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名作劇場「童話の世界から:日本編」vol.12「きつねのにょうぼう」

ある山里に成信という若者が一人で住んでいた。

ある年の夏、成信が田んぼで仕事をしていると一人の娘が通りかかり、倒れ込んでしまった。

成信は家に連れて娘を介抱した。2、3日経つと娘はすっかり具合が良くなり、成信の身の回りを世話するようになった。成信が娘の素性を訪ねると、
「ここにおいて欲しい」と言う。

こうして娘は成信と暮らし、よく働いた。その秋、二人は夫婦になり、男の赤ちゃんが産まれ、もりめと名付けた。

しかし、もりめが重い病気にかかってしまい成信はつきっきりで看病をした。その甲斐あって、もりめは元気になったが、ほったらかしにしていた田んぼは荒れ放題になっていた。

成信はなんとか田んぼを耕したものの、明日1日で田植えをしなければならないと娘に話した。翌日、成信が田んぼに出かけると、田んぼに全部苗が埋まっていた。しかしそれはすべて逆さまに植わっていたのだ。

そのこと娘に言うと、娘は田んぼへと走りだし、いつしか白い狐の姿になって走っていた。

そして「世の中よかれ、我が子にくわしょ。検見を逃がしょ、つと穂で稔れ」と歌うと、逆さに植わっていた苗がみなひっくり返った。しかし娘は狐
であることを成信に知られたので、山へ帰らなければならなかった。

成信は追いかけるが、娘は狐の姿になって消えていってしまった。

その年の秋、検見の役人がやってきたが、成信の田んぼだけは稲が実らず、
成信は年貢を納めないで良いことになった。役人が帰ったあとに、
稲の穂がどんどん実り、成信はいつまでも田んぼを眺めていた。

きつねは古くから農耕の神様として考えられており、縄文時代からすでに人
の近くに生息していたと考えられています。

土気の象徴として、豊作祈願の対象として信仰されるようになりました。 

狐は人を化かすいたずら好きの動物と考えられたり、それとは逆に、稲荷神社に祀られる宇迦之御魂神の神使として信仰されたりしている。

恩返しの物語は数多くありますが、きつねが主人公になるのも珍しくありません。

神の使いなのか物の怪(日本の古典や民間信仰において、人間に憑いて苦しめたり、病気にさせたり、死に至らせたりするといわれる怨霊、死霊、生霊
など霊のこと)なのかは分かりませんが、いずれ古くからある話です。

教訓を活かせる余裕と見極める知性を養いたいものです。

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