません。
バランスの良い字を、マス目に収まるように気を配ります。

いかがでしたか?
ノートに字の練習をするだけでも、注意しなければならないことがたくさんあることに気づいていただけたでしょうか。
さらに学校の授業では、先生の話を聞きながら、黒板に次々に書かれる文字をノートに書き写していくことになるので、注意すべき点がいくつも増えていきます。
こうした複数のことを同時に行うには、「マルチタスク能力」という力が必要となります。

きれいな字を書くために必要なマルチタスク能力

マルチタスクとは、複数の作業を同時並行、短期間で切り替えながら同時進行で行う能力です

このように、同時に複数のことをこなしていくことを「マルチタスク」といい、マルチタスクを行うための力を「マルチタスク能力」を言います。

このマルチタスク能力を発揮するには、自己コントロールをするメタ認知と、集中力が必要になります。
この二つの力は成長とともに育っていきます。

年齢とともに育っていく「メタ認知」と「集中力」

【メタ認知】
自分をコントロールする力「メタ認知」は、小学校高学年から高校生ぐらいまで徐々に伸びていく力です。

もう一人の自分が、一つ高い視点から自分自身を観察(モニタリング)し、自分の思考や行動を修正(コントロール)するちからのことです。

メタ認知が身につくことで、他者と自分の存在の違いを理解することができるようになります。
まだメタ認知が育っていない年頃のお子さんだと、自分と他者の違いを充分に意識することができず、自分が書いた字に対して
「自分が読めるんだから、他の人も読めるにちがいない」
と考えます。
年齢が上がり、メタ認知が育ってくると、
「自分の字は、他の人が読んだときに読みにくいかもしれない。ノートや作文は読みやすいようにきれいに書こう」
という意識が芽生えます。

また、「メタ認知」が育つことで、文字の特徴をことばで捉えることができようになります。
例えば、「お」は、横線から突き出る縦の線は、短めの方がバランスがよくかっこよく見えるぞ!というよう具合にきれいな字を書くコツがわかってきます。

【集中力】

集中力をUPの秘訣はタイマーを使うこと!

集中力も、子どもたちの心身の発達とものに身についていく力です。そのため、自分の力で集中することが難しい年齢の場合、大人の手助けが必要です。リビングで大人と一緒に勉強したり、机の周りから勉強の妨げになるものを取り除いたり、よりよく学習できる環境づくりが必要です。

また、タイマーを使って、勉強する時間(15分~25分)とお休みの時間(5分)を設けることも集中力アップにつながります。

おすすめの字の練習テキスト&ノート

字の練習をするときのおすすめテキストをご紹介します。

「なぞらずにうまくなる子どものひらがな練習帳」
ひらがな、カタカナの書き方をことばで理解できるようになる、なぞり書きのテキストです。マスに対してバランスよく字を書く練習に使います。

「カラーマスノート」
カラーマスは、1マスを空色、黄色、ピンク、緑色の4色のパステルカラーに分割したマス目のノートです。カラーマスに書かれたお手本のマスの色と線をたよりに、字の配置を意識しながら書き写すことができます。

道具で発達をサポート トビラコ Webサイトより

カラーマスノートは小学6年生用まであるので、『日本漢字能力検定』のテキストと併用で使うのもおすすめです。

トメ・ハネ・ハライに注意して字を書く練習には、漢字検定がおすすめです。「きれいな字」というぼんやりとしたイメージではなく、漢字検定の合格基準をもとに客観的に字の形を学ぶことができます。

発達の遅れから考える字を書くことへの困難さ

最後に、字を書くことが困難な子どもたちに見られる発達の遅れについてご紹介します。

ADAD「注意欠陥多動性障害」

注意の持続的集中が苦手な子どもたちは、字の練習や書き取りなど、集中的な反復練習が必要な課題で「わかっているけれど、できない」といったことがおこります。勉強というかならずしも楽しくないことに取り組むには、衝動のコントロールの力が必要ですが、その力が弱い子たちがいます。

自己コントロールがうまくできずに落ち着きのない子で、次の3つの特徴があります。
(1)注意集中困難
一つのことに注意を持続的に集中させることができない。何かに注意を向けようとしても他の刺激が入るとぱっとそちらに注意が移ってしまう。そのためのミスや忘れ物が目立つ。
(2)多動性
落ち着きがない。じっとしていられない。身体のどこかが動いている。
(3)衝動性
衝動や欲求のコントロールが苦手で、それにすぐつき動かされてしまう。状況をみずに行動に走る、待つことができないなど。

滝川一廣 『子どものための精神医学』より

発達性協調運動症(発達性協調運動障害)

発達性協調運動症は、不器用さが根底にあり、球技が苦手だったり、字をうまく書けないことがおおいです。理由としては、頭の中のイメージと体の動きが一致せず、うまく身体を動かせないことがあげられます。
書字に関しては、きれいな字をイメージすることが苦手、あるいは、イメージできていても、体が上手に動かないということが考えられます。

