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お茶農家がECサイトをつくってみた

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こんにちは。お茶農家の杉作です。

ITに疎い農家が、一念発起して自園のECサイトを起ち上げたので、忘備録として記録します。また、これからホームページやECサイトを作りたいと考えている農家の方の参考になれば幸いです。

大丈夫。私でも作れたのですから、このnoteを最後まで読んでもらえれば、あなたにもきっと出来るはずです。

きっかけは農家の先輩のひと言でした。
組合の会合で、先輩と名刺交換した時のことです。

「あれ、ホームページはないの?」

当時、私の店舗兼農園はECサイトはおろか、ホームページすらない状態でした。代表者の岳父は齢70歳を超える高齢で、婿養子の私もwebサイトについては全くの素人でした。

会社勤めをしている方は不思議に感じるかもしれませんが、農家のIT化は極端に遅れています。高齢化が主な原因です。若者でも農業しか経験のない人はブラインドタッチもできませんし、iPhoneの機能は半分も使いこなせていないでしょう。メールの宛先にあるCc、Bccの意味も良く分かっていません。「PCを起ち上げて」と言われて、ノートパソコンを両手で掲げたという人がいるのも実話です。

「ホームページがないってことは、インターネット上に住所がないようなものだよ」

先輩はインターネットを使って大々的に商売を行っている地元の名士で、説得力がありました。そう言われて、私も「ホームページはあった方が良いなあ」と思いました。

しかし、先輩のような例は特別で、そもそも、農家は商売が上手くないのです。農家は、自分の作物に対して実直なので、マーケティングとかブランディングとか販路拡大といったことを考えたことがないのです。

その時、コロナの影響もあって、売上は前年の半分以下にまで落ち込んでいました。私はこのままでは駄目だと思い、webサイト(オンラインショップ)起ち上げを決意したのです。

栗原園_茶畑イメージ08

HPを作りたい農家は、なにから始めれば良いのか?

ホームページを作りたい農家は、なにから始めれば良いのでしょうか。

その前に、ホームページを作って感じた大事なことをお伝えします。それは「HPを作ってからが本当のスタート」ということです。まるで、打ち切り漫画の「俺たちの戦いはこれからだ!」みたいですが。

“ホームページを作る”のは実は割と簡単なのです。その後が大変なんです……(これについては後述します)。

さて、農家のホームページですが、大きく分けて2種類あります。まずは、自分が作りたいサイトがどちらなのか考えてみましょう。

・自園紹介パンフレットのような名刺的な役割のwebサイト
・買い物ができるECサイト

名刺的な役割のサイトは、web上の「会社案内」みたいなものですね。それ自体は収益を上げません。しかし、ランニングコストは掛かります(サーバー代、ドメイン代など)。大抵の人は新しい取引先のホームページをチェックするので、webサイトがあるだけで信用度は結構上がると思います。

農家のECサイトは、いわゆる「D2C(Direct to Consumer)」という形態で、自ら生産した商品を卸や量販店を挟まず、消費者と直接取引する販売方法です。海外で先行して流行っているスタイルで、日本でもアパレルや化粧品ブランドの多くがD2Cへ参入しています。

ECサイト構築はかなりハードルが高いので、まずは自園紹介サイトを作ってみるのが良いでしょう。「いや、自園の紹介はどうでも良いから、俺はネットで商売がしたいんだ」という人は、BASEやShopifyのような簡単にECサイトを作れるサービスがあるので、そういうアプリケーションサービスを活用する方法もあります(食べチョクやポケットマルシェのような生産者に特化したECサービスも流行っています)。

私は利用料を払うのが嫌だったので、自前のECサイトを構築しました(ケチですね)。楽天やAmazonなどのモール型は、初期費用や運用費も高いですし、大手の茶商に太刀打ちできないので、農家は止めておいた方が良いです。

▼ECサイトの3つのタイプ
【自前型】WordPressを使用した自前のサイト
【ASP型】BASEやShopifyなどアプリケーションサービスを使ったサイト
【モール型】楽天市場やYahooショッピング、Amazonなどの大型サイト

