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vol.54 緑深まる季節【手紙の助け舟】

こんにちは。
喫茶手紙寺分室の田丸有子です。
だんだんと気温も上がり、初夏の陽気となってきましたね。束の間の爽やかな季節、いかがお過ごしですか。

小満

二十四節気は「小満しょうまん」(今年は5月21日〜6月5日)です。草木が葉や枝を伸ばし、命が満ち満ちる頃です。
木の葉が生い茂って重なり合う様子を「結び葉」と呼ぶ言い方があるそうですが、そう思って見ると手に手を取っているように見える気がします。恋する男女に喩えて「思い葉」とも言うそうです。5月23日は恋文と語呂合わせできるところから「ラブレターの日」。また、日本で初めてキスシーンが登場する映画が封切られた日なので「キスの日」でもあります。小満の時期は春に出会った人と恋が始まる予感に満ちた季節と言えるのかもしれません。全くの余談ですが、お魚のキスの旬も今ぐらいの時期から始まるそうです。

葉書の原型

多羅葉の木

先日、江戸時代に造られたという植物園で多羅葉たらようの木を見ました。ご存じの方も多いでしょうが、多羅葉の葉は「葉書」の原型と言われています。
昔、人々は葉っぱにメッセージを刻んで手渡していたそうですが、文字を残すために使われていた葉は何でも良かったわけではなく、主に多羅葉の葉が使われていました。多羅葉の葉は傷をつけるとその部分が黒く浮き出る性質があるので、文字を残すことに適していたわけです。(写真の中に文字を書いた葉があるので見てみてください。)
多羅葉の木は、郵便局の敷地や神社仏閣で良く見かけます。郵便局は前述のような理由がありますが、神社仏閣は仏教の教えを多羅葉の葉に書いて伝えたところから来ているとか。
ちなみに多羅葉の葉に宛名を書き、120円切手を貼れば今でもそのまま配達してもらえるそうですよ。多羅葉の葉が手に入る方は試してみてはいかがでしょう。

さて、葉っぱと言えば小満に食べる和菓子に「おとし文」がありますね。去年はきみしぐれタイプの「おとし文」をいただきましたが、今年は練り切りで作った葉っぱのタイプを買って食べました。季節を感じる心を大切にするのは手紙の世界も和菓子の世界も同じですね。手紙と和菓子、私の二大好物です。

鶴屋吉信の「おとし文」

今回は葉っぱにまつわる話をしましたが、最後はやっぱり”葉っぱより団子”となってしまいました。美味しいものには勝てませんね。


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田丸有子(たまる・ゆうこ)|喫茶手紙寺分室 note ライター
手紙文化振興協会認定 手紙の書き方コンサルタント
子供の頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの文通好き。
切手に描かれている美術品や絵画の実物を鑑賞するための美術館巡りが趣味。目下ステイホームで始めたベランダガーデニングに夢中。
blog: 手紙魔Yukoのお手紙ライフ


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