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ウェアラブルデータ解析とその未来を覗いてみた

テックドクターは『データで”調子”をよくする時代へ』を理念にした会社ですが、『データで”調子”をよくする』って一体どうやって
ウェアラブルデバイスから取れるデータの解析方法は?

社内イベントの解析結果やプロセスを通じて、そんな疑問に少しでもお答えしようというのがこの記事。

ぜひご覧ください。


今回はデータの解析結果の面白さを競う社内イベントで見事優勝を勝ち取った現役東大インターン生Fさんにインタビュー。
社内イベントのプロセスや解析結果を通じて、テックドクターで普段行っている解析業務のイメージやバイタルデータ分析の可能性が少しでもお伝えできれば嬉しいです!!
※今回の取り組みでは、特定の社員のデータを本人の合意のもとで解析しています。

Q1どんな分析からどんな結果が出たのでしょうか?


①コロナ感染時の心拍分析

ーー医学論文で発表された事象もキャッチ

Fさん:体温が上昇した場合、心拍数も増加することが普通です。
しかし、高熱にもかかわらず心拍数が増加しない「比較的徐脈」という事象があります。この事象はコロナ感染者に見られることがあると言われているのですが、コロナウイルスが爆発的に広がった今でもメカニズムは解明されていません。今回はこの比較的徐脈と思われる状態をとらえることに成功しました。研究事例が多くない領域であるコロナをテーマにすれば、何か新しい発見があるのではないかと考えコロナ時の心拍数データの分析を始めましたが、今回の事例は、ウェアラブルデバイスによって取れるデータの有用性をよく示していると思います。これまでバイタルデータは、病院や研究機関にわざわざ出向かなければ取得できないデータでした。

しかし、ウェアラブルデバイスはこれまでより圧倒的に手軽に、24時間365日のバイタルデータ追跡を可能にします。

ウェアラブルデバイスの「手軽さ」「取れる情報量の多さ」から
「症状の個人差」をとらえ、個人に合った対応策を提供できる
研究効率アップ
・コスト削減
といった未来が見えてくるのです。
  


②毎日のストレスの原因を発見

Fさん:Googleカレンダーとウェアラブルデバイスから取得できるバイタルデータを照らし合わせることで、「予定ごとのストレスを可視化」しました。

上の画像は、今回の解析に協力していただいた社員さんの実際のデータです。
社内の人と会議を行う際には比較的リラックスしているのに対して、社外の人への営業の際は緊張度が高いことが分かります。


毎日のストレスの原因がわかることによって、今後様々な課題を解決していけると思います。たとえば「健康経営」「メンタルヘルス対策」などです。

「ストレスの原因が分からない人」、「ストレスの原因がわかっていても言えなくて限界まで頑張ってしまう人 」は多いかもしれません。ストレスをデータで捉えれらるようになれば、頑張る人たちの毎日をサポートできるようになると私は考えます。


③精度85%:飲酒の有無もウェアラブルで分かる


Fさん:「飲酒の有無」を85%という高い精度で予測することにも成功しました。
対象者の1か月の心拍データをつかい、「実際にお酒を飲んだか飲んでいないか」を機械学習から推測するモデルを作ったんです。

緑:正常
オレンジ:飲酒可能性が高い
赤:飲酒可能性が非常に高い
灰色:データ未取得

飲酒の有無だけではなく「飲酒量」に関してもある程度予測していけると思います。医学論文で取り扱われるような専門的な事象だけでなく、飲酒のように、生活に即した身近なことについても予測していけるんだと思うと、なんだか親近感がわきますよね。


Q2 ウェアラブルデバイスからとれるデータでどんなことが出来るようになる?


「個人にあった情報で、マイナスを埋めるだけでなくプラスを作る」

Fさん:解析できたデータの応用方法はたくさんあると思いますが、まず考えられるのは「予防医療」です。

個人のバイタルデータを追跡できるようになるため、病気を未然に防げる可能性が上がります。また病気にかかっても、「個人ごとの症状の傾向」が今までよりも手軽に見つかるようになり、よりよい対処をしていけるようになるでしょう。
また、健康体の人がより良い心と体の状態で毎日を過ごす手助けにもなります。健康習慣に関する情報は世の中にあふれていますが、そうした一般的なアドバイスではなく、個人のデータをもとにした、その人のためだけの「オーダーメイドの健康アドバイス」が手に入るようになります。
これまでの医療はマイナスを埋めるものでした。しかし、今後はそれだけにとどまらず、人々をウェルビーイングへと導ける、プラスを創出する時代になっていくかもしれません。


 「新しいことが見つかりやすく、コストも削減」

Fさん:バイタルデータはこれまでは、病院や検査機関に行かなければ取れなかったデータです。
しかし、ウェアラブルデバイスの登場により、以前より圧倒的に手軽にバイタルデータを追跡することが可能になりました。

わざわざ足を運んでもらう必要もなく、大量の情報が手に入るようになったことで、新しい発見ができる可能性が上がると思います。
またウェアラブルデバイスの登場は、研究の効率化に影響し、研究コスト削減にもつながると考えています。