ちなみに、スーパーや百貨店などに商品を置いてもらう場合は、売上の20〜30%くらい手数料を取られます。そう考えると、BASEやShopifyのようなサイトの利用料は良心的に感じますね。BASEは、決済手数料(3.6%+40円)とサービス利用料(3%)を合わせて6.6%+40円です。

アピールポイントを考える

次に、自園のホームページをどんな内容にするのか考えます。参考として、私のメモを記します。

【誰に】:地元以外の人(特に都会の人)に
【何を】:美味しいお茶を
【どのように】:ECサイトで手軽に買えるように

前提として、日本では“水とお茶はタダ”という認識があります。外国の方が驚くように、そば屋や鮨屋へ行くと何も注文しなくてもお茶が出てきます。お代わりも自由で、何杯飲んでも無料。コーヒーでは考えられないことです。

お茶のペットボトルの登場で、有料のお茶が少しずつ受け入れられるようになりましたが、それでも“インターネットでわざわざお茶を買って飲むのか?” という疑問が残ります。お茶をオンラインショップで買ってもらうのには、それなりの説得力や理屈がないと上手くいかないだろう、というのが最初の課題でした。

ホームページ作りで陥りがちなのは、美辞麗句を並べることです。私も最初はそうでした。「心を込めて作っています」とか「美味しいお茶です」といった言葉です。しかし、こちらに都合の良いフレーズばかり並べても、相手には響きません。

心を込めて→ 具体的にどうしているのか? 
美味しい → なぜ美味しいのか?

そこで私は、自分たちの強みやアピールポイントを書き出してみました。思いつくままに書き出してみると、ぼんやりとホームページのコンセプトのような物が見えてきました。

・大手企業にはできない丁寧な仕事(小規模だから実現可能)
・自園、自製、自販だから中間マージンがない(リーズナブル)
・ほとんどすべて一番茶を使っている(品質に自信)
・茶の生産地の中でも北限にあり、厳しい寒さで茶葉が厚い(だから旨い)

常々感じていたことは、量販店で売られているような大量生産のお茶と比較すると、同じ価格帯のお茶であれば、明らかに自分たちのお茶の方が美味しいという事実です。これは決して自画自賛しているわけではなく、明確な理由があるのです。

お茶市場の流れ_ note用

お茶が世の中へ出るには、様々な業者を経由するのが一般的です(分業制)。生葉を育てる農家、生葉を蒸して、水分を整えながら揉み工程を繰り返して荒茶を作る業者、それから市場で競りが行われ、お茶問屋がブレンドや仕上げ加工を行って製茶を流通させています。

しかし、うちは自分たちで収穫した生葉を自ら加工し、様々な工程を一貫して行っています。当然収穫量は少ないですが、中間マージンがない分、同じ価格帯のお茶でも品質の良い商品が作れるというわけです。

この辺がホームページで巧く表現できて、多くの人に伝えることができれば、少しは商売になるかなという気がしてきました。

例えば、クラフトビールが流行っていますが、大手ビールメーカーが作っていないような個性的なビールには一定の需要がありますし(私もネットで購入したことがあります)、地方で美味しい地酒を作っている酒蔵のやり方も参考になりそうです。

つまり、生産者が自己のブランドを創造し、ホームページやSNSで情報発信することで、特定の消費者を顧客にすることは可能だということです。

ロゴとカラーで統一感を

次にホームページ制作の具体的な進め方です。
まずは、ロゴマークとコーポレートカラーを決めると良いと思います。これを事前に作っておくだけで、他の要素がスムーズに決まっていきます。

▼私がHPを作るためにやったこと
・ロゴマークを作る
・コーポレートカラーを決める
・メッセージ、コンセプトを作成
・商品の紹介文を作成
・決済方法を決める

私の場合、ロゴはデザイナーの友人にお願いして作ってもらいました。費用は1万円でした。知り合いにデザイナーがいない場合、「ランサーズ」「クラウドワークス」といったサービスを使って、フリーのデザイナーに依頼するという方法もあります。

ロゴやカラーがなぜ大事なのかというと、それがブランディングに繋がるからです。例えばAppleは、宣伝やwebサイトなどに統一感があり、ひと目で「あ、Appleだ」というのが判るように出来ています。

