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仕事の失敗から目を背けるな。ただのデータと捉えれば良い点も見つかる?

「失敗」

この言葉を聞いてどんなイメージが浮かびますか?

絶対にしたくない、落ち込む、嫌……
ネガティブなイメージが付きものかと思います。いままさに仕事で失敗をして、この記事にたどり着いた人もいるかもしれません。

でも、失敗と向き合えば向き合うほど失敗ルートを避けられると聞いたらどうでしょう?

失敗は目の前にすると落ち込みますが、実はよく観察すると次のしくじりを避けられるヒントの宝庫です。そのためにも重要なのが、失敗を「ただの出来事」として捉えること。次に活きる点や良かったポイントが見えるようになり、結果として心も軽くなります。

とはいえ、いきなり失敗に目を向けるのはなかなか難しいですよね。そこで今回は、弊社CMO・黒上に失敗の捉え方や活かし方をインタビューしました。

「成功も失敗も平等」「失敗はただのデータ!」という黒上。そう考えるようになった過去の試行錯誤や最大の失敗も聞きました。


黒上 洋甫(くろかみ ようすけ)

1987年生まれ。 2010年に立命館アジア太平洋大学を卒業後、広告代理店や海外ゲームデベロッパーにてグローバルマーケティングに従事。日本におけるアプリディベロッパーの海外展開のサポートをしながら、インバウンドと アウトバウンドの広告運用部隊の統括を担当し海外との関わりを強める。その後ドイツ企業でのカントリーマネージャーなどを経て、2023年にテクロ株式会社のCMOに就任。主にマーケティングとセールスを担当している。

▼弊社の過去の大失敗はこちら
「【マーケ失敗談】タクシー広告に数百万かけたけど大赤字に終わった話」

誰もがしたくない「失敗」。それは想定と著しく離れた結果のこと

誰だって仕事で失敗することは避けたいですよね。ただどこからどこまで、何を失敗と定義するかは人それぞれ。そこでまずは何が失敗になるのか?を聞きました。

BtoCからBtoBまで幅広くマーケティングを担当してきたCMO・黒上

池内:まずは黒上さんの自己紹介をお願いします。

黒上:テクロ株式会社 CMOの黒上です。もともと10年近くゲームやエンターテインメントなどBtoCのマーケティングに従事しており、数年前の前職への転職を機にBtoBも担当するようになりました。

池内:過去にモバイルゲームの海外展開を担当していたと聞きましたが、具体的にどんな業務でしたか?

黒上:日本と中国、各社のゲームの海外展開における広告戦略の立案ですね。プランニングに付随してイベントや広告のクリエイティブなど、細部まで提案することもありました。

池内:現在の業務に近い部分もありそうですね。黒上さんは仕事はもちろん、プライベートでDJをするなど器用なイメージですが、昔から何でも卒なくこなすタイプですか?失敗も多いタイプですか?

黒上:今回のテーマにも通じますが、出来事を失敗と捉えないタイプなので、多くないほうだとは感じています。周りから見たらわからないですけれどね(笑)

落ち込むより前を向いたほうが良いと感じた20代

池内:失敗と捉えないようになったのはいつですか?

黒上:20代後半かな。モバイルゲームの海外展開が未知の領域すぎて、手探りで進めることも多くて。そこで「失敗で落ち込まなくて良い」と思えたんです。

池内:失敗で落ち込まなくて良い?

黒上:各国の人気ゲームやアプリなどはデータとして手に入るものの、基本的に「これはこうだろう」という推測ベースで進めるしかなかった。その先は自分で目星をつけてテストして……をくり返すしかない。そこでまず仮説を立てて実践し、違ったらまた仮説を立てる重要性を学びました。

池内:試行錯誤の数が多そうですね。

黒上:ほとんどがいわゆる失敗に終わりましたけれどね(笑)ただそのときに落ち込むよりも「これは違ったから次はこうかもしれない」と、結果と想定の間で異なったポイントを考えることが大事だと気付きました。

池内:切り替えが早い。

黒上:当時は「落ち込んで次のことを考えていないほうがもったいない」と思ったんですよね。時間は有限で平等なので「あれしたい」「これしたい」と次の一手を考えるほうが楽しい。今思えば一種の現実逃避だった可能性もありますが(笑)

池内:でも、そのほうが前を向けそうですね。

黒上:いろいろな経験を経て失敗とは「想定した結果に著しく結びつかないこと」と捉えるようになりました。マーケティングの仕事は事前に仮説を立てて施策を実施し、効果検証することがほとんど。だから施策がうまくいかない、数値が伸びないと「失敗した!」と考えてしまいがちですが、僕は「想定した結果と違うという事実があるだけ」と捉えています。

池内:事実……

黒上:失敗というよりは仮説と異なる部分を探すための「次に活かすデータ」くらいの感覚ですね。

CMOでも仕事の大失敗エピソードはある?失敗事例から学ぶ重要性を理解した瞬間

20代のときに仕事を手探りで進める内に、失敗の捉え方のベースを作り上げた黒上さん。そんな人生での大きな失敗は割と最近で、数年前に在籍していた別の会社での広告運用の業務だそうです。

仕事の大失敗エピソードはCPA15万円事件

池内:人生最大の失敗ってありますか?

