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【シリーズ第43回:36歳でアメリカへ移住した女の話】

 このストーリーは、
 「音楽が暮らしに溶け込んだ町で暮らした~い!!」  
 と言って、36歳でシカゴへ移り住んだ女の話だ。
 前回の話はこちら↓ 

 フランスから来たハニーは、どれくらい滞在したのかはわからない。
 けれども、彼の生活は、翌日から元に戻っていた。 

 「フランス人はそういう点ではクールやで」

 ということなので、シカゴのブルース村は、ひと晩で満足され、別の都市へと旅立たれたのかもしれない。
 

 翌年の夏、午前中に買物をすまし、家に帰ってくると、彼の姿がなかった。
 いつもは、仕事に行くまで一歩たりとも外に出ないのに、珍しいことだ。

 その日の夜、シャワーを浴びて扇風機で涼んでいると、彼が帰って来た。
 ギターを持っていないので、仕事ではなかったようだ。

 「おかえり」

 「サウスのレゲエ・フェスティヴァルに行っててん」

 通常、何も言わない彼が、返事をした。
 なんなら、じろりと睨んで終了することもあるのに、珍しい。
 しかもご機嫌だ。

 🌞🌞🌞🌞🌞
 シカゴの夏は楽しい!
 ミレニアムパークでは、ゴスペルフェスティヴァル、ブルースフェスティヴァル、ジャズフェスティヴァル、その他、ストリートやブロックパーティのような、小さなフェスティヴァルが開催され、音楽で満たされる。
 レゲエフェスティヴァルもそのひとつだ。

 レゲエミュージックが好きな彼は、はじめて私と出会った日に、

 「レゲエは好き?今度、レゲエバーに行こう」

 と誘ってくれた。
 あの話はどうなったんだ???

 レゲエバーへ行く前に、私が飛びかかったので、文句は言えないけれど、私もレゲエフェスティヴァルに行きたいぞ。

 *彼に出会ったときのお話⇩

*初デートで大失敗したお話⇩

🌞🌞🌞🌞🌞

 「ふーん」

 扇風機に張り付きながら、愛想のない返事をした。

 「そんなに暑いんやったら、トップレスになったらええやん。
 フランス人はそんなん気にせえへんで。
 知り合いのフランス人の女の子は、部屋の中を素っ裸で歩いて、友達のアメリカ人の男の子をビックリさせたらしいで。
 フランス人には、羞恥心がないから好きやわ~」

 フランス人???

 残念ながら、私はフランス人ではない。
 羞恥心もある。
 同居人の前を、トップレスで歩こうとは思わない。
 同居人からレベルアップするために、フランス人になる気もない。
 トップレスになったところで、何かが変わるとも思えない。

 翌日、彼が電話で誰かと話しをしていた。

 「チコは結婚してるねんで!」

 どうやら電話の相手は女性で、チコ・バンクスに惚れているようだ。

*シカゴが誇るギターリストチコ・バンクスのお話⇩


 彼に恋の相談をする女性って誰だ? 
 チコの女に手を出すことは、彼の中ではルール違反なので、絶対にないけれど、相談にのるということは、その女性のことは嫌いではないはずだ。
 ちょっとおもしろい。

 その日の夜、キングストン・マインズへ遊びに行くと、彼も遊びに来ていた。
 私が声をかけると、

 「フランスから来てる友達」

 と言って、”さくらちゃん”を紹介してくれた。

 彼に呼ばれて、走ってきたさくらちゃは、20歳前半かな?
 ベトナム人とフランス人のハーフで、めちゃめちゃかわいくて、セクシーだ。
 どうやら、さくらちゃんは、チコに本気で惚れちゃったらしい。

 良い子のさくらちゃんは、私に笑顔で挨拶をし、再びダンスフロアに飛び出して行った。
 ノーブラで、サテン生地のタンクトップを着ていた。
 トップレスのお友達は、さくらちゃんだったんだー。
 
 モデルでスタイル抜群、フレンドリーなさくらちゃんの周りには、ブルース村の男たちがわっさわっさと集まっていた。

 数日後、パソコンを開くと、数枚の写真が目に飛び込んできた。
 彼が、私のパソコンでメールをチェックした後、閉じるのを忘れたらしい。
 さくらちゃんとふたりで、顔の間に風船を挟んでいる写真➡風船が割れてキスしてる写真だった。

モテモテさくらちゃんとニコニコ同居人

 その写真の服は、彼のお気に入りで、レゲエフェスティヴァルの時にも来ていたぞ。
 こんなに楽しそうな彼の顔は見たことないなぁ。

 写真には、もうひとり若い男の子が写っていた。
 さくらちゃんの全裸に仰天した男の子かな?
 風船ゲームは、さくらちゃんと男の子じゃなくて、なんで、さくらちゃんと彼だったんだろう??? 
 
 ちょっとだけ思ったけど、男の子とさくらちゃんの写真が届いても、

 なんだこりゃ?

 となるので、納得した。

 モテモテさくらちゃん。
 この年もフランス人の勝利でしたー。


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