見出し画像

【シリーズ第15回:36歳でアメリカへ移住した女の話】

 このストーリーは、
 「音楽が暮らしに溶け込んだ町で暮らした~い!!」  
 と言って、36歳でシカゴへ移り住んだ女の話だ。
 前回の話はこちら↓

 運命の彼は、1週間のニューヨークツアーから帰ってきた日の夜に、デートをしようと約束してくれた。

 1週間後、私は再びキングストン・マインズにいた。

 一緒にツアーへ行っていた、ギターリストのチコ・バンクスも、彼女と遊びに来ていた。

  ⇩⇩⇩チコが登場する記事⇩⇩⇩

 しばらく4人でワイワイ過ごした・・・と言いたいけれど、私にはワイワイする実力はないので、ワイワイしている3人の横で、ひたすらニコニコしておいた。

 ちょうど一時間くらい経った頃、運命の彼が言った。
 
 「〇*&×⁂@!$##?」

 大音響でなにも聞こえない。
 黙っていると、

 「ドゥ・ユー・ウォナ・ウェイト(待ちたい)?」

 と聞かれた。
 質問の内容は理解した。けれども、その前を理解していないので、私は何を待ちたいのかがわからない。
 とりあえず、微妙な感じで首を縦に振ると、

 「オーケイ、アイ・キャン・ウェイト(わかった。待つわ)」

 という返事。
 私には何ひとつわからないけれど、彼にはわかったらしい。
 スッキリはしないけれど、聞いたところでどうせわからない。
 「オーケイ」だから、いいことにした。

 その後も、3人+私でワイワイワイワイ。彼が途中でシットイン(飛び入り参加)したりして、気が付いたら、閉店時間になっていた。

 キングストン・マインズで待ち合わせをして、デートだと思っていたけれど、どうやら違ったようだ。
 おとなしく彼に車まで送ってもらい、

 「サンキュー!」

 と、きちんとお礼を述べた。
 すると、

 「昨日の夜、ショウを終えてすぐにニューヨークを出発して、一睡もせずに運転して帰ってきてんで。こんなんやったら会う必要なかったやん!!」

 という言葉が返ってきた。

 「???」
 
 どうやら彼は怒っているようだ。それも、かなり。
 さらに、

 「なんで、俺に会いに来るねん?!」

 ・・・なんでと聞かれても、会いたいから来ているだけで、それ以上の理由はない。
 しかし、怒っている彼を前に、何か言わねば!!!と、焦ったのだろう。咄嗟に出た言葉は・・・

 「ビコーズ・アイ・ラヴ・ユー(愛してるから)」

 だった・・・。
 言った瞬間、

 「ちゃう~~~っ!!!」

 と思った。
 もちろん、愛してはいない。愛しているはずもない。

 しかし、時すでに遅し。

 彼は、驚きを超えて、不気味そうに私を見ていた。
 実に正しい反応だ。

英語は難しい・・・

 言い訳をすると、「ライク」はカジュアルな感じがするので、もう少し、”男性として好き”という気持ちを伝えたかったのだと思う。
 語彙が少ないのだから仕方がない。
 今なら”すごく魅力的だから”とか、”興味があるから”とか、違うフレーズが出るんだけどなぁ・・・。

 家に帰ってからよ~く考えてみた。
 キングストン・マインズで、彼が最初に言った言葉は、

 「そろそろ行く?」

 だったに違いない。
 返事に窮している私を見て、二人きりになるのを躊躇していると思ったのだろう。

 「ドゥ・ユー・ウォナ・ウェイト?」

 は、「待ちたい?」よりも、「延期したい?」の方がしっくりくる。
 
 要するに、聞こえなかったにも関わらず、聞き返さず、適当に頷いたことがいけなかった。 
 その上、寝たこともない、なんなら、まともに話したこともない男に向って、私は”愛してる”と言ったのだ。

 私が彼でも、危ない女だと思う。

 そもそも好かれているわけではなかったので、嫌われたことは受け入れられる。
 でも、こんな私にも多少のプライドはある。
 頭のおかしい、不気味な女だと思われるのはイヤだーーー!!!。
 
 さて・・・どうしたもんか・・・。






最後まで読んでくださってありがとうございます!頂いたサポートは、社会に還元する形で使わせていただきたいと思いまーす!