Kaz UTASHIRO

Kaz UTASHIRO

最近の記事

[悪魔本の翻訳]

この本は、2004年10月から2005年7月にかけて、すべて一人で翻訳作業を行った。この時は、毎日何ページ進んだかを記録していて、下がそれをグラフ化したものだ。266日間で644ページ、一日平均 2.42 ページ。 5月の連休を境に、このままのペースではまずいとネジを巻いているのがわかる。多い時は週のうち半分くらいは翻訳作業にあてていたのではないだろうか。一日作業できる日は、7時に起きて8時から12時まで作業、お昼を食べて13時から17時まで作業。17時から20時までの間に

    • 「BSDカーネルの設計と実装―FreeBSD詳解」訳者まえがき

      この本は、これからオペレーティングシステムを勉強する若い人達はもちろんのことだが、個人的には「俺は UNIX にはちょっとうるさいぞ」という少し現役を離れた30台後半以降の世代にも読んでもらいたいと思う。この十何年かの間に BSD の世界に起こった変化を知れば少なからず驚くはずだ。たとえば、実行の単位はプロセスではなく完全にスレッドになっていて、スワップ領域がなくてもプロセスは fork できてしまう。ディスクのセクタやシリンダの意味は全然違うものとなり、ブロックデバイスはな

      • [Kevin Mitnic]

        元記事 2006年の5月に来日した Kevin Mitnic の話を聞く機会があった。印象としては、随分まともな話をするなあという感じだ。普通のセキュリティ系IT企業の人の話を聞いているような気がした。印象に残っているのは、メーカーに電話して携帯電話のファームウェアのソースコードを手に入れることができたというエピソードだろうか。最後は、騙された担当者がファイルを送ろうとした通信が企業のファイアウォールに止められたのに、わざわざバックドアを開いて取れるようにしてくれたというの

        • [SRA]

          SRA 大学を卒業して、はじめて就職した会社。当時はソフトウェア・リサーチ・アソシエイツという名前だった。まだソフトウェアという言葉が一般的ではない時代で、近所にワコールがあるので下着を作ってると思われたこともあるとか聞かされた。 配属された環境開発部の部長が太田さんだった。慶應大学の齋藤信男先生の研究室と共同研究をしていて、当時まだ大学院生の村井純先生が学生の親分的存在だった。月に一度、会社でその打ち合わせがあって、会社の前にあった幸寿司に注文するのは新人の僕の仕事だっ

        [悪魔本の翻訳]

          [西田光男さん]

          ある時、実家に帰ると空き家だった向かいの家の前になにやら素敵なオブジェやら門扉やらが取り付けてあった。母親に話を聞くと、鉄の工芸家が引っ越してきたということで、もらった写真集を見せてくれた。 その後、大泉学園の自宅を大幅にリフォームした。玄関を入ったところにあった浴室を2階に移動してクローゼットと交換したことで広くて気持ちのいい玄関ができた。しかし、真ん中に構造的に抜くことはできない邪魔な柱が残ってしまった。リフォーム会社になんとかならないかと相談してもスリッパ入れはどうで

          [西田光男さん]

          [服部真澄さん]

          服部真澄さんと話したのはいつだったろうか。バカラの出版が2002年なので、2000年か2001年くらいか。オンラインカジノに関する技術的な取材だった。2000年に中央省庁のWebページが改竄されて、世間的にインターネットセキュリティが注目を集めていた時期だ。内閣官房に呼び出されて前の会議が終わるのを待っていると、出てきたのは NTT の顔見知りだったりと、なんかそんな時期だった。不正アクセス禁止法が施行されたのも2000年か。何を喋ったかは憶えていない。 ところで、トライア

          [服部真澄さん]

          [Connectathon]

          Connectathon 1986年の春に、出張で当時マウンテンビューにあった Sun Microsystems を訪れた。僕にとっては初めての海外旅行。1週間ほど滞在して、レクチャーを受けた。他の同行者は英語ができるけど、僕は外国人と話すのが初めてという状態でえらい苦労した。一旦戻り、秋から年明けまで研修目的で長期滞在したのだが、実際には新しいOSへの移植作業を手伝わされた。Connectathon は、その期間中 Santa Clara にできたばかりの Techmar

          ハッカーを読め (7/7) 『銀河ヒッチハイクガイド』

          ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイクガイド』本当はここでやめようと思ったのだが、やはりどうしても最後に「銀河ヒッチハイクガイド」を挙げておきたい。ハッカーもプログラマも登場はしないが、ハッカーに絶大な人気を博していると思われるからだ。著者はアップルマスターでもあったダグラス・アダムス。 今から20年前の1986年、シリコンバレーに長期滞在している最中に Connectathon という NFS の相互接続性テストイベントがあった。当時は UNIX ベースの様々なマシンが登場

          ハッカーを読め (7/7) 『銀河ヒッチハイクガイド』

          ハッカーを読め (6/7) 『ソフトウェア』

          ルーディ・ラッカー『ソフトウェア』ラッカー作品をもう1つ。読んだのは「ハッカーと蟻」が先だったが、最初に買ったのは実はこっちだった。当時ラッカーのことは知らなかったが「ソフトウェア」というタイトルの本が早川文庫の棚に並んでいれば、プログラマとしては買わないわけにはいかないでしょう。ところが、そのまま読まずにしまい込んであって、蟻を読んでから昔買ってあったことを思い出した。熱烈なファンも多い黒丸訳だが、どうも相性が悪いのが購入時に読了できなかった理由かもしれない。そういえば、ギ

