わたしが、介護のスイッチになる。Join for Kaigo 秋本可愛さん(前編)
柿次郎:Dooo、本日のゲストを紹介します!「株式会社Join for Kaigo」の秋本可愛さんです。
秋本:よろしくお願いします。
柿次郎:緊張してます?
秋本:緊張してます・・・(笑)
秋本さんが代表を務める「株式会社Join for Kaigo」では若手介護人材のためのコミュニティー「KAIGO LEADERS」を運営。
集まったメンバーと現場での悩み・課題などを元に全6回にわたってセッションなどを行い、課題解決につなげるワークショップ「KAIGO MY PROJECT」や、介護や介護につながる領域で活躍する人たちを講師として招く講習会「PRESENT」の開催など、若者が介護に関心を持つきっかけや活躍できる環境づくりを目指し様々な事業を展開しています。
ニュースなどではネガティブなイメージで伝えられがちな介護の世界ですが、今回は秋本さんに介護の仕事としての面白さなどポジティブな視点も交えて語っていただきます。
柿次郎:結構ニュースでも「介護って大変そう」っていうのだけ、日々は入ってきて、具体的に現場で見て、活動に移ったきっかけを教えてもらっていいですか?
秋本:元々、介護に関心はないところから始まってるんですけど、大学2年の時に起業サークルに入って、そのメンバーのおばあちゃんが認知症で、
そのメンバーの思いに最初は乗っかる形で介護に関わり始めました。
そこから大学生の時は、認知症の人と一緒に読むためのフリーペーパーをつくっていて、「もっと認知症の人のことを知りたいな」と思って、大学3年生から介護の現場でアルバイト始めました。
柿次郎:きっかけはフリーペーパー・・・一緒に読むっていうのは、作り手も読むし、介護に関心を持っていない人も読むし、おじいちゃんおばあちゃんとかも?
秋本:認知症のおばあちゃんと一緒にコミュニケーションツールみたいな形で、コミュニケーションをとることによって、認知症の人の一種予防につながるってわかったので、コミュニケーションが活性化するための、ツールとしてのフリーペーパーを作ってました。
当時は認知症のこと全然知らなくて、その情報だけで「今できること」を考えてやり始めたんですけど・・・。実際に現場に行ってみると、すごいよくしゃべって下さったり、もちろんはじめはコミュニケーションが難しい方もいらっしゃったんですけど、「自分が思っているのとは違うな」って思って、もっと知りたいなと思って現場に入りました。
柿次郎:それは普通にお金をもらって?
秋本:そうですバイトしていました。
柿次郎:バイト!?バイト感覚で入ってみて、どんなものかな、みたいな?
秋本:そうですね、バイトを大学3年から2年間、夜勤とかもやってました。
柿次郎:じゃあ大学生活はそれに結構時間を割いて?
秋本:そうですね、フリーペーパーの活動と(介護の)現場でバイトと・・・学校みたいな笑
柿次郎:じゃあ、ググっと人生が変わったというか。
秋本:んー、現場に入ってからは課題意識が広がったというか・・・。実際に現場は楽しかったんですね。介護って現場に入るまではすごい大変なイメージだったんですけど、結構おばあちゃんたちにむしろ可愛がってもらって色んなこと教えてもらったり、日々の関わりの中で気づきとか、やりがいはあったんですけど、一方で課題もたくさんあって、私が2年間現場に勤めている間に職員の入れ替わりもその現場は激しくて、2年で上から2番目になっちゃったりとか。
柿次郎:えー!!?
秋本:そこは、たぶんイレギュラーなんですけど、あとはご家族さんも介護と仕事の両立に結構悩まれてたり、ご本人様も自分が生きていることが申し訳ないって思っていたり、そういうのをいっぱい見る中で、だんだん課題意識が強くなったって感じですね。
柿次郎:秋本さんの活動、外から見ててもめちゃくちゃ広いじゃないですか。
秋本:たしかにめちゃめちゃ広いですね
柿次郎:会社作って今何年目です?
