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ハッカーを読め (2/7) 『検屍官』

パトリシア・コーンウェル『検屍官』

過去に雑誌等に書いた記事を再掲しています。編集前のものなので、出版されたものとは異なるし、掲載にあたり若干修正している場合もあります。これは2007年に発売された、UNIX MAGAZINE Classic に書いたもの。

パトリシア・コーンウェルの経歴には、必ず元プログラマと書いてある。変にきどってシステムエンジニアとか言わないところに好感が持てるのだ。バージニア州の検屍局でコンピュータプログラマをしていた時の経験を元にして、この作品からはじまる検屍官シリーズを書きはじめたということだ。その前には、新聞社で警察担当記者をしていたらしいが、新聞記者からプログラマへの転身というのも面白い。しかも美人だ。

もっとも、作者を連想させる主人公の女性検屍官ケイ・スカーペッタ自身はコンピュータにあまり強くなく、姪であるルーシーの言動に元エンジニアとしての経歴が強く表れている。本作品でルーシーはまだ10歳なのだが、データベースを操り、モデムと電話回線でシステムに侵入したりもする。シリーズを通じて登場人物が成長する様子に惹かれるファンも多いようだが、ルーシーはこの後天才プログラマとして活躍するのだ。

しかし、検屍局でプログラマをやってるだけで検屍官の仕事に詳しくなるのかなあ? というか、検屍局にプログラマの職員がいることがそもそも不思議だ。


プログラマ

この記事を書いた時には経歴にプログラマと称しているのが気になったのだが、今見るとシステム・エンジニアどころかコンピュータ・アナリストになってる。どういうことだろう。コンピュータを使って仕事をする職業は、とりあえずプログラマと呼んどけというノリだったんだろうか。

そもそもコンピュータ・アナリストとは何だろう。この時代に、サイバー犯罪専門の分析官がいたとは思えないので、様々な分析業務の中でコンピュータを活用することを専門にしていたと考えるのが自然だろうか。必要に応じてプログラムを組むことはあったかもしれないが、プログラミングが主たる業務だったとは考えにくい。

プログラマ出身の人気女性推理小説作家ということで紹介したが、実態は思っていたのとは少し違ったかもしれない。インタビューの中でも、自らを検視官と呼んでいる。今更だが、少し調査不足だった。それだとしても、新聞記者から検視官、そこから推理小説作家という転身が異色であることに変わりはない。

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