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毎週ショートショートnote掌編小説「機械」【着の身着のままゲーム機】


多忙極める毎日の中
私は常にゲーム機を持ち歩いている。
いや持ち歩いているというより寧ろ
着ているといった方が正しい。
それは些かも過剰な表現などでなく、
実際左太腿の側面にビニールテープで直接ゲーム機を巻き付けてあるのだ。


私は今年で40代半ばに差し掛かるが、
この歳になるまでゲームというものに微塵も興味が沸かなかった。ゲームだけでなく、汎ゆる物事に強い関心を抱かない性格で、幼少の頃より「機械」というあだ名を貰っていたほどである。

私は限りなく受動的に生きてきた。そして与えられた役目だけを完璧に全うしてきた。

ただ先日私は仕事でミスを犯し、会社に1000万円程の損失を与えてしまったのである。

酷く落ち込んだ私は上司に促され会社を3ヶ月休職した。
その間、ふらりと立ち寄った家電量販店で暇つぶしのために幾つかのゲーム機を買い、気付けば休職期間中をゲームにのめり込んで過ごしていたのである。

以来私は片時もゲーム機を離せないでいる。太腿に貼り付けたゲーム機をズボンの上から触ると、仕事への精神不安が和らいだ。
角張ったゲーム機が肌へと吸い付く感触は、静謐の森の中に聳える大樹にもたれ掛かっているような安心感を与えてくれるのだ。
つまり私は着の身着のままゲーム機といった所である。

私は次第に左太腿の側面からゲーム機と一体になり、そうして「機械」へと変わっていくのだろう。そんな予感が静かにあった。


#毎週ショートショートnote


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