「農家にブランディングなんて関係ないよ」という意見もあるかもしれませんが、多くの商品が氾濫する世の中では【他者との差別化】が重要になってくるのです。「お茶なんて、どれを買っても一緒だろう」と思っている消費者は多いです。その時に役立つのがブランド力です。つまり、何らかの【付加価値】です(有機栽培とかパッケージが可愛いとか)。品質や価格が同じなら、多くの人はブランド力のある商品を欲しいと思うでしょう。

お茶業界で最先端を走るのは、「煎茶堂」さんでしょうか。
私も勉強のために東京・銀座の店舗へ行きましたが、そのブランド力に圧倒されました。30g 2千円もするようなお茶が、目の前でばんばん売れていくのですから。

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印象的だったのは「こちらの商品ですと、袋の方が容量的にお得ですけど」と店員さんのアドバイスがあったにも関わらず、「缶が可愛いので、こっちで良いです♪」と言って購入した若い女性のお客さんです。

同じお茶でも売り方によって、こんなにも変わるものなのか!

眼からウロコが落ちました。若者の(急須で淹れる)お茶離れで茶葉が売れないというのは、固定概念に縛られた業界の言い訳に過ぎないのかもしれません。

まずはドメインを取得

内容が決まったら、いよいよ実際のweb構築に入りますが、その前に【ドメイン】を取得して、レンタルサーバーを契約します。ドメインというのは、google.comとかdmm.comとかecchina-jyukujyo.comとか(←そんなドメインはない)URLの一部を形成しているアレです。自分だけのドメインを取得します(早い者勝ち)。

ドメインは、レンタルサーバーを契約する際に一緒に申し込めるので、まずはレンタルサーバーを決めましょう。ドメイン代は、年間で1,500円~3,000円くらいです。頻繁にお得なキャンペーンを行っているので、いろいろと比較してみると良いと思います。

・さくらインターネット
・スターサーバー
・エックスサーバー
・ロリポップ

レンタルサーバー会社はたくさんありますが、予算で決めれば良いと思います(私は年間2万円くらいのサーバーを借りています)。はじめはアクセス数も少ないので、安いところで大丈夫です。容量と速度に比例して、料金は高くなります。自サイト内で決済まで考えている場合は、最安サーバーでは【買物カート機能】が動かない可能性があるので、注意してください。

独りで始めるならWordPressがおすすめ

webサイト作成にはいろいろな方法がありますが、私のおすすめはWordPressでの作成です(というか、WordPressでしか作ったことがない)。Dreamweaverも触ってみましたが、難し過ぎて挫折しました。

WordPressは、CMS(コンテンツマネジメントシステム)と呼ばれる無料のソフトウェアで、web関連の知識がなくても、blog感覚でページが作れたり、写真や文章が簡単に投稿できる優れものです。特別なアプリケーションは必要なくて、すべてブラウザ(ChromeやSafariなど)上で動きます。

WordPressの何が良いかというと、大量の雛形(テーマ)が用意されていて、穴埋め形式になっているところです。

例えば「このページには【380×240px】の画像を貼ってね」という感じになっていて、そこに好きな画像や文章を入れていけばページが出来上がるという仕組みです。

screencapture-kuriharaen1949-2021-02-16-21_52_11のコピー

無料のテーマでも良いのですが、玄人っぽく仕上げたいなら、有料のテーマを使用しましょう。とても素人が作ったとは思えないようなwebサイトができます。私はここには予算を使って、プロがデザインした有料の雛形を購入しました(約4万円でした)。「WordPress テーマ 熟女 美乳」で検索すると、WordPressのテーマがたくさん出てきますので、熟女美乳を削除して再検索します(邪魔なので)。自分のセンスで気に入った雛形を選びましょう。

WordPressをインストール

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ドメインとレンタルサーバーを契約したら、自分のサーバーにWordPressをインストールします。WordPressのインストール手順は、レンタルサーバーのサイトに詳細が記載されていますので、割愛します。

多くのレンタルサーバーがWordPressを簡単にインストールできる自動ツールを提供しているので、それを使うと楽勝です(FTP接続して自分でアップロードする必要なし)。難しい場合は「WordPress インストール 熟女 美乳」で検索したあと、熟女美乳を削除してみましょう(しつこいな)。

