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就活失敗して頭に来たので独立したが就活の方が楽すぎて草ww⑱

「やったことない奴がいくら能書き垂れても、
 所詮、”井の中の蛙”なんだよな。」


脳裏に、その言葉が
何度もよぎる。


居酒屋のテレビに映る亀田次男のWBA世界タイトル敗戦に
野次を飛ばす連中を見ていて浮かんだ言葉。


時刻は朝7時。


中洲の古びれたオフィスビルの
4Fで行われている“秘密の会合”が
いよいよ始まる。


「本日、山田さんご招待の、
 カテゴリー映像制作の鳥部様
 皆様、盛大な拍手でお出迎え下さい。」


会議室の小部屋の扉一枚分のパーテーションをくぐると、
そこにはスーツで身を包んだ、年齢層も3~50代と様々な
事業者や経営者がこちらを見ている。


軽く会釈をすると、
山田さんが声をかけてきた。


「鳥部さんのお席はコチラですね。
ささ、ご紹介したい人がいますので、
 ぜひお越しくださいね。」


全体がコの字に敷き詰められた、
長机の中央には広いスペースがあり、
そこでは、他にも招待されていたビジターさんが
色んな事業者と名刺交換をしていた。


小魚を一匹放り込むと
腹を空かせて群がってくる魚がいる

水槽によく似た景色だ。


そこに、多分年齢が近いであろう
ブルーのスーツを着こなした、
好青年の方から声を掛けられた。


「ども、竹原です。
今日は早朝よりお越し頂き、
ありがとうございますー。」


気怠そうに挨拶をしてくる彼を
見ていると妙に親近感が湧いた。


「・・・あれ、この名刺、
俺、知ってる。一度会ってるよね?」


「多分そうやと思いますよ、
何処であったかは覚えてないですが、
このトークテンポはなんだか懐かしいですねw」


この竹原さんが幾人かの経営者を
紹介してくれた。


話しかけてくれた人は皆、
自分の目を見ながら、
傾聴をしてくれている。


多くの経営者に色んなことを尋ねられた。 

「鳥部さんの他社にない”魅力”って何ですか?」 

「最近されたお仕事ってどんな映像のお仕事があるんですか?」


部屋の隅々で、経営者や事業者が
ざっくばらんに話しているが、
案外目の前の人の話もちゃんと聞こえる。


“カクテルパーティー効果”だ。


人混みや雑踏の中でも、自分に関係があったり
興味があったりする”特定のキーワード”を
自然に聞きとることができる現象のことだ。

自分が昔から尾崎と一緒に仕事をしていく上で、
培って着たヒアリングやネットマーケティングの
知識に沿った内容は、よく聞き取れる。


人の話を傾聴しながらも、
180度全体に目線を移す。
相手の眉間あたりを見ながらも、
焦点は違う人に移す。


幾人かとのトークを経ている間、
部屋を見渡せば色んな人間がいる。


手を組んで手持ち無沙汰な人もいれば、
携帯でコソコソと話をしている人もいて、
欠伸をしている人もいる。


どうやら、同じ目的は持ち合わせていても
同じ目線や行動目標をコミットしている集団ではない。


そう思いながらも目の前の質問者に
丁寧に回答していた矢先、
アナウンスが聞こえた。


「それでは、次のセッションに移りますので、
 各自着席をお願いします。目の前の人とも、
 ぜひアイスブレイクをお願いします。」


そう言うと、積極的に握手を求められた。
有名人に求めて群がるような握手でもなければ、
感謝の延長にある握手でもない。


いわゆる、赤の他人同士の緊張をほぐす意味で
気さくな挨拶がてらの握手だった。


コの字の型の配列でコ←中央の席に着き、
しばらくすると動画が流れる。


<動画の内容>
・福岡の景色
・ビジネスのやり方を変える 
・何処ぞの映画のオーケストラシーンを 引っ張ってくる
・ビジネスのアンサンブル ・競合ではなく、協業する


「???」 

“出だしから何を伝えたいんやこの集団は?”


つい口に出してしまいそうだったので、
慌てて、目の前の自分の招待カードに目を落とし
意識をそらす。


手書きで丁寧に名前の文字が書かれてはいるが、
感謝の言葉はプリントアウトされたものだ。


すると、小綺麗に身だしなみを整えた、
好青年が中央スペースに出て、挨拶をする。


「皆さん、本日は”秘密の会合”に
ご参加頂き、誠にありがとうございます。


私はこのチャプター(組織)の
プレジデント(議長)を務めています。 
司会の亀田と申します。
どうぞ宜しくお願いします。」


客観視しながらも、何処か司会者から見える
主観的な目線も自分の頭の中で織り混ざり、
集団をあらゆる角度から見ていた。


時刻は7:10。


違う世界線への分岐点まで、
あと1時間弱。

2月の朝景色はまだ薄暗い。
時は刻々と進む。


続・・・・



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