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盛岡三大麺と世界の麺を比べてみた

結論

 暑い夏いや寒い冬も食べたくなる盛岡三大麺


 今回は、盛岡市の麺文化について話します。岩手県中部にある県庁所在地の盛岡市には、「盛岡三大麺」と呼ばれる麺料理があり、わんこそば、盛岡冷麺、盛岡じゃじゃ麺です。暑い夏で食欲が落ちても食べたくなる料理でした。
 盛岡市は、2023年、ニューヨークタイムズの「2023年に行くべき52ヶ所」に選ばれました。東京から新幹線で最速2時間半で行くことのできる盛岡市。中心市街地には、盛岡城址や赤レンガ造りの旧盛岡銀行本店など歴史的建造物、北上川など自然が共存していること、カフェや独自の麺料理など独自の文化が楽しめることが評価を受けました。

岩手銀行
北上川から岩手山を望む

なぜ、盛岡で麺料理が発展したのか?

 盛岡で麺料理が発展した理由は、気候が大きく影響していると考えられます。岩手県は緯度が高いため、全県気温が低く、稲作に向いておりませんでした。その結果、ヒエなどの雑穀や小麦、蕎麦の栽培が盛んでした。そのため、粉を使った麺が発展しやすい環境でした。
 しかし、現在では温暖化や品種改良により冷害に強い品種が誕生し、全国有数の米の産地になっています。

わんこそば

 岩手県の名物といえば、わんこそば。岩手県には、「わんこきょうだい」というゆるキャラが存在します。わんこきょうだいは、5人兄弟。顔は漆器をモチーフにしており、漆器の中身に各地方の名産が詰められています。蕎麦の入った「そばっち」、アワなどの穀物の入った「こくっち」、豆腐の入った「とふっち」、ずんだ餅の入った「おもっち」、ウニの入った「うにっち」がメンバーで、リーダーのような存在はそばっちです。2019年のラグビーワールドカップでは、釜石市が試合会場に選ばれ、ラグビーのユニフォームを着たそばっちが現れました。
 同じわんこそばでも、県内各地で提供方法が異なります。しかし、わんこそばは、おもてなし料理であり、バラエティ豊富な薬味で味の変化などを楽しむことができるのは共通です。
 盛岡、花巻では、「はい、じゃんじゃん。はい、どんどん。」という掛け声とともに、お椀に一口大の蕎麦が提供され、食べきるたびに素早く盛られます。ゆでたての蕎麦を素早く食べるための工夫です。フタを被せるまで止まりません。何杯食べられたか競うというレース性は観光化によってもたらされました。
 一方、平泉では、あらかじめお椀に盛られており、自分のペースで味わうことができます。
 写真は平泉のわんこそば。蕎麦と薬味による味の変化を楽しみながら、味わって食べられます。詳しくは下の記事をお読みください。

わんこそば

そば処 義家
営業時間 10:30〜15:30
定休日  不定休
アクセス JR平泉駅から徒歩25分

盛岡じゃじゃ麺

 1953年創業の白龍パイロンが発祥。満州から引き揚げた創業者が満州で食べた麺料理をもとにして、盛岡に住んでいる方々の口に合うようにアレンジしました。盛岡城の周りで屋台を出し、提供したのが、盛岡じゃじゃ麺。地元の方々に好評となり、盛岡市内に広まりました。
 今回は、盛岡市の中心市街地、大通にある「盛岡じゃじゃ麺 あきを」で盛岡じゃじゃ麺を食べました。麺は柔らかい平打ち麺で柔らかいうどんでした。ごまをふんだんに投入し、甘めの味付けがされた肉味噌。肉味噌は色が濃く、見た目では分からないほど、具沢山です。しかし、見た目の色ほど濃い味付けではありません。トッピングに、ネギ、生姜、きゅうりが盛りつけられています。油そばのように、ラー油や酢をかけてよく混ぜてから食べるスタイルでした。
 〆に、麺の茹で汁と卵を加えて鶏卵湯チータンタンという玉子スープにするのが盛岡流です。肉味噌がスープの味の決め手になりますので、完食せず、一口残すことがポイントです。チータンタンは、優しい味わいでした。
 一つの料理で2度楽しめ、やみつきになる料理でした。

