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喋り始めの口癖が「ンフンフ」


私には喋り始めに「えっ、」と言ってしまう口癖がある。

人見知りだが別にコミュニケーションが苦手な訳ではない。無意識に出てしまうのだ。


「えっ、それってこういうことですかね。」とか、「えっ、まじっすかそれ。」みたいな感じ。


「えっ、」を言ってしまうことで発言にワンクッション置けるため、その後はスムーズに話すことができるのは良いのだが、余りに連発すると相手を不快な気分にさせてしまうのではないかと思ってしまう。


まあ、「えっ、」を言わないように意識すればいいだけの話なのだが、長年に渡って体に染み付いた癖というのは不思議なもので、「えっ、」を言わないと逆に気持ち悪く感じてしまう。クッションがないままに、言葉を話すことになるので、何かリズム感を欠いているような気がしてならない。


なんかこう、相手が気にならなくてかつ自然で、喋り始めの口癖に最適なフレーズがあればいいのだが。


うーん。



「ところがどっこい」なんてどうだろうか。私は「ところがどっこい」が好きだ。


字数は多いが”祭りだわっしょい”のようなリズム感と、何か始まるんじゃないかというワクワク感のある言葉だ。


もちろん口癖を炸裂させる上で文脈は関係ない。あくまでも癖なので、どんな会話の最中であっても「ところがどっこい」で入る。


「今日は暑いですね〜」


「ところがどっこい、暑くて溶けそうですよね。」


「もう御社はクールビズ始まりましたか?」


「ところがどっこい、来週からなんですよ。」


ところがどっこい、というのは何かこう、その後に裏切りの要素が続くものであるが、至極真っ当に予測できる発言がその後に続いている。


「今日は暑いですね」に対して「暑くて溶けそうですよね」なんてほぼほぼ教科書通りの返しに近いし、ところがどっこい感のカケラもない。


さらにそこから畳み掛けるように、「クールビズ始まりましたか?」という質問に対して「ところがどっこい」を挟むことでシンプルに話をややこしくしている。


本人は来週からですよ、と普通に答えたつもりかもしれないが、受け手にとっては「え?今週からだと思いました?残念で〜す、来週からで〜す」というウザい感じに捉えられるかもしれない。これはダメだ。うーん。



少し突飛かもしれないが、「お、おトイレはどちらに?」はどうだろう。

その後に興味がない話が続くとしても、思わず相手を引き込んでしまうのではなかろうか。


「今日は暑いですね〜」


「お、おトイレはどちらに?暑くて溶けそうですね。」


「えっ、あそこのコンビニにあると思いますけど。。。」


「おトイレ」の前に「お、」をつけることでコイツまじで漏れそうなんじゃないかという切迫感と緊張感を与え、その後に続く言葉に耳を傾けることなく聞き手はスムーズに近くのトイレを指差して紹介してしまう。流れるようにスムーズに。


会話はもちろんこの瞬間に終わってしまうが、トイレから戻ってくればまた話は再開する。


しかしながら結局第一声が「お、おトイレはどちらに?」となるので、「今さっき行ってましたよね」と頻尿と記憶障害の疑いを持たれてまた会話が終わるのがネックかもしれない。

結局、喋り始めのフレーズそのものが意味を表してしまうとダメなのだ。文脈と全く違う異物が入ってくるので受け手がびっくりしてしまう。


結局何ていうかその、「ンフンフ」が良い気がする。


みんなで声を出して言って見て欲しい。


「ンフンフ」


これだ。少し言いにくさはあるが、リズム感が抜群であり、なおかつ言葉自体に意味はない。その上、ンフンフに耳障りな要素はない。完全にドラフト一位候補だ。


「今日は暑いですね。」

「ンフンフ、まるで焼けたアスファルトを押し付けられたような暑さですね、喉がサハラ砂漠のようになっています。そもそも人間の”暑い”という感情はいつ生まれたのでしょうか、そんなことに思いをめぐらせていたらより暑くなってきましたね。」



「御社はいつからクールビスですか?」



「ンフンフ、来週からネクタイをつけなくて良い、そう聞いております。それがあなたの定義するクールビズに値するのかは分かりませんが、少なくとも私の周りの人間はそれをクールビズと呼んでいます。ンフンフ、ちなみに私は周りに迎合することなく、それをネクタイレスと呼んでいます。」


「ンフンフ」を使うことで、何の違和感もないばかりか、その後に続く言葉もまるで詩のようなメッセージ性を持ち、淀みなく流れている。


もう「ンフンフ」に決めた。これしかない。


もし、遠くから「ンフンフ」が聞こえてきたら道を開けてください。



私が通ります。


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