秋本:6年目です。
柿次郎:6年経ってみて、優先順位というか現状の具体的な活動は?
秋本:私たちが今注力している課題としては、ひとつは人材不足ってところ。今も(人材)足りていないんですけど、これからさらに需要が伸びて、2025年には今のままだと37.7万人足りないって言われているんですけど。
柿次郎:37.7万人足りない!?
秋本:足りないですね。今の現状のままだと・・・
柿次郎:え・・・。
秋本:ちなみに、介護職はめちゃめちゃ増えていて、介護職は2000年に介護保険制度が出てきてから3.3倍まで増えてるんですよ、当時の従事者から増えてるんですけど、需要の伸びが高すぎて追いつかないという現状ですね。
柿次郎:日本の高齢化のスピードが速すぎて?
秋本:そうです。まずだから「人の確保」っていうところの課題に対してと、あとは「お金の確保」。お金が足りないとか、そういう課題が山積み過ぎて、業界全体が疲弊してしまっているっていうのが大きい課題だなと思っていて、課題解決していかないといかないけれど、課題の当事者が実践者になれてないっていうの深刻な課題だなって思って。
柿次郎:実践者の定義のラインとかあるんですか?こうやらないと、主体的にできないとか。
秋本:やっぱりみんな課題があることは気付いているし、変えていきたい、変えていかなければとは思ってはいるけど、そこまでアクションするほどの力がなかったり、パワーがそういう気力になれなかったり、どちらかというと専門職も「どうにかしてよ」という感じの空気になってしまっているなって「行政どうにかしてよ」とか、「経営サイドが頑張ってよ」みたいな・・・
本当はみんなで力を合わせてやっていかなければならないけども、やっぱりまだ疲弊してしまっていることによって、力が生かされてないなっていうのは感じるので、コミュニティ作りをすることによって、もっと前向きな空気にしたりとか、まだまだ課題解決できるんだっていうことを自分たちの力を取り戻すような活動をしてます。
柿次郎:どういった場なんです?オンラインで横のつながりで地域を飛び越えて情報共有って部分でコミュニティーみたないものもあれば、リアルな場での・・・
秋本:今まではずっとリアルな場でやってきていて・・・(笑)
柿次郎:そうかそうか!現場主義。
秋本:オンラインはこれからやろうって思っていて、今まで3000人くらい参加者がいて、ずっとリアルな場を作り続けていて、一つはトップランナーの方に来て頂いて、学びを得る場と学んだ上で、いろんな課題意識をもってたり、「もっとこうしたい」みたいな想いをみんな思ってるので、それをプロジェクト変えていくプログラムをやっています。
柿次郎:プロジェクトで例とかあります?みんなから現場の意見を吸い出して、これをやってみたら結構ポジティブに変わったとか・・・
秋本:今、140ぐらい、それぞれ参加者のプロジェクトがあるんですけど。
柿次郎:すごっ!!多いっすね。
秋本:例えば今、介護の事業所で現場の管理者やっている人が、もっと楽しく働ける職場をつくりたいって、一人一人にヒアリングして、みんなで少しずつ業務改善していって、1年間離職ゼロを達成したりとか、あとは起業する人もいます。
秋本:最初は私もそんな風には思ってはいなかったんですけど、
例えば、病院で働いてたお医者さんが、皮膚科のお医者さんなんですけど、
「なんでこんなにひどくなるまでほったらかしにされてるんだろう?」ってことに課題意識をもって最初参加してくれて、介護職の人と話してみると専門性の違いで気づけない問題があるってことに気づいて、今は病院をやめて独立して、介護事業者がすぐに医者に相談できるチャットサービスみたいなのを始めていて・・・
柿次郎:なるほど!わざわざ会いに行かなくてもってとこで。
秋本:写真とか送れば、皮膚科だったら、写真で見れば大体がわかるので、アドバイスしたりとかっていう形で今、サービス展開始めてますね。
*****Dooo*****
柿次郎:これまでの活動のなかで、どんな人が介護に向いているというか、求められる適正というか。そういうのってあるんですか?