          ハッカーを読め (6/7) 『ソフトウェア』

          ハッカーを読め (5/7) 『ハッカーと蟻』

          ルーディ・ラッカー『ハッカーと蟻』ルーディ・ラッカーは作者自身がプログラマでありハッカーであり、元々は博士号を持つ数学者で今はサイバーパンクSFの旗手、ついでに大学でプログラミングを教えていて、実は哲学者ヘーゲルの子孫ときているので、その存在自体が琴線にビリビリ触れまくりの作家なのである。はじめて読んだラッカーの著作が本作品で、他の作品は古本屋を駆け回って手に入れた。 この作品の主人公はシリコンバレーで働く中年プログラマで、人工生命技術を使ってロボット用のソフトウェアを進化

          ハッカーを読め (5/7) 『ハッカーと蟻』

          ハッカーを読め (4/7) 『パンプルムース氏対ハッカー』

          マイケル・ボンド『パンプルムース氏対ハッカー』マイケル・ボンドという名前を知らなくても、あの「くまのパディントン」の作者と言えばわかるだろう。パンプルムース氏シリーズは、元刑事で現在はグルメ情報誌の覆面調査員である主人公が愛犬ポムフリットと活躍する大人向けのミステリ小説。本書はその6作目なので、これを読むためだけそれまでの5冊を読まねばならなかった。ちなみに、パンプルムースはフランス語でグレープフルーツのことだ。 パンプルムース氏が勤務する出版社も情報化の流れでシステムをコ

          ハッカーを読め (4/7) 『パンプルムース氏対ハッカー』

          ハッカーを読め (3/7) 『鷲の驕り』

          服部真澄『鷲の驕り』導入部、登場人物であるケビン・マクガイヤとサソウ・ツヨシの描写が、あまりに実在の人物のまんまなので思わず笑ってしまうのだ。ハワイで開かれる I・NET というコンベンションは、1995年夏の INET '95 からの着想だろうか。翌1996年2月、サンディエゴで ISOC セキュリティシンポジウムに参加している最中にミトニックの逮捕が大きく報道されたことを思い出す。 ミトニック事件と似ているのは2人の人物設定だけで、小説のストーリーは事件と関係なく展開

          ハッカーを読め (3/7) 『鷲の驕り』

          ハッカーを読め (2/7) 『検屍官』

          パトリシア・コーンウェル『検屍官』パトリシア・コーンウェルの経歴には、必ず元プログラマと書いてある。変にきどってシステムエンジニアとか言わないところに好感が持てるのだ。バージニア州の検屍局でコンピュータプログラマをしていた時の経験を元にして、この作品からはじまる検屍官シリーズを書きはじめたということだ。その前には、新聞社で警察担当記者をしていたらしいが、新聞記者からプログラマへの転身というのも面白い。しかも美人だ。 もっとも、作者を連想させる主人公の女性検屍官ケイ・スカーペ

          ハッカーを読め (2/7) 『検屍官』

          ハッカーを読め (1/7)『すべてがFになる』

          森博嗣『すべてがFになる』ベストセラー作家である作者について今更解説する必要はないだろう。この作品は森氏のデビュー作だが、まず冒頭の引用文で驚かされる。なんと、ぼくもよく知っている青木淳さんの「オブジェクト指向システム分析設計入門」からの一節が引用されているではないか。これを引用する作者も偉いが、引用される文章を書く青木さんもすごい、というかうらやましい。 縦書きの文芸書の中に堂々と「UNIX」という文字が並ぶのを見ることはほとんどないので、そういう意味で希有な本だと思う。

          ハッカーを読め (1/7)『すべてがFになる』

          ハッカーを読め(0/7)

          大学で就職を考えていた頃、企業情報を読んでなんとなく面白そうな会社の資料を請求してみると、その年の春の社内報を送ってくれた。各部署の部門長が新入社員向けにそれぞれの部署の紹介文を載せる中に、一人だけ格別不真面目な人がいた。たしか4項目の内容のうち最初の3つは「回答不能」「回答不可」「回答拒否」、とそんな具合だったと思う。ただ、最後の新入社員に向けて一言という項目に「ハッカーになれ」と一言だけ書いてあった。ハッカーがどういう意味なのかを知らなかったけど、そのハッカーというものに

          ハッカーを読め(0/7)

          note をはじめて8周年でした

          ログインしたら note をはじめて8周年ですと言われた。 1本も書いてないのに。 というわけで、何か書くか… はじめての記事には自己紹介とか書きなさいと言われるので、いくつかリンクを貼っておきます。 Qiita.com 技術系の内容については、最近はブログではなく Qiita に書くことが多いです。 github.com 主にテキスト処理のツールをいろいろと作って配信しています。自分で使うために作っているので、役に立つかは不明。使用言語はほとんどが Perl。

          note をはじめて8周年でした