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15秒で読める小説

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15秒で読める!140字創作小説
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2023年8月の記事一覧

【140字小説】孤独

【140字小説】孤独

心の檻で孤独を一匹飼っていた。
躾もしたし予防接種もしたけれど段々手に負えなくなってきた。
だから、遠くのお山に捨てたんだ。僕の元気があるうちに、少しでも遠くに。
翌朝玄関を開けると泥だらけの孤独がそこにいた。尻尾を振って嬉しそうに鳴いた。
…わかったよ。ずっとお前と生きてくよ。

【140字小説】はみ出し者の夜明け

【140字小説】はみ出し者の夜明け

真夜中、土砂降りの雨と激しい雷がこの町をゆっくり、時間をかけて通り過ぎた。
 きっと正しいお家では、家族達が集まって抱き合いながら正しい怯え方をしていたことだろう。
 朝、スッキリ晴れた青空がこの町を包んだ時、はみ出し者の僕が雷雨と共に消え去っていてもきっと誰一人気付きはしないんだ。

【140字小説】宗教法人・私

【140字小説】宗教法人・私

私という教祖が私という信者を導く、宗教法人・私

「お布施はいりませんよ。私に全く資産がない事、私は知ってますから」
「説法はいりませんよ。私に確固たる信念がない事、私は知ってますから」

私達は並んで神に祈った。
「神様、とりあえずお救い下さい」
週末は一緒にパワースポットを巡る予定。

【140字小説】繋がる縁(ロープだけに)

【140字小説】繋がる縁(ロープだけに)

「あっ」
ホムセンで良さげなロープに手を伸ばすと、丁度隣にいた死んだ目のおっさんと手が触れ合った。
「貴方も…このロープを?」
「ええ、首吊りに良さそうで…」
「奇遇ですね」
そこから意気投合。喫茶店で話し込んでカラオケ行ってまた会う約束をして帰った。
結局ロープは買わなかった。

【140字小説】欲しいのは言葉じゃなく

【140字小説】欲しいのは言葉じゃなく

どんなに熱い励ましの言葉も、完全無欠の正論も、
ただ隣で手を握り話を聞いてくれる人の「辛かったね」には敵わない。
だから母はあの日、教祖様と逃げたのだろう。

今なら僕にもわかるよ。
願わくば今、貴女にこの手を握っていて欲しかったな、母さん。

【140字小説】考え事には向かない問題

【140字小説】考え事には向かない問題

「子供の遊ぶ声が煩い」と言い放つ人は悪なのだろうか。僕は思案する。

ギャーギャーキャハハ

彼らは自身の幼少期、ずっと静かに遊んでいたのだろうか。また、自分に子や孫ができた場合にも同じ意見を貫くのだろうか。あらゆる角度からこの問題を検証する。

ギャーギャーキャハハ

「…煩いな」

【140字小説】ラブ・イズ・ブラインド

私は気付いた。
真夏に汗臭さMAXのクラスの男子達。そんな中で私が片想いしてるイケメンの咲也君だけは常に爽やかだ。イケメンは体臭にまで気を使えるからイケメンなのか。イケメンだから体臭にまで気を使えるのか。
…って話を友人にしたら呆れ顔でこう言われた。
「恋は盲目…もとい恋は無臭、だね」