「サービスの満足度を効率的にあげられるかも」

Fさん:一般的にプロダクトやサービスが作られる場面を考えてみると、これまでは満足度を向上させるためにどんなサービスを作ればいいか、「手段」をベースにして考えていました。
しかし、リラックス度や緊張度が心拍によって測れるようになることで、そもそも人は何に幸せ(効用)を得るのかという「根本の部分」が分かるようになるんです。
それによって、商品の考案過程がスムーズになり、商品の質自体の向上に繋がる可能性もあります。例えば、海外の映画館ではカメラ映像から見ている人の感情を把握する技術があるのですが、これに近いことがウェアラブルデバイスでできるのではないでしょうか。


Q3 テックドクターの分析プロセスの特徴は何ですか。


Fさん:テックドクターではたくさんの工夫をしています。


「いろいろなデータと照合、新たな意味づけ・新たな利用法」

Fさん:テックドクターでは、アンケートデータなどとバイタルデータを繋げ、たくさんのことに応用していける可能性のある分析結果を生み出しています。 例えば、1日の行動や気持ちなどの主観情報をアンケートでとり、そのタイミングで体にどんな変化が起きていたかをバイタルデータで見るといったことをしています。

2つ目の分析結果、「カレンダーの予定とバイタルデータの変化を照らし合わせて、予定ごとのストレスを可視化した」分析もその一つです。Googleカレンダーと心拍データってかけ離れて見えますが、一見かけ離れたデータと組み合わせて生体情報を見ていくと結構面白いんです。僕は中学二年生から今にかけて、Googlemapを使って移動履歴を見て遊んでいたりしていたのですが、移動履歴と生体情報を組み合わせて見ていったらおもしろいのではないかと思っていました。さすがに社内の先輩の位置情報を追跡するわけにはいかなかったので実現できなかったのですが...(笑)そこから着想を得て、Googleカレンダーを使うというアイデアを思いつきました。

今後も新しい組み合わせアイデアから、さらに面白い解析結果が出していけるのではないかと思いますね。
テックドクターでのウェアラブルデータ分析は、ただ単純にその時々の健康状態を評価していくものではありません。

(※データを取得・利用する際には必ず本人の同意を得て、情報の取扱いに十分気を付けたうえで解析に利用しています。)

「主観/客観データを用いて個人の感覚にあった答えを出していく」

Fさん:「主観・客観データ両方」を用いています。ウェアラブルデータのみを使用した場合、実際の人の感覚とずれた分析結果が出されてしまうことがかなりあります。そのため、アンケートやヒアリングなどの主観データをつかって答え合わせをする必要性があるんです。
また、それによって「新しい物」が見えてくることもありますね。
  


「違和感のあるデータは原因を徹底的に調べる」

Fさん:ただ集めた結果を分析するだけでなく、違和感のあるものに関しては医学論文も徹底的に調べるようにしています。今回の研究結果の1つ目、コロナ発熱時の心拍数の結果に関しても、ふつうとは違ったデータの動きの正体を洗いざらい調べました。最終的に医学論文まで調べて、ようやくそれらしいものが見つかりました。データを見る人に対してデータを信用してもらうためにも、起きている事象の正体を明らかにするためにも、徹底的な調査は怠りません。
洗いざらい調べてもはっきりと分からないものも、仮説をたてておいておくようにしています。分からないことをそのままにすることはないですね。
データサイエンティストってキラキラしたイメージですけど、実は結構地道なんです(笑)



「顧客との共有も簡単スムーズ」

Fさん:テックドクターでは、Google Colab(正式名称「Colaboratory」)というツールを使用しています。
Google Colabを使うと環境構築のための手間と時間が減らせて、共同開発のハードルがぐっと下がります。高スペックPCもいらず、機械学習のプログラミングが可能です。コードチェックなどもコードの横にコメントを書くだけで、「シンプルかつ簡単」なので、営業・データチーム・顧客の方々との連携がスムーズに進みます。



Q4最後にテックドクターでデータサイエンティストとして働いていて感じることを教えてください


Fさん:ウェアラブルデバイスから取得したバイタルデータを、医学的観点から解析するテックドクターの事業は新しいものです。これまで取得が難しかったバイタルデータが届くので、新しい仮説を自分の手で無限に発見していける可能性があるんです。そういった点にワクワクしますね。
また、これからは以前にも増して様々なデータが扱われる時代になりますが、データの「社会への効果」を考えていくことが非常に重要だと思います。社会にとって良い方法でデータを使うことができれば、一人ではとても救えないほど数多くの人を救うことができます。たくさんのことを自分の手で発見できるかもしれない、その発見が多くの人を救っていくかもしれない、そういう可能性にやりがいと楽しさを感じます。


TechDoctorではウェアラブルデバイスデータを主軸に人々のバイタルデータを計測・可視化、さらには分析し、より健全な社会にしていくことを目指して調査・研究・サービス開発を進めております。
お問い合わせはコチラになります。「こんなことはできないか?」、「こういうサービスまたは研究をしたいんだけどサポートしてくれないか?」など、何なりとお申し付けください。


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