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#平成最後の夏
【spin a yarn】
アイスコーヒーの氷が溶ける時、
夏の、一瞬、静まる。
カラン。
【spin a yarn】
金魚を散歩に連れ出せそうな雨上がり。首筋に纏わりつく湿度たち。
泳ぎましょう、と誘う。
こめかみから汗がこぼれて、口もとに伝う。
塩辛いなら海よ、と嘯く。
ほら、ナメクジもカラフルになれば愛らしい。
ほら、緑のいがも墨色に。
ほら、一番星はヒトデよ。
【spin a yarn】
夢の中まで迎えるような、日傘をひとつ持ちたいと、右手をかざして君は言う。
わたしの夢は、いつも真昼で眩しいの。刺繍の素敵な日傘があれば、影を匿い、眠りに長居できると思うのだけど。
どんな刺繍?
そうね、イニシャルに花が咲く。
君の名前を聞いていい?
【spin a yarn】
あなたは苺。あなたは氷。夜中に掲げて何をするの。そろそろ星の光も溶けるそうよ。天の川なら、とびきり甘い練乳よ。冷めない夜に、星の滴るのを待っている。流れ星さえ、溢れながらゆっくりと。そのうち月も、うふふ、うふふ。きっとバニラよ。昇りたてならアマレット。
【spin a yarn】
空が溶けるよ。
掬えば甘く、空色のチョコレートソース。
ソフトクリームにトッピング、ストライプして夏の味。
日傘も麦わら帽も空色に染まる。
暑いね、君は空色。
暑いね、君も空色。
昼間の空の滴り続ける。