この段階でどうしても上手くいかないようなら、残念ながらWordPressでwebサイトを作るのは難しいかもしれません……。BASEなど【ASP型】への切替えをおすすめします。本契約する前に、無料お試し期間を設けているサーバーが多いので、一度ここまで試してみてから決めるのが良いですね。

商品の登録

次に、商品をECサイトで購入できるように登録を行います。私はカート機能に、WordPress公式の国産プラグイン「Welcart」を選びました。
商品名や価格、商品写真、説明文、容量や送料などを入力していきます。これもほとんどが穴埋め形式になっているので、マニュアルを読まなくても感覚的に入力していけます。問題はSKUコードです。

「SKUってなんだろう?」

SKUとは、企業独自の商品コード(Stock Keeping Unitの略)。 受発注・在庫管理を行う際の最小の単位を指す。 半角英数文字で商品を細分化して分類する。

SKUとは独自の商品コードのことで、要は自分たちで勝手に作ってしまえば良いコードです。多くのECサイトでは、商品はSKUコードで管理されています。あとから変更するのは面倒なので、最初にしっかりとルールを作って、忘れないようにファイルしておきましょう。

SKUコードの例


例えば、上の画像例では「やぶきたの煎茶、80g 800円の茶葉」という情報がコードを読めば分かるようになっています。「ほうじ茶」の場合は、「GT:Green Tea」の部分が「RT:Roast Tea」になるわけです(自分が判りやすいように作ればOK)。

受注作業や売上管理

商品が売れた際には、お客様に注文の確認メールを送ったり、納品書の作成、領収書の作成、売上の管理などが必要ですが、ほとんどのことは自動でできるようになっています(注文が入ると、自動で相手へ確認メールが送られる)。納品書や領収書は、ボタンをひとつ押せば出てきます。売上は、Excel(CSV)に書き出せるので、帳簿の管理も楽です。

人がやることは、梱包・発送と発送完了のメール送信(テンプレートあり)、在庫管理くらいです。実店舗とECサイト両輪で販売している場合、在庫数を間違えないように注意してください。ECサイト用にあらかじめ在庫数を登録しておけば、売れるごとに数が減っていきますので管理がしやすいです。

商品リストの例

web製作にかかった期間

作り始めてから公開までにかかった期間は、およそ3ヶ月でした。ページの原稿(テキスト)を作るのに1ヶ月、web構築に2ヶ月といった内訳です。手際の良い人なら、1〜2ヵ月で出来ちゃうかなと思います。

写真は、すべて携帯電話(iPhone 8)で撮りました。最近のスマートフォンはカメラの性能が良いので、写真はこれで十分だと思います。商品の撮影もスマホで行いました。百均ショップで簡易的な撮影キット(ライトや白い囲み)が売っていて、かなり役に立ちました。

作っていると「こんなこといいな」「できたらいいな」というドラえもん的な欲求が出てきます。でも大丈夫、安心してください。大抵のことは【プラグイン】が解決してくれます。標準のWordPressにはない機能が【プラグイン】という形で(ほぼ)無料で配布されていて、それを追加インストールすることで、自分のサイトに様々な追加機能を持たせることができるのです。

例えば「お問い合わせフォーム〜(CV:大山のぶ代)」とか「Instagramと連動〜(CV:水田わさび)」というのが簡単に実装できます。凝りだすと、もっと細かい部分をいじりたくなるのですが、それにはCSS(カスケーディングスタイルシート)やHTMLの知識が必要です。上級者向けなので、意欲のある人は少しずつ勉強していけば良いと思います(私も勉強中です)。

一番苦労したのは【カート機能】です。カート機能は、WordPressで稼働するカートシステム(買物カゴ)のことです。本来だったら、買物の機能も自分たちでプログラムする必要があるわけですが、これも「テーマ」のようにすぐに使えるパッケージされた製品(WelcartやEC-CUBEなど)が複数用意されています。小規模なECサイトであれば無料(!)で使えます。