盛岡じゃじゃ麺
〆のチータンタン

盛岡じゃじゃ麺 あきを
営業時間 11:00〜27:00(金、土~29:00、日~25:00)
定休日  年中無休
アクセス JR盛岡駅から徒歩15分

台北で食べた炸醤麺

 盛岡じゃじゃ麺のモデルは山東省の家庭料理「炸醤麺ジャージャーメン。台北の食堂で食べました。台北で食べた炸醤麺と盛岡じゃじゃ麺との大きな違いは、肉味噌台北の炸醤麺の肉味噌は八角が効いており、豚バラ肉がゴロゴロ入っています。茹でもやし、きゅうりも添えた一品で、盛岡じゃじゃ麺と同じく、よく混ぜてからいただきます。
 麺は、盛岡のじゃじゃ麺と同様にコシが弱く、ひやむぎに近かったです。
 最後にスープで割るという文化はありません。

盛岡冷麺

 1954年、盛岡市で開業した食道園が発祥。創業者は朝鮮半島北東部にある咸興市ハムフンシ出身。疎開先の盛岡で朝鮮料理店を開き、故郷で食べた成興冷麺をメニューに入れました。しかし、そば粉を使ったコシの強すぎる麺が不評でした。戦後、上京して韓国料理店で働いたときに出会った半透明の麺を参考に、そば粉を小麦粉に変えて重曹を加えてコシを弱めました。地元の芸術家の間で広まって、盛岡で冷麺を提供するお店が増えました。
 今回は、盛岡駅ビル、フェザンにある明明舎で食べました。麺は、麺のコシ、弾力が強かったです。スープは牛骨や鶏肉でとっており、さっぱりしていました。キムチは辛味より酸味のほうが強く感じられ、辛さは強調されてません。辛さを調整できるのも盛岡冷麺の特徴です。フルーツは、季節によって異なり、夏はスイカでした。冬はリンゴに変わるようです。
 キムチの辛味、酸味、フルーツの甘味、スープの塩味のバランスが調和している盛岡冷麺。さっぱり食べられ、夏でも食がすすみます。

ミニ冷麺 880円

明明舎
営業時間 10:00〜22:00
定休日  盛岡駅ビル、フェザンに準ずる
アクセス JR盛岡駅直結

平壌冷麺と成興冷麺

 冷麺は朝鮮半島北部で誕生し、西と東で平壌冷麺と成興冷麺という2種類あります。冷麺は元々、厳しい寒さの中、オンドルという床暖を入れて、暖かい部屋で食べられていました。朝鮮戦争のときに南部へ広まり、年中食べられるようになりました。
 平壌冷麺は、そば粉、緑豆粉を使用し黒っぽく太い麺が特徴です。牛肉、キジでとったコクのある冷たいスープ。水キムチ(米のとぎ汁などを合わせた漬け汁に大根や白菜などを入れて作る漬物)、梨、牛肉が主なトッピングです。
 一方、咸興冷麺は、ジャガイモ、トウモロコシ、ドングリなどのデンプンでできており、白っぽく細い麺が特徴です。平壌冷麺より強いコシ、弾力を感じます。スープはなく、コチュジャン、ニンニクなどを加えた甘辛い唐辛子タレがかかっており、よく混ぜていただきます。トッピングには、ゆで卵からエイの刺身という珍しいものもあります。まぜそばに近く、日本でも「ビビン麺」として焼肉店でも見られます。
 麺は、平壌冷麺も咸興冷麺も、生地をところてんのように押し出してそのまま熱湯に入れてゆでられます。
 盛岡冷麺は、平壌冷麺と咸興冷麺をミックスさせた麺料理という印象を打うけました。スープは平壌冷麺に近く、麺は咸興冷麺に近いです。

オーストラリア滞在中に食べた平壌冷麵

 今回は、盛岡に伝わる3つの麺料理を紹介しました。わんこそばは、おもてなし料理、盛岡じゃじゃ麺、盛岡冷麺は故郷の味を再現しています。盛岡の暑い夏でも寒い冬でも楽しめる麺料理だと食べて感じました。

参考文献

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