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「手紙処」誕生秘話 04 いつかあなたに必要な言葉〜手紙標〜

こんにちは。手紙寺発起人の井上です。
前回は、手紙処に続く「道」に込めた想いをご紹介しました。今回は「道」に関連して、船橋の手紙処へと続く道に置かれた「手紙標」についてご紹介します。

手紙処をつくるとき、たくさんの人のお力をお借りしました。手紙処の建物そのものについては建築家の押尾先生、手紙処を世の中へ伝えるためのデザインやその方法についてはデザイナーの廣村正彰先生と、何度も話し合いを重ねていました。

その話し合いのトピックのなかに、手紙寺のゴールがどんなものであるのか、というものがありました。そしてその答えの一つとして、手紙寺を訪れた人が「この場所は、きっと私のための場所だ」と感じてもらえることを大切にしたいという思いが大きくなっていたのです。

手紙を書きたいと感じる場所や時間は人それぞれにありますが、
少しでも多くの人にとって手紙寺が「自分だけの、手紙を書くための場所」でありたいと考えたのです。

それをより強く感じていただくために、デザイナーの廣村先生は、
船橋の手紙処に「手紙標」というものを用意してくださりました。


「手紙標」とは、手紙を書くための道しるべ。

船橋の手紙処へ続く道沿いに、一つひとつ内容の違った言葉の書かれた板が6枚並んでいます。

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これは、作家などの著名な方が書いた手紙の一部を抜粋したもの。
妻へ、我が子へ、友人へ。
完全な私信であり、様々な背景を持った言葉です。

手紙処へ行く時には、「 大切な人に、今日はどんな言葉を伝えようか」と考えることになります。目に止まる手紙標の言葉たちは、自分の気持ちを言葉にするヒントになったり、手紙を書こうとするあなたの背中を押してくれることでしょう。

きっと、あなたが手紙標を必要とする時がくる。

一つひとつの手紙標に目を向けると、私の心に重く響く一文もあります。じしかし、「この文章はどういう意味だろうか。」と、はっきり分からないものもあるのです。

なぜならこの文章の抜粋は、廣村先生とその事務所のみなさんに決めていただいたものだから。

私だけに響くものばかりを集めるのではなくて、
誰か一人に響く一文が、たくさんあるほうがいいと思ったからです。

手紙処を「この場所は、きっと私のための場所だ」と感じてもらうのと同じように。手紙標を見た誰かに「この文章は、きっと私のための言葉だ」と感じてもらいたい。

そして、そう感じた時にこそ、手紙を書きたいと思うことができ、手紙処を必要としてもらえると思ったのです。

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手紙標の言葉たちは、すべての人の心に響くものではありません。
しかし、手紙標を読む人によっては、受け取り方は変わってくるでしょう。
また、同じ人であってもそれを読むタイミングが変われば、また違った感想を抱くかもしれません。

そんな風に、手紙処を訪れるたび、
手紙を書く相手のことだけでなく、自分自身との対話や、自分自身の気持ちを確認する時間を、お作りしたいと思っています。

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井上 城治 | 手紙寺 発起人
1973年生まれ。東京都江戸川区の證大寺(しょうだいじ)住職。一般社団法人仏教人生大学理事長。手紙を通して亡くなった人と出遇い直す大切さを伝える場所として「手紙寺」をはじめる。趣味は、気に入ったカフェで手紙を書くこと。noteを通して、自分が過ごしたいカフェに出会えることを楽しみにしています。

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