黒上:CPA15万円事件ですね。

池内:CPAって広告運用で1つの顧客獲得にかかった費用のことですよね。それはいつですか?

黒上:数年前、別の会社のマーケティング部で働いていた頃の話です。その頃既存のマーケティング施策に頭打ちを感じており、そろそろ新しい方法を試さないと……と思い、新しい媒体に広告を出稿することにしたんです。

池内:ほうほう。

黒上:1カ月くらい広告を運用して、その出稿期間、会社名をダイレクトに検索される「指名検索」は増えました。さらに検索流入からの資料請求や問い合わせといった「CV(コンバージョン)」も増えて。

池内:めちゃくちゃ良いじゃないですか。

黒上:でもそうやって会社を知る人は増えたけれど、その後をサポートするWeb上のフローを確立できていなかったんです。

池内:と、言いますと?

黒上:指名検索をする人は増えたけれど、数値の成果としてはその期間にアポや商談まで繋げることはできませんでした。でもそれは、僕らが広告から自社サイトを訪問したお客さんが相談を予約するといった、次に繋がる動線を用意していなかったから。

池内:検索しただけで終わっちゃった。

黒上:つまり、仮説の中で一番大事な顧客の流れを描けていなかったんです。これが一番の原因だったと思います。

池内:もったいない……!

黒上:結果としてCVが2件発生したのみ、運用費用が30万円。1件あたりのリードを獲得するのに15万円かかっているから、「CPA15万円事件」と呼んでいる(笑)

池内:広告運用の平均は3万円くらいですよね。大変だ……

黒上:でも「広告から会社名を知り、検索する」という顧客のフローに気付くことはできた。これは挑戦したからこそ得られたもので、次に活かせる発見だったと思っています。

大失敗を経て物事を多面的に捉える重要性を学んだ

池内:先ほどのCPA15万円事件からどんな学びがありますか?

黒上:改めて「一般的にこうであるから」という理由で、見るべき数値を限定しないことが大事だと感じました。つい理想を描いてしまいますが、お客さんは僕らがイメージするカスタマージャーニー通りに進むとは限らないんですよね。

SEO記事から自社メディアに流入してホワイトペーパーをダウンロードし、メルマガでナーチャリングされてアポや商談に……といったきれいな流れで進むことのほうが少ない

黒上:ホワイトペーパーをダウンロードした後にウェビナーに複数回参加するかもしれないし、メルマガを数カ月読んだ後にまたウェビナーやお役立ち資料を見て、時間が経ってからアポを受けてくれるかもしれない。実際のカスタマージャーニーはもっと複雑で、グネグネしている。

池内:ここは私たちが完璧に読むことも、コントロールすることもできませんよね。

黒上:もちろんアポ数や商談数といったKPIを立てているなら達成しなければならないですが……数値が順調に伸びていても、内容としてうまくいっているかどうかまでは読み解けないんじゃねえの?と考えています。

池内:数値だけでは施策の良し悪しを判断できない?

黒上:例えば「問い合わせを増やすためにオウンドメディアを運用し、まず1万PVと5CVを目指す」なら、1万PVと5CVが数値目標になります。

池内:うんうん。

黒上:ただそこまでの過程である「メディアやホワイトペーパーを何度か見てウェビナーに参加してくれるようになった」といった出来事は、1万PVや5CVという数値のみ追っていると見えませんよね。

池内:そのウェビナー参加はKPIではないけれど、悪いことではないですよね。

黒上:反対にアポはKPI通りに取れているけれど、ウェビナーに人がまったく来てくれなくなったとする。その場合、数値目標のために無理やりアポを取ったり、自分たちのサービスがハマらないお客さんにまで声をかけたりしている可能性もある。それって良いの?と。

池内:目標は達成していても成約には繋がらなさそう……。

黒上:「今は売り上げが欲しいからアポが取れたら良い」と思うかもしれないけれど、近い将来、現場の担当者やブランディング目線で見たときに「自社のサービスがハマらないお客さんが多いこと」が良いのか悪いのか。

池内:将来的に大きな失敗になる可能性もありますね。

黒上:こういう中身は数値だけを追っているとわからない。だから1つの事象に対して、特定の面だけではなく複数の角度から見て分析することが大事ですね。

仕事での失敗という出来事はただのデータだと捉える

池内:ここまでをまとめると、黒上さんはずっと失敗を失敗と捉えず、しっかりと分析して学びを得ている印象があります。

黒上:それは「成功も失敗も等しく’’データ(事象)’’であり、種別が違うだけ」と考えているからですね。

池内:種別が違うだけ?