苦戦したカート機能とBASEのこと

私はカート機能に「Welcart」を選びましたが、セッティングまでが難しく、操作に癖もあってかなり苦戦しました。買物機能だけ分離して、BASEへ鞍替えしようかと何度も悩みました。

Welcartのメリットは、自分のドメイン内で決済まで完結できることです。これはSEO(検索エンジン最適化)的にも良いことだと思っています。デザインも統一できます。買物ページをBASEにすると、買物の時だけ外部サイトへ飛ばされるので、当然ドメインや雰囲気が変わります。まあ、お客さんがどこまで気にするのか分かりませんが、Googleの評価としては切り替わらない方が良いのかなと思っています。

その辺はBASEの店舗オーナーも気にしているようで、自社サイトからBASEの買物ページへ飛んでも、デザイン的に違和感が出ないように工夫したりしています(そもそも、お客さんはいちいちURLとか気にしてないですよね)。

BASEの弱点としては、モール型に比べて集客が弱いというのがあったのですが、最近では「今日のおすすめショップ」みたいなコーナーがあって、そこへ掲載されるとアクセスが倍増するみたいです(友人談)。BASEの良さは、そういう改良の速さですね。楽天やAmazonのようなモール型の要素を今後もどんどん取り入れていくのではないでしょうか。

それから、決済の仕組みが丸投げできるのも良いですね。WordPressの場合、もしクレジットカード会社の仕様が変わったりしたら、自分で対応する必要がありますが、BASEを使っていればBASEのエンジニアが勝手にやってくれるわけです。

「カート機能」も苦戦したのですが、実は「クレジットカード決済」の実装でも苦労したんです。「クレジットカード決済」については「Paypal」(paypayじゃないよ)を使ったのですが、実際に自分で購入するとエラーが出てしまいました(特定のカードで決済できない)。Paypalに問い合わせたり、カード会社に問い合わせしたりして、なんとか解決できました。

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「じゃあ、お前もBASEにしろよ」と突っ込まれそうですが、今だったらBASEで作っていたかもしれません。ただ、以前はデザインの自由度も低くて、自分の想い描いた感じにならなかったんですよね(現在はデザインの自由度も改善されているようです)。

それから、やっぱり利用料を払いたくなかった。うちの主力商品って、500〜800円くらいなのです。100個売っても5〜8万円ですよ? そこから利用料と振込手数料を引かれるとなると、やっぱり厳しいものがあります。あと、売上金の申請有効期限が「180日」というのもネックでした(売上合計2万円以下は引き出すのに750円かかる)。

初月の売上

ECサイトを起ち上げて、最初の1ヶ月の売上は4万8千円でした。出だしとしては良い結果に見えますが、内訳はほとんど身内(友人知人)でした。まあ、ご祝儀ですね。

訪問者数は、1週間で約20〜30人。1日あたり3〜4人が閲覧してくれる感じでした(現在はもう少しアクセス数が上がっています)。

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翌月の売上は2万5千円、翌々月は数千円と徐々に陰りが見えてきました。オープン当初は気にかけてくれた人たちも、徐々に興味を失っていきます。

そこで、売上を伸ばすために「集客しなくては」と考えました。でも、どうしたらwebサイトへのアクセス数が増えるのでしょうか?

ホームページを作っただけで人はやってこない

ECサイトさえ作れば、お茶が売れてこづかいも上がって熟女にもモテモテで……、そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。いまから考えると、なぜそう思ってしまったのか自分でも愕然としますが、当時は本気で夢を見ていました。

冷静に考えてみてください。

ECサイトを作っても、それは広大な砂漠(インターネット)にぽつんと屋台が立っているようなものなのです。これといった目印もなく、誰も店の場所を知らないのです。そんな店に、客がふらっと入ってくるわけがありません。

ECサイトに人が集まるようにするためには、戦略が必要です。いわゆるマーケティングというものです。私は自分のサイトを宣伝するために、あらゆるチャネル(媒体、経路のこと)を利用しました。いくつかは上手くいって、いくつかは見事に失敗しました。

