📢TCICセミナーレポート📢AIビジネスで押さえておくべき知的財産権のポイント【後編】

2024年7月3日 09:42

こんにちは☀
TCICのコミュニティマネージャー　田中＆広報　山本です！

本セミナーのレポート前編をアップしてますので、ぜひご覧ください！
https://note.com/tcic/n/n4e316b1b0402

TCICメンターの東京都知的財産総合センターをお招きし、AIビジネスを考えている方や、実際にAIビジネスをスタートアップされている方向けに、著作権や特許など事例を交えて解説していただきました。

後編では、東京都知的財産総合センターの金木氏を講師に、AIに関する知的財産権、ビジネスでAIを活用するときの注意点についてお届けします！

★開催概要
【日時】2024年2月6日（火）18時00分～19時30分
【形式】オンライン
【参加費】無料
【参加対象】
・コンテンツビジネスに関心のある方
・国内コンテンツ及び周辺ビジネス、または起業を考えている方
・コンテンツ分野で生成AIを活用したビジネスを考えている方
・コンテンツ分野で生成AIを活用したビジネスを行っている方

🔽セミナー概要はこちら
https://tcicevent20240206.peatix.com/

講師のご紹介

東京都知的財産総合センター／知財サポートアドバイザー
金木　健二　氏
＜プロフィール＞
1981年（昭和56年）凸版印刷株式会社（現･TOPPAN ホールディングス株式会社）入社
カタログを中心とした商業印刷物の制作ディレクション、画像制作、企業の販促ツール、マーケティング、等のプロデュース。
制作物全般の著作権や商標権等の知財管理等を経て2018年4月より現職。
著作権をはじめ都内中小企業の知財相談に対応。

AIと著作権（著作権法の確認・文化庁の公開情報）

著作権の特徴から見ていきましょう。そもそも著作物なのか、著作権を侵害しているかどうかの判断は非常に難しいものです。以下の図を見てください。この３つがそろって初めて、「著作権を侵害している」かもしれない、という可能性が出てきます。最終的には裁判所で判断せざるを得なく、個別案件を見ると判断基準が分かり難いことがあります。

また、「自分が作った制作物が全て著作物である」という認識が法的解釈と異なる場合があります。それはAI生成物でも同じです。
また、世間からのクレームは、権利の有無に関係なく起こることがあります。

文化庁の公開情報を見ていきましょう。AIはAI開発・学習段階と生成・利用段階に分けて考えます。AI生成物に対して著作権があるかないかもガイドラインに掲載されています。AI開発・学習段階については、簡単に言うと著作物を利用するデータセットの作成や学習AIの開発などは、著作者に許諾なく使用してもよいことになっています。しかし、必要と認められる限度を超える場合や著作者が不利を被る場合はこの限りではないので、注意が必要です。生成利用段階では通常の著作権侵害と同じ判断になります。

そしてそもそもAI生成物自体は著作物性があるか、について考えてみましょう。
この点は「思想又は感情を創作的に表現したもの」かどうかが軸になります。簡単に説明すると、「思想又は感情を創作的に表現したもの」でなければ著作物にならないし、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であれば著作物になると説明されています。

とはいえ、文化庁の「AI開発・学習段階」の見解は各メディアから大反発を受けました。
新聞業界等が連名で「生成AIに関する共同声明」を発表。自分の創作物は学習されたくない、学習したなら保証してほしい、学習されたら除いてほしいという内容でした。しかし、これらを実現するのは大量のデータの中を探ることになり、現実的ではありません。

しかし「学習されたくない」という主張は著作者の利益にも関係するということで文化庁も動き始めています。令和5年度中に何らかの指針を出すとのことです。
※セミナー開催の後日に公表された、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合についての対応」等が、文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」（令和6年3月15日）にて詳細に定義されており、継続的に進捗を確認していく必要があります。

生成AIはどこから著作権侵害が起こる？

学習前AIへの学習対象物の学習・入力段階、生成物の出力段階で著作権侵害が起こる可能性があります。
著作権の侵害を判断する材料は法律、判例、学説です。しかしAI生成では「判例」がまだ欠けている為、専門家の中でも結論が出ていません。
ではどうすれば侵害のリスクを回避できるのでしょうか。法律に基づいてみていきましょう。

学習段階では、「情報解析のために必要な範囲内で著作物を利用することができる」「情報解析して結果必要な範囲で軽微利用できる」と言う、非享受目的での利用を認める権利制限規定があります。

このような権利制限がある理由ですが、大きく２つの考え方があります。まず1つ目ですが、著作権の付与は著作物による享受（受け取って自分のものにする、芸術美などを味わい楽しむ）に対する権利者への報酬であり、享受目的のないAI学習には必要ないという考えです。もう１つは、生成AIの精度を上げるには、偏りのない大量の学習材料（著作物等）を学習する必要がありますが、その著作物１つ１つに許諾を得ていくというのは現実的ではない、という考えです。

続いて、生成段階における権利侵害のリスク回避を見ていきます。
生成段階での著作権侵害については、その対象物が著作物であるか／著作物に依拠しているか／著作物に類似しているか・感得性があるかの確認が必要です。類似していても、依拠性・感得性がなければ侵害にはなりません。AI生成物以外の著作権と同様の解釈です。
しかし依拠性の有無を判断するのは非常に難しいものです。裁判で判事されないと判断できないことも多いです。
AIそのものによる依拠については、画像から画風を学習し、その画風で画像を生成する場合は、画風は著作権の対象ではないので、侵害にあたりません。一方、画像から特定の絵柄を学習し、その絵柄を再現する場合は表現を利用しているので依拠していると言えるでしょう。

AI生成物は著作物か？

人による創作的寄与があるかどうかで異なります。表現の作成に際して、著作権の定義（思想・感情、個性を表現）に当てはまると評価できる、人の関与があるかどうかが基準となります。これは個々の事例により異なります。

AIをビジネスに活かす場合の留意点

著作権をビジネスに利用したい場合、AI生成物に「著作権が発生するように」創作することが重要です。そのためには、プロンプト追加を繰り返し、それが筆や鉛筆で加筆している程度に具体的表現と結びついている様にして、著作物の可能性を高める事です。その創作過程を記録しておくことも必要です。
なお、制作したAI生成物を発表する際、人物画像が含まれている場合は、肖像権やプライバシー権には十分注意しましょう。

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