学習障害(限局性学習障害、LD)

読み書きの能力や、計算力などの算数能力に関する、特異的な発達障害のひとつです。学習障害には、読字の障害を伴うタイプ、書字表記に障害を伴うタイプ、算数の障害を伴う3つのタイプがあります。今回は、読字能力についてご紹介します。

「発達性ディスレクシア」
知的な遅れや視聴覚障害がなく、充分な教育暦と本人の努力がみられるにもかかわらず、知的能力から期待される読字能力を獲得するのに困難がある状態と定義されています。
発達性ディスレクシアの読字や書字の特徴
1文字を一つ一つ拾って読むという逐次読みをする
2単語あるいは文節の途中で区切って読む
3読んでいるところを確認するように指で押さえながら読む(これは音読の遅延、文の意味理解不良につながる)
4文字間や単語間が広い場合は読めるが、狭いと読み取りが増えて行を取り違える
5音読不能は文字を読み飛ばす
6文末を適当に変えて読んでしまう適当読み
7音読みしかできない、あるいは訓読みしかできない
8拗音「ょ」促音「っ」など、特殊音節の書き間違いや抜かし
9助詞「は」を「わ」と書くなど同じ音の書字誤り
10形態的に類似した文字「め・ぬ」等の書字誤りを示す

厚生労働省 学習障害(限局性学習障害)


字を書くことが苦手な子へのアプローチ

お子様の良いところを言葉で伝えることで、メタ認知が育ちます

子どもたちの年齢や、生来の資質によっては、字を書くために必要な集中力やメタ認知を発揮するが難しい場合があります。そのような子どもたちは、本人の努力だけで解決するのは困難な状況も多く、叱責ばかり受け、自尊心が落ちてしまいがちです。子どもたちの心を守るために、「字か汚い」「やる気がない」といった人格を否定するような言葉で叱らず、集中力やメタ認知の成長を見守ってあげてください。

字を書く時のタスクの優先順位


きれいな字を書くまでに必要なタスクはたくさんあります。
そこで、重要なタスクを優先順位ものがら確認していきましょう。
①背筋を伸ばして椅子に座り、机に向かっている
ご家族は、机と椅子の高さがお子様の身長に合っているか確認しましょう

②鉛筆を持つ手と反対の手が、ノートを押させている
ノートがずれると字は上手に書けません。また、姿勢の維持のためにも鉛筆を持つ手と反対の手はノートを抑える習慣をつけましょう。
力が弱く、ノートを抑えるのが難しい、姿勢が崩れやしお子様には、「ぐっポス」がおすすめです。

③鉛筆を正しく持つ
鉛筆のもち方が正しくないと、手首の可動域が減り伸びやかな線が書けません。また、手首や指に力が入りすぎて疲れてしまい、字を書くことを嫌がすようになります。ただ、正しく持てない理由には、手や指の筋肉がまだ十分に発達していないというこもあるので、弱い力でも持ちやすいように、太めの鉛筆や補助具を使ってみてください。

④濃い筆圧で書けていればOK!
濃い筆圧は、字を書くことへ自信の表れです。まずは、字の形にはこだわらず、濃い筆圧でしっかりと書けていることを褒めてください。手の力が弱く筆圧が十分でない場合は、硬度2b~6bの鉛筆を使いましょう。


全部を同時に行うことは難しいので、一つ一つできるように声をかけてあげましょう。

アドバイスは、「良い出し」+「さらに」が効く!


間違いやを指摘する前に、上手に書けた字をたくさん褒めてあげましょう。
字だけでなく、姿勢や鉛筆の持ち方など、子どもたちが意識的に気を付けたところを、言葉にして届けてあげると、これからの練習のモチベーションにつながります。
良いところを褒めた後、さらによくするためのアドバイスとして、間違えたところを直してあげると、子どもたちの心にも届きやすくなります。

表現の方法は自由 先入観を捨てて楽しもう!

タヴレットやパソコンなど使った学習方法もOK

家庭でサポートするさいには、「こうすべき、こうあるべき」という先入観を捨てて、子どもと一緒に楽しみながらやることも大切です。字がうまく書けなくても、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのITツールを使うことで、表現に自信をつけることができる子もいます。学校の宿題の書き取りや作文課題についても、学びの本質を見失わないよう、子どもたちの困ってる状況を学校とご家庭とで共有し、サポートの仕方について、アイディアを出し合うことも大切です。


書字をきっかけにはじまるサポート


字を書くことの苦手から、子どもの成長について心配になった場合は、ぜひ早めに専門機関に相談し、必要に応じて専門家の支援を受けながら、家庭でできる工夫を行っていきましょう。お子さんのペースや方法で、できることを少しづつ増やしていけば、自信につながります。
その自信が、学校生活や将来への進路にいい影響を与えていくことを心から願っています。

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