黒上:成功・失敗はその人の主観であり、そのときのタイミングや人など外的要因で変わるもの。その出来事を別の人が見たときに、同じように判断するとは限らない。だから目の前の出来事が成功か失敗か、その判断ってマジで意味ないと思うんですよ。

池内:時間が経ってから見たときに成功だと思っていたことが「あれ?失敗だったな」と感じることもありますもんね。

黒上:一方で「この施策を試してリードが何件増えた」という数値はいつ見ても変わりません。

池内:それは5年後でも10年後でも同じ事実ですね。

黒上:だったら、結果をただのデータとして捉えてその事象から次の一手を考えるほうが建設的。特にマーケティングで「成功しそう」「失敗しそう」と考えることにはマジで意味がないと思っている。

池内:「マジで意味がない」というのは、考えるよりやったほうが良い?

黒上:というよりは、マーケティングはデータを社内に集め、蓄積していく部署だから「いまこういう裏付けを取りたいから、あの施策をやってみたい」と考えたほうが良い、という感覚かな。

池内:仮説を立てて、検証する場として使う感覚ですね。

黒上:そもそも成功・失敗は平等なんですよ。だから、失敗から目を背けるなと言いたい。失敗は辛いものではなくて、ただのデータ。そのときの状況や条件など、対外要因で変わっていくことがある。だからまずデータや事象として捉える。それが失敗と向き合う第一歩かな、と。

仕事の大失敗は怖くない。失敗事例から学んでゲームオーバーを防ごう

最後に、失敗に落ち込んでしまう人に向けてエールをもらいました。

失敗しても良かったポイントを探せば良い

池内:ここまでの話を聞いて、物事の見方・捉え方を意識することが大事だと感じました。とはいえ、自分が想像していた結果と違う事象が起きたときに「失敗した……」と落ち込んでしまう人は多いと思うんです。そういう人が気持ちを切り替え、前を向くためのアドバイスはありますか?

黒上:まず、失敗を怖がることは止められません。失敗はしても良いので「その失敗の中でも良かったポイント」を探してみましょう。

池内:良かったポイント?

黒上:施策の中で100%すべてが失敗であることは少ない。マーケティングであれば特に、施策の数値や流れを確認して良かったポイントを探してみる。そうすると、想定外や意外な部分で成功していることもあるんです。

池内:ひとつの面から見たら失敗でも、見方を変えると成功になることはありそうですね。

黒上:だからまずは、失敗だと感じる出来事にじっくり目を向けてみてください。そうやって一つひとつの結果に良いところを見つければ、捉え方も変わっていくかもしれません。

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ゲームのように楽しむ気持ちで失敗ルートを知っておこう

黒上:そもそも、マーケティングの世界は失敗が多いんですよ。

池内:それは仮説を立てて検証する業務だから?

黒上:そう。みんなスタート地点は同じだけれど、試行錯誤する中で徐々にルートが分岐していく。無限に枝分かれする選択肢から自分が進む道を選ぶ作業をくり返して、その選択の結果として最後に成功か失敗か決まるイメージです。

池内:RPGゲームみたい。

黒上:自分の選ぶルートによってはゲームオーバーになる可能性もあるけれど、「こうすると集客できない」「これは想定していた流れと違うものになる」など、失敗と定義されるものを知っていれば、今の自分にとって選んではいけないルートは避けられる。

池内:最悪の事態は防げそうですね。

黒上:そういう意味で、成功事例よりは失敗事例を知ることをおすすめします。成功はそのときの状況や人に左右されるから、実は再現性があまり高くない。一方で失敗は成功に比べると原因やパターンも決まっているから、内容を知れば防ぐことはできるんです。

池内:良い考え方ですね。

黒上:まあ、失敗・成功とかあまり考えていないから、何かをやらかしても笑えるんですよ。僕、データの異常値が大好きなんです。

池内:え……?(なんかよくわかんないこと言い出した……)

黒上:異常が出るということは、想定していないことが起きている訳ですよね。

池内:ワクワクする感じですか……?(笑)

黒上:そうそう。「この施策もやっぱりこんな感じかあ」より「なんか起きてる!!!」のほうが楽しくないですか(笑)実際に過去の失敗と言われる出来事でもそう考えていました。

池内:そっちのほうが客観的視点を持って生きられそうだから、大事な気がしますね。私もデータの異常さにワクワクできるよう、頑張ります!(笑)

まとめ

今回はCMO・黒上に「失敗から目を背けない重要性」を聞きました。

失敗は怖いですが、悪いものではありません。ただのデータであり、じっくり観察すれば良かったポイントも見つかるかもしれない。

そもそも失敗しても良くて、そこから目を背けずに学びを見つける、心の持ち方が大事なのだと感じました。

黒上のようにデータの異常値にワクワクできるかはわかりませんが(笑)事象として捉え続けるとそこまで強くなれるのかもしれない……!と勇気が出たインタビューでした。


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