どの方法があなたの商品に合うか判らないので、私が実践した具体的な内容を載せておきます。少しでも参考になれば幸いです。

・友人知人へのアプローチ
・インスタグラム
・Facebook
・道の駅でのPR(
QRコードシール作戦
・地元の商工会のリンクサイトへの登録
・チラシ配布
・Google マイビジネスの登録
・Google merchant centerへの登録
・Google アナリティクスの活用

一番効果的だった、友人知人へのアプローチ

マーケティング戦略(というかなんというか)で、一番効果的だったのは友人知人へのアプローチです。これは効果があるので、是非やって欲しいです。私の場合は「ホームページを作ったので見てね」という手紙を同封して、友人知人へ自慢のお茶をプレゼントしました。

1日の閲覧者が0人で、閑古鳥状態だったホームページにアクセスがぽつぽつと増え、仲の良い人たちはご祝儀的にネットから購入してくれました(神!)。そして、Googleの検索結果も徐々に良くなってきました。ちなみに、webサイトを作れば勝手にGoogle検索に反映されると思っていましたよ……(XMLサイトマップをGoogleへ伝える必要あり)。

SNSの最大の特徴は【双方向性】

インスタグラムとFacebookも効果的でした。インスタグラムとFacebookは、webサイトを起ち上げる前からやっていたのですが、以前は目的もなく、ただぼんやりと暇つぶしでやっていただけでした。

SNSの良いところは一方的な情報発信ではない【双方向性】です。コミュニケーションを積み重ねることで、お互いの親近感を高めてくれます。会ったこともない遠くの方が、インスタグラムでのやり取りをきっかけにお茶を買ってくれた時は、本当に嬉しかったです。

インスタグラムでは、なかなかフォロワーが増えずに悩んでいたのですが、ある日突然「こちらからフォローしたり、コメントしたりすればいいんだ!」という【双方向性】に気がついてからは、投稿やコメントが愉しみになってきました。

twitter、Instagram、Facebookなど、SNSの種類もいろいろありますが、すべてやるのは大変なので、どれかに絞ってやってみるのが良いと思います。更新しないで放置されているSNSほど、惨めなものはありません。逆にブランドイメージが損なわれる可能性もあります。

道の駅でのPR(QRコードシール作戦)

実店舗とは別途、近所の道の駅にも商品を置かせてもらっています(売上ごとに15〜20%の手数料が引かれる仕組み)。道の駅は黙っていても毎日人が集まるので、利用しない手はありません。

特定のポスターやチラシは禁止だったので、URLの入ったQRコードのシールを商品に貼ることにしました。「当園のお茶はオンラインショップでもご購入いただけます」と書いて、遠くの町から来ている購入者にネットでも簡単に買えることをアピールします。効果があるのかは、まだ分かりません。

意外だった地元商工会の効果

意外に効果的だったのは、地元の商工会の地域応援サイトです。「田舎の商工会サイトなんて、誰も見ていないだろ」と冷ややかだったのですが、Google アナリティクスをチェックすると、なぜかここからの流入が多い

理由は「.org」のドメイン効果かなと推測します。非営利組織は実体のないネットショップよりもGoogleの評価が高く、検索結果が上位にくるようです。とにかく利用できる物は(無料なら)利用する、というスタンスが功を奏した一例です。

商工会のサイト経由では、雑誌の出版社からも連絡がありました。「HPを拝見しました。素晴らしいですね。今度の特集で記事広告を載せませんか?」という内容で、完全に営業トークでしたが、悪い気はしませんでした(Googleの評価的にも良いはずですし)。

チラシの反響率は0.3%!

ビラ配りも自分たちで行いました。閑な時に散歩を兼ねてポスティングしたり、店舗で購入していただいたお客様に渡したり、友人や親戚に配ったりして1,000枚くらい配布しました。

ちなみに反響率の測定方法として、専用のQRコードを作ってwebのトップページへリダイレクトさせるという手法を用いました(Google アナリティクスで、QRコードからの流入を解析すればOK)。

残念ながら、効果はほとんどなかったです(泣)。配り方が悪かったとか、チラシのデザインが良くなかったとか、いろいろと反省点はありますが、そもそもチラシの反響率って極端に低いのです。チラシの効果は「千三つ(0.3%)」などと言われています。興味を持ってくれる人が、千枚配ってたった3人という計算です。やみくもに配ってもダメなわけですね。