秋本:求められる・・・まずは「人が好き」とかっていうのは大事でしょうね。すごく人対人のサービスですし、距離感もすごい近いので、あとは「観察することが好き」とか(笑) 人と人とのコミュニケーションのなかでの仕事なので。
柿次郎:人一人に向き合いすぎてメンタルやられちゃうとか、ある程度タフな方がいいのか、気づける観察力の高い人って感受性が豊かだったりするじゃないですか、そこもけっこうバランス的に?
秋本:確かに…タフなのは大切かもしれないですね。やっぱりどうしても最後は亡くなるので、そこでの悲しさとかはあるんですけど、一つそれが達成感につながることはあって、終わりのあり方で家族さんもご本人も本当によかったねってなるとか自分たちが関わってなかったらそれができなかったかもしれないと思うところでの・・・もちろん、悲しいと泣いてしまうこともあるんですけど。
柿次郎:家族からの後悔というか「ちゃんとできなかった」っていう気持ちを軽減してあげたいみたいな。
秋本:そうですね。家族さん、ご本人さんからの言葉ってのはやっぱりモチベーションにはなるのでやっぱり家族も施設に預けるってことを申し訳なく思っていたりもあるんですけど、逆に、家族が全部やり過ぎて家族としての関係性を保ちきれないのであれば是非プロを頼ってほしいなと思っていて、そこはうまく私たちが関与しながらバランスとって支えられるかが大事かなって思っています。
例えば、認知症の方も怒りっぽくなってしまうのは、自分の気持ちを私たちみたいに言葉とか態度でストレートに表現できなかったりすることが怒りの感情に変わってたり、そういう怒りの表現に変わってるだけなので、その背景をしっかり知って関われる専門職がいるだけでも全然違うと思うんですよね。
柿次郎:そっか、それはわかんないですよね。だからわかんないからこそ、わかんないことを認めて、できないことも自分悪いのではなく、認めて。
秋本:どうしても「おかしくなっちゃった」ってなるじゃないですか、知らなかったら・・・。例えば、私がバイトしていた時も、めちゃめちゃ荒っぽいおじいちゃんいたんですよ、家族が「もう無理です!」みたいな・・・
最初会った時は殴ってくるみたいなって感じで、私も怖かったんですけど、
だんだん関係性できてきたら、殴るのもなくなり、だんだん私の言葉にも反応してくれるようになったんですけど、そのおじいちゃん、夜間全く寝てくれなくて、ずーっと歩き回ってたんですけど、いわゆる徘徊と言われるんですけど、そのおじいちゃんある時に、私に「お前早く先に寝ろよ」って言われて、「こっちのセリフだわ」って思ったんですけど(笑)
柿次郎:はははは・・・(笑)
秋本:そのおじいちゃんが「先に寝ろ」って言うから私、先に寝てみたんですよね・・・。
秋本:そうしたらそのおじいちゃん、私が寝たのを確認してから自分の布団に入って寝てくれて、それがそのおじいちゃんが、私がケアに入って寝てくれた初めての体験だったんですけど、もしかしたら、最後家の大黒柱として、みんなが帰ってくるのを待っていたり、そういう優しい、私のことを気に懸けてくれたんだなっていうのがわかって、そういう可能性をもう一回引き出せたり、そういう可能性によりそえるのが仕事としてはすごい面白いなって思ったので、専門職を頼ることは決して悪ではなく、放置することでもないなって思ってます。
*****Dooo*****
柿次郎:まだまだお話聞きたいんですけど、ここで一旦止めて次につなげます!引き続き秋本さんにお話を聞いていきます!
Dooo!
(後編につづく)
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