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ハッカーを読め (6/7) 『ソフトウェア』

ルーディ・ラッカー『ソフトウェア』

過去に雑誌等に書いた記事を再掲しています。編集前のものなので、出版されたものとは異なるし、掲載にあたり若干修正している場合もあります。これは2007年に発売された、UNIX MAGAZINE Classic に書いたもの。

ラッカー作品をもう1つ。読んだのは「ハッカーと蟻」が先だったが、最初に買ったのは実はこっちだった。当時ラッカーのことは知らなかったが「ソフトウェア」というタイトルの本が早川文庫の棚に並んでいれば、プログラマとしては買わないわけにはいかないでしょう。ところが、そのまま読まずにしまい込んであって、蟻を読んでから昔買ってあったことを思い出した。熱烈なファンも多い黒丸訳だが、どうも相性が悪いのが購入時に読了できなかった理由かもしれない。そういえば、ギブソンも最後まで読めないのだ。

ここで言うソフトウェアは、単なるコンピュータプログラムではなく、人間の精神構造であり、それと同等あるいはそれを超えるロボットの制御ソフトウェアのことだ。ロボットのソフトウェアには遺伝子アルゴリズムが採り入れられ、交配と突然変移によって進化する能力を手に入れ、人間に対して叛乱を起こす。

この後、シリーズは「ウェットウェア」「フリーウェア」「リアルウェア」と続く。ウェットウェアという言葉はあまり聞かないと思うが、これは人間の脳や人体のこと。1997 年にフリーウェアが出ているところが時代を感じさせる。最後のリアルウェアの原書は2000年に出版されているのに、まだ邦訳されていない。フリーウェアのあとがきを読むと、訳者の大森望氏はやる気マンマンぽいので是非とも実現して欲しい。

残念ながら、ラッカーの作品は現在一般の書店ではほとんど入手不可能である。ただ、以前古本で探した時には、なかなか見つからなかったのに、現在はネット上の出品数が大幅に増えているせいか、大抵のものは購入できるようだ。しかも1円で売ってたりする。数学好きの人は「ホワイトライト」を読むべし。


交配と突然変異

この本を読んで一番感心したのは、交配と突然変異によってロボットを進化させるという点だった。原書が書かれたのは1982年。今でこそ AI に遺伝的アルゴリズムを採り入れるのは一般的に行われているようだが、この当時としては斬新だったのではないだろうか。



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