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映画『BLUE GIANT』観た


前から気にはなってた『BLUE GAIANT』。アマゾンの配信で観た。料理作りながら「音、聴いとこう」と思ったけれど、引き込まれてしまった。

JAZZは、流行りの音楽ではなく一部の愛好家が好むもの。最近の映画の中では、そんな位置づけで語られることが多くなった。『ラ・ラ・ランド』でも好きなものは好き、と時代に背を向けるライアン・ゴズリングが演じる主人公はジャズピアニスト。現在のJAZZに与えられた記号は悲しいけれど、そんなところだろう。実際に、日本でもそんな傾向がある。

横浜中華街にある老舗ジャズカクテルラウンジ「ウインドジャマー」(横浜市中区山下町)が2月28日、閉店する。1972年の創業以来、カクテルとジャズで来店客を酔わせてきたが、新型コロナウイルスで客足が遠のき、建物の老朽化もあって“航海”を終える決断をした。総支配人で店長の金子浩さん(59)は、感謝の言葉を口にする。「愛してくれたお客さまのおかげで、ここまで続けてこられた。『ありがとう』と伝えたい」

出典:カナロコHP

惜しまれながらも、すでに閉業。日本のJAZZ発祥の地、横濱でも心地よく聴かせるところが減っている。

令和の若者がレトロに憧れて、JAZZ喫茶なんかを面白がってる記事などは一つの光だけれど、それだけではなかなか難しかろう。

文化の承継は、コスパ、タイパ、標準化という言葉が席巻するのっぺりとした世界ではそう簡単にはいかない。

私の世代からすれば、JAZZは今で言う意識高い系の音楽だった。文学好きな人は、ちょっと前の世代の植草甚一のJAZZ評論なんかを古本屋で見つけてゾクゾクし聴くようになったんではないかと思う。中上健次もタモリも村上龍もJAZZ好き、俺も聞こう、なんて。

ハマれば、ビリー・ホリディを聞き始め、ブルースの歴史を知りたくなり、黒人の公民権運動に辿り着く。キング牧師の演説に心を揺さぶられる。そして再度聴くビリー・ホリディはまた違ったものになってる。自由の渇望、希求がその音楽の根っこにあるJAZZ。何にしても背景を知ることは奥行きを広げてくれる。

ジャズは、知ると熱量が上がる音楽。根底にある差別の根は深く激しい

それが、なんになったかって。
『BLUE GIANT』を見ようという動機になった。(笑)

主人公のモチベーションは、世界一のJAZZミュージシャンになること。仙台から出てきた宮本大、おお、あなたはのっけからオオタニさんじゃないか。

そのあまりにもストレートな欲望に突き動かされて話は進む。そう、混じり気のない欲望は、周りを変化させる力を持っているのだ。

物語は王道が良い。さまざまな世代がアクセスできる。純粋な生き方は自分の中に巣食う邪まな心も打ち砕き、カタルシスをもたらす。

自分を助けるのは自分しかいない、というメッセージも潔くて良い。助け合うけれど馴れ合わない。

人生に大きな壁が立ちはだかったり、アクシデントが起こっても、自分を立ち直らせるのは最後は自分自身の力だ。周りの人たちは眠っている力を覚ますためにいる。宮本大は直観的にそれを知る人だった。無垢なところでエンパワメントしたり、されたりする人間関係が描かれてた。

涙腺を刺激したのは、いつの時代でも解放区を求めて彷徨う魂の叫びが聴こえるからだろう。

「今度は今度、いまはいま」は、『PERFECT DAYS』で役所広司が家出してきた姪に語る台詞だけれど、JAZZは常に一期一会の音楽「今度は今度、いまはいま」なのだ。

今一瞬を生ききる。その瞬間、瞬間に人は幸せや喜びを感じる。

さて、束の間の幸せを求めてJAZZ喫茶にでも行こうかな。


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