必須施策であるGoogle関連

「Google マイビジネス」「Google merchant center」「Google アナリティクス」は無料で使えますし、現代の“ビッグ・ブラザー"ことGoogleに支配されたこのインターネット社会では、必須だと思います。

特に「Google マイビジネス」は、真面目に取り組んでいる農家がほとんどいないので、狙い目だと感じます。検索結果にも良い影響を与えてくれるはず。実店舗を持っていなくても、農園で登録しましょう(写真や情報を追加すると尚良い)。

マイビジネスの登録を行うと、数日後にGoogleから郵便が届きます。手紙に数字が書かれていますので、その番号を入力して「私はここでちゃんと商売をしていますよ。詐欺集団とか架空のビジネスではないですよ」と証明しましょう。

「Google merchant center」は、Google検索の「ショッピング」タブを管理するサービスで、商品情報やECサイトの基本情報を入力することで、広告を出すことができます。
リスティング広告の無料枠があるということで、私も登録してみました。その結果、登録はできたのですが、こちらの情報に不備があるようで、無料掲載は機能しませんでした(設定がかなり難しいです)。引き続き勉強していこうと思います。

「Google アナリティクス」については情報が溢れていますので、大滝詠一さん的に、あとは各自で。

今後、やってみようと考えている施策

・インスタグラム広告
・リスティング広告
・プレゼントやクーポンキャンペーン
・アンケート
・イベント(マルシェ)への出店
・リピーターへのフォロー
・海外への販売(外国産紅茶の逆バージョン)
・高級旅館ホテル用 一煎ティーバッグ
・美容室理容室用 ハーブティー

まだ試していない戦略がいくつかあるので、そのうち試してみます。その時は、ここでまたnoteを書いて報告しますね。

上記以外にも、漠然としたアイディアがあって、例えば「お寺(←毎日お茶を飲んでそう)に営業するのはどうだろう?」とか、“待ち時間にお茶を飲む”であろう火葬場美容室を攻めるのも面白いかもしれない、などと考えています。良いアイディアだと感じたら、こっそり真似しても良いですよ。上手くいったら私にも教えてください。

私がECサイト開設を勧める理由

最後にまとめです。
私が農家の皆さんにECサイト開設を勧める理由は、3つあります。

・農家は高齢者が多く保守的:まだ競合が少ない
・商品の価格を自分たちで決められる:消費者と直接繋がれる
・リスクが少ない:失敗してもゼロ〜数万円の損失で済む

まず、高齢者にとって、やはりECサイトはハードルが高いです。ホームページが既にあるような農家でも、更新が止まったままだったり、サイトのレスポンシブ化(スマホでもPCでも表示が最適化)も手つかずという状態。この状況でwebサイトを起ち上げれば、地元で一番になれるチャンスだってありそうです。

それから、商品の価格を自分たちで決められる(消費者と直接繋がれる)というメリット。
農家の方なら解ってもらえると思いますが、業者が間に入っていると同じ品質の商品でも、需要と供給によって価格が大幅に下がってしまうのです。お茶の場合も、こちらが「この値段だったら売りたくないな〜」と思っていても、結局行き場がないため、泣く泣く二束三文で売る羽目になります。
また、アイディア次第で規格外品を売ることも可能です。農協やスーパーはサイズや形など、規格に合った商品しか買ってくれませんが、ECサイトなら自分の裁量で「わけあり品」を販売することができます。

最後に、リスクが少ないということ。
外注せずに自分たちで作れば、ゼロから数万円の費用で起ち上げることができます。BASEなどを使えば、無料でも始められます。「ポケットマルシェ」や「食べチョク」という生産者特化型のECサイトを使うのも良いでしょう。

さあ、あなたもECサイトを始めてみませんか?
大変だけど、面白いですよ。

<おしまい>

読了後、有益だと思っていただけた方は、以下のボタンから投げ銭的に【記事を購入する】ボタンを押していただけると、すごく嬉しいです。
※なお、有料ゾーンには何も書いてありません。

農家の皆様のコメントをお待ちしています。WordPressやWelcartなどの技術的な質問にも、私の分かる範囲でお答えします。

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