料理の日本史〜 オムライス、フライ、スパゲティ編
結論
海外の食文化を日本人の味覚に合わせた結果、独自の進化を遂げ、定番と言われるまでに定着した。
みなさんは、歴史と聴いて何を思い浮かべるのでしょうか?源平合戦、豊臣秀吉が天下統一するまでのストーリーなどを思い浮かべるでしょう。
実は、料理にも歴史があるのです。
今回は、125年もの営業を続けて現在の洋食の歴史を作った「煉瓦亭」と戦後、日本のスパゲティ料理を確立させた「壁の穴」に行って日本の料理の歴史を学びました。
煉瓦亭
銀座三丁目にあるレンガ造りの建物が煉瓦亭。内装もレンガが観られ、レトロでも新しさを感じさせます。横浜でフランス料理の修行をしていた創業者が1898年に創業。煉瓦亭が発祥と言われている料理は、カツレツ、フライ、オムライスです。
カツレツ、フライの歴史
カツレツのモデルは、フランス料理の仔牛のコートレット。粉、卵、粒の細かいパン粉をつけて仔牛の肉を揚げ焼きにした料理。こってりとした仔牛の脂と粉が油を吸ってしまい、油の切れが悪いためか、当時は、脂っこくてしつこいと不評でした。改良のため、天ぷらを参考に、たっぷりの油の中に入れて揚げきるという手法と牛肉よりあっさりした豚肉に変更しました。この改良により、油の切れも改善され、日本人の舌に合う揚げ物に進化しました。これを「ポークカツレツ」として1900年、発売。
ちなみに、発売当初の付け合せは温野菜でした。しかし、日露戦争の徴兵により人手不足になり、手軽にできる千切りキャベツに変更しました。ポークカツレツはパン、ライスを選べるようにし、ナイフ、フォークで食べるという現在のステーキ屋さんで観られるスタイルで提供されていました。
ポークカツレツの開発の後、色々な食材をパン粉で揚げてみました。その結果、エビ、ハンバーグ、カキが特に美味しかったことがわかり、2年の間に新メニューとして登場しました。それが現在のエビフライ、メンチカツ、カキフライです。カニ、タイラガイも挑戦しました。現在、ポークカツレツ、エビフライ、メンチカツは通年、カキフライは、冬季限定で販売されています。
オムライスの歴史
オムライスは、まかないが誕生のきっかけです。オムレツにライスを入れたものがオムライスの原型。最近のトレンドのオムレツを日本で一般的なイメージのあるチキンライス(世界のチキンライスは関連記事参照)を乗せたものでも、チキンライスを薄い卵焼きで包んだものとも違います。
当時のオムライスは、玉ねぎ、合いびき肉を炒めて味付けしてからご飯、マッシュルーム、グリンピースと一緒に溶き卵の中に混ぜて焼き固めたもの。オムライスは、ご飯とおかずを混ぜた料理。料理人は、片手でスプーンを使って食べながら片手で鍋を振るなど調理していました。1902年に「ライスオムレツ」としてメニューに登場しました。現在は「元祖オムライス」として販売されています。
実際に食べてきた
今回は、元祖オムライスを注文しました。当時と比較すると、グリーンピースがないなど、若干変化してます。内側の卵がふわりとした半熟卵です。卵も混ぜ込みタイプで具材はマッシュルーム、牛ひき肉のみとシンプル。醤油、砂糖で味付けされたライス。ライスは甘みも感じます。バターをたっぷり使用しているからか、バターの香りが漂います。赤いケチャップと一緒に食べると、ケチャップの酸味が加わって味が変化します。
ちなみに、煉瓦亭ではラインポイントサービスもやられており、来店1回で1ポイント入ります。50ポイント貯めると、極秘メニューが堪能できます。期限はありませんが、それを楽しみに銀座に通う必要があります。登録すれば7ポイントつくという裏技を駆使しても高嶺の花です。
煉瓦亭
営業時間 11:15~15:00、17:30〜21:00
定休日 日曜日
アクセス 東京メトロ銀座線銀座駅から徒歩3分
壁の穴
1953年、戦後の占領期にアメリカ中央情報局(CIA)東京支局長ポール・ブルームの執事を務めていた成松孝安さんが創業。壁の穴は、たらこ、あさり、納豆など和風スパゲティのパイオニア。当時、イタリア料理はなじみが薄い存在で東京でも帝国ホテルなど数店しか提供されてませんでした。
当時のスパゲティはGHQが大量のケチャップとともに持ちこみ、横浜で誕生したナポリタンが主流。ナポリタンはあらかじめ茹でたスパゲティをトマトケチャップと一緒に炒めた料理で大量に作ることができるため、アメリカ進駐軍のミリタリー食として活躍しました。しかし、イタリアでは昔から茹でたての麺を食べていました。茹でておいたパスタはもちもちでうどんのような食感であるのに対し、茹でたてのスパゲティは、コシ、歯ごたえを感じます。この状態をアルデンテと呼び、日本にアルデンテを広めたお店でもあります。
イタリアと日本では気候、文化、味覚の好みなど違うため、イタリアのレシピのまま作っても美味しいパスタを作ることができないいう考えから、イタリア仕込みの作り方ではなく、日本人の味覚に合わせて改良しました。
さらに、お客さんとのコミュニケーションを大事にしました。スパゲティを茹でている間、お客さんと会話して、リクエストに応えたり、お客さんが持ち込んだ食材から、ヒントを得て新たなソースを開発しました。これが、和風スパゲティ誕生のきっかけになります。
和風スパゲティのパイオニア
たらこパスタ誕生のきっかけは、キャビアのビン詰めを交響曲団でホルンを勤めていた客が持ってきて、キャビアをのせてほしいとパスタをリクエストされたこと。キャビアは世界三大珍味の1つで、高価なキャビアのため、同じ魚卵で入手しやすいたらこを乗せて誕生しました。
あさりパスタは、アサリのスープで米を炊き込んだ深川めしがルーツです。
納豆パスタは、福島県磐梯のスキー場の支配人時代に、高松宮様が訪れ、納豆ご飯を召し上がっているのを見て、ひらめきました。
実際に食べてきた
今回は、あさりパスタを注文しました。あさりのパスタといえば、ボンゴレビアンコをイメージしていました。しかし、壁の穴のあさりパスタは、ボンゴレビアンコとは違いました。殻付きではなく剥きあさりを使用。塩味で炊き上げているため、アサリのソースが濃く感じます。和風スパゲティのトッピングに使用される海苔。パスタのベースは、ニンニクと生姜で選ぶことができます。ニンニクの方が、本場の味に近い味です。
おトクなセットメニューもあります。追加料金で前菜、ドルチェ(スイーツ)、ドリンクを選べるセットメニュー。全部付きは税込1078円。通常で頼むと1500円を超えるため、お得です。今回は、生ハムのサラダ、ティラミス、フレーバーティをつけました。コーヒーを強く感じず、マスカルポーネでしっかり包み込まれいる感じがしました。
壁の穴 渋谷道玄坂小路本店
営業時間 11:30~22:00(月〜木)
11:30~22:30(金、土、祝前日)
11:00~22:00(日)
定休日 12月31日、1月1日
アクセス JR渋谷駅ハチ公口から徒歩4分
昭和の時代は本場の味を受け入れ難かったため、日本人の口に合うように合わせていた料理。
令和の時代は、グローバル化が戻り、海外への往来が増え、現地の味をほぼ変えずに出すお店が増えました。郷には郷の時代から、多様性を意識した時代に変化しつつあると料理の歴史を調べた結果、感じました。
まとめ
銀座にある煉瓦亭。カツレツ、フライ、オムライスの発祥のお店。カツレツはフランス料理の仔牛のコートレットを日本人の味覚に合わせた結果誕生。カツレツのバリエーションを増やした料理がフライ料理。一方、オムライスは、まかないとして誕生。
渋谷に本店がある壁の穴。日本のイタリア料理のパイオニアでもあり、たらこ、あさり、納豆など和風スパゲティのパイオニアでもある。和風スパゲティは、お客さんとのコミュニケーション、過去の経験から誕生。
海外文化を日本流に合わせて新しい料理が次々と誕